大規模修繕

マンションの大規模修繕の目的は?失敗しないための方法とは?

2020.03.16
マンションの大規模修繕の目的は?失敗しないための方法とは?

マンションは「戸建てよりメンテナンスが少ない」が、新築から十数年が経過すると「大規模修繕」の必要がある。その言葉は聞いたことがありつつも「実際にどうやってやるのか?」「どのぐらい費用がかかるものなのか?」と不安になる方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、大規模修繕の目的や実施のサイクル、相場や進め方などを紹介していきます。

十数年ごとに実施される大規模な工事が「大規模修繕」

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戸建てと違って、とくに大規模なマンションは頑丈で劣化しないイメージがあります。しかしマンションであっても十数年経つと、紫外線や風雨の影響で外壁などの劣化が進みます。そのため建物の正常な機能や資産価値を維持するために、定期的なメンテナンスを行う必要があり、その手段の1つが「大規模修繕」です。とくに大規模修繕は、外壁の塗装や屋上の防水、給排水管などの修繕に関わる大規模な工事のことを指します。

大規模な工事であるために、費用も多額になるケースがほとんどです。そこで管理組合が管理するかたちで、マンション所有者は一般的に毎月「修繕積立金」を納め、工事までに必要な資金を少しずつ貯えていくことになります。

目的は資産価値の「維持」と「向上」の2つ

大規模修繕は、その言葉のとおり、劣化の修復など「修繕」を行うイメージがありますが、それだけでなく「改修」によってグレードアップを図ることもあります。この2つが大規模修繕の大きな目的となるわけですが、それぞれの工事内容の違いについて具体的に紹介していきます。

「修繕」によって劣化や不具合を元に戻す

築年数の経過や、紫外線・風雨などの外的要因によって建物に劣化や不具合が生じた場合、外壁塗装工事などによって建設当初の水準にまで直すことを「修繕」といいます。

修繕には、長期修繕計画をもとに計画的に行う「計画修繕」と、そのほか劣化や不具合が発生したときにその都度行う「経常修繕(=補修・小修繕)」とに分かれます。計画修繕には修繕積立金が使用されるのに対し、経常修繕は管理費を利用するのが一般的です。なお、明確に何を計画修繕とし、経常修繕とするかの詳細は各マンションの管理規約によって異なります。

主に建物の劣化や故障の回復に使われる「修繕費」の定義や、具体的にどんな工事に使用されるのかは、以下の記事でも解説しています。

「改修」でマンションの機能をより良くする

マンションに求められる機能は、時代による暮らし方の変化や設備機器の性能の進歩などにより変わっていくものです。さらに現在はマンションに住む人の高齢化も進んでいます。

そこで修繕によって建物の水準を元に戻すだけでなく、より暮らしやすさを追求するためにバリアフリー化を進めるなど、機能をグレードアップすることも必要になってきます。こうした機能をアップさせる工事のことを「改修」と呼びます。

1回目の大規模修繕は新築から「12年目」が一つの目安

一般的に新築のマンションに劣化が見られるのは建物の完成から10年経過程度といわれており、その時期にあわせて国土交通省の「長期修繕計画策定ガイドライン」では、大規模修繕の周期を「12年程度」と記述されています。

一方でこのガイドラインが定められたのは、2008年と今から10年以上も前のこと。この間に、外壁塗装に用いる塗料の性能や施工技術は向上しており、現在は必ずしも12年周期で実施する必要はないともいわれています。

例えば1回目は新築から12年後を目安に行う必要があったものの、2回目以降は使用する塗料の耐用年数が向上したことなどにより、15〜18年周期で実施しても問題ないケースもあります。周期が延びることで、余裕を持って修繕積立金を貯えていくこともできるようになるでしょう。

なお大規模修繕の周期については、以下の記事でも解説しています。

大規模修繕の相場は1戸当たり75〜125万円程度

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では、大規模修繕の一般的な相場は果たしてどのくらいなのでしょうか。

国土交通省が2017年に行った調査によると、あくまでも平均値ですが1戸当たりに換算した金額は75〜100万円が最も多く、全体の30.6%。次いで1戸当たり100~125万円が24.7%という割合になっています。工事金額の内訳としては、外壁塗装を含む外壁関係が全体の24%で、次いで屋根の防水などの防水関係が22%です。この数値をみると、外壁や防水関連の工事に多額の費用がかかることが予想できます。

なお、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、各区分所有者が納める修繕積立金の目安(月額)を公表しています。金額の目安については、建物の階数や延べ床面積(各階の床面積の合計)によって異なりますが、専有部分1㎡当たり月額178〜218円程度。修繕にかかる工事費は当然ですが建物の規模や築年数、長期修繕計画の立て方などによって変わりますが、基本的には長期修繕計画作成ガイドラインをもとに算出した金額を積み立てていきましょう。

大規模修繕の実施方法は主に3つ

ここまで大規模修繕を行うタイミングや、費用の相場を紹介してきましたが、では実際にどうやって実施していくのでしょうか。

大きく分けて3つの方法があるので、それぞれ確認していきましょう。

【方法1】管理会社にお任せ、はネックもある

大規模修繕を実施するうえで、最も一般的な方法が「管理会社へ依頼する」ことです。確かに、現在の管理会社が新築当初からマンションのすべてを管理している場合など、その会社に任せるのが安心、といった部分もあります。しかしネックもあり、例えば「金額」です。

管理会社に依頼した場合、関連の施工会社に工事を発注することが多いのが現実です。すでに依頼する業者が決まっているために競争原理が働かないのはもちろん、管理会社に支払う手数料も発生してしまうため、結果的に工事金額が高額になるケースもあります。

【方法2】コンサルタントは選定が重要に

2つ目は、外部の設計事務所やコンサルタント会社などの第三者機関に依頼する方法です。「修繕・補修が必要な箇所の調査」や「工事の監理」などの施工以外の業務を管理組合の代わりに行うので、管理組合の業務負担を軽減することができます。

ただこのコンサルタントを選ぶときに注意が必要です。例えば管理会社から紹介されたコンサルタントの場合、結果としてコンサルタントと関係のある施工会社が推薦されるケースが多く、前述したように価格競争の原理が働かないため、大規模修繕で必要となる費用が高くなってしまう可能性もあります。

そこで、コンサルタントについては複数社に見積もりを取ったうえで、自分たちで比較検討しながら選ぶことができるとベストです。ただしこのときも、見積もり金額があまりに安すぎる場合は、コンサル料を安く抑える分、後で施工会社からバックマージンを受け取る約束をしているといったケースもあるため、注意が必要となります。

また実際に施工会社を選ぶ際も、コンサルタントのアドバイスだけでなく、自分たちでも情報収集して、複数の施工会社に見積もりやプレゼンテーションをお願いできれば安心です。施工会社の応募は、建設業界紙などで「公募」を行うなどの方法があります。

【方法3】直接依頼なら全体の費用を抑えられる可能性も

最後3つ目の方法が、施工会社各社が実施しているセミナーに参加するなどして、管理組合自らが気になった施工会社に直接依頼する方法です。管理会社やコンサルタント会社に依頼するのと比べて手数料などが省ける分、費用を安く抑えられます。ただし、修繕・補修が必要な箇所の把握から施工会社を選ぶところまで、管理組合の担う負担はとても大きくなります。

なお現在では、大規模修繕工事を依頼する施工会社を、管理組合が主体的に選びやすくなるようにしたウェブサービスなどもあります。こういったサービスを利用して、施工会社を選ぶのも1つの方法です。

施工会社への依頼方法も含めて、大規模修繕の進め方については以下の記事でも改めて整理していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

大規模修繕工事の内容とは?

ここからはあくまでも一例となりますが、大規模修繕の工事内容について順を追って説明していきたいと思います。

【STEP1】仮設工事

マンションの大規模修繕は高い所での作業となるため、通常は足場を組み立ててから作業します。また、高階層のマンションや足場を組み立てられない立地での作業については、ロープやゴンドラなどを使用する無足場工法で行うケースもあるでしょう。そのほか、作業に必要な事務所や簡易トイレなどの仮設施設の設置も行います。

ちなみに国土交通省が2017年に行った調査によれば、足場の設置を含む仮設工事費用の割合は、大規模修繕全体の工事金額のうち約2割を占めるといったデータも。大規模修繕では、足場の設置費用も負担することは覚えておきましょう。

なお、足場工事については以下の記事でも詳しく解説しています。

【STEP2】高圧洗浄

外壁塗装を行い際には、壁に付着している汚れや古い塗料を高圧噴射して水で洗い落とす作業も実施します。塗装箇所が汚れたままでは、塗料が定着しにくくなってしまうため。塗装箇所の汚れ具合に合わせ、水圧を変えながら丹念に洗浄していきます。

【STEP3】下地補修

外壁のひび割れの補修や劣化した塗料の除去、外壁の隙間を埋めるために使用されるコーキング材の打ち替え作業のほか、サビや汚れ落としといった下地補修も場合によっては実施します。

この工程をおろそかにすると、塗装の耐久年数を低下させてしまう可能性があるためです。

【STEP4】養生

窓やガラスに塗料が付着するのを防ぐために、マスキング用のシートやビニールなどを被せて保護をするのが養生の目的。車や隣の住宅に塗料が飛び散り、補償やトラブルの原因となってしまうのを防ぐ狙いもあります。

【STEP5】塗装工事

外壁塗装を行う場合、通常は下塗り・中塗り・上塗りと、3回に分けて実施されます。なかには、下塗りを複数回行ったり、上塗りの後に仕上げ塗りをしたりするなど、3回以上塗装を行う場合もあるでしょう。

なお、下塗りとはシーラーやフィラーといった下塗り材を塗って、後の作業で使用する塗料の密着性や耐久性を向上させる作業。中塗り・上塗りは、防水など外壁保護の役目のほか、見た目の美しさも担う塗料を使用するのが一般的です。

なお、塗装工事について以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

【STEP6】防水工事

耐久性に優れるコンクリートでも、経年で生じたひびなどから内部に水が浸入し、構造部へとダメージを引き起こす可能性があります。

そのため特に屋上やバルコニー、廊下といった箇所で雨水や汚れなどからコンクリートを守るため、防水工事を実施。防水工事には「シート防水」や「塗膜防水」などさまざまな工法があります。

防水工事について、もっと詳しい情報が知りたいという方は以下の記事も確認してみてください。

【STEP7】その他に実施する工事

大規模修繕ではそのほかにも玄関扉やサッシの交換、古くなった配管を取り外して廃棄し、代わりに新しい配管を取り付ける給排水管の工事なども行います。

また古くなった箇所の修繕のみならず、前述したように自動ドア化やオートロックの設置、段差解消や手すりの設置によるバリアフリー化など「改修工事」も実施。劣化個所の補修はもちろん、入居者や時代に合わせた設備を取り入れることで、マンションの資産価値を向上させていく必要もあるでしょう。

多くの住民(所有者)を巻き込む秘訣は改修「後」を考えてもらうこと

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大規模修繕は、劣化した箇所を元に戻す目的が主ですが、一方で前述の通り「改修」を通じてマンションをアップデートしていく目的もあります。そこで住民(所有者)にもっとマンションを住みやすくするためのアイデアを募り、そのアイデアをかたちにするための大規模修繕についても考えていくべきです。古くなったものをただ元に戻すことよりも、「もっといい暮らしを実現するには?」といったポジティブな要件を考えるほうが、大規模修繕を自分たちの問題としてより前向きに捉えてもらいやすくなるでしょう。

例えば改修によって床タイルを明るめの色に張り替えたり、手動ドアを自動ドアに替えたりすることで殺風景で地味だったエントランスホールが豪華に演出され、毎日の行き帰りの際に感じる気持ちも変わるかもしれません。

また大規模修繕を主導で進めていくことになる「修繕委員会」も、「時期がきたらからやらないといけない」という義務感だけではなく、「どうやったらこのマンションがより住みやすくなるのか?」を考える場とすることで、意見が活発になり、参加人数も増やすことができるはず。

他人任せから住民主導の大規模修繕へ

マンションは長い間、風雨や紫外線にさらされることで劣化が進んでいきますが、定期的な大規模修繕の実施が機能の正常化と資産価値の維持につながります。また、改修によってこれまで以上にマンションをアップデートすることで、より住みやすい建物へと変化を遂げることもできるでしょう。

このように自分たちの大切な資産であるマンションを守り、より住みやすい場所にしていくために、他人任せではなく住民主導の大規模修繕を考えていきましょう。

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