大規模修繕は回数によって必要な工事が変わる! 初回と2回目を比較して解説
大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。大規模修繕は長期間を見据えて周期的に行わなければなりませんが、実施する回数によって行うべき工事の内容に違いがあります。今回は1回目と2回目の大規模修繕工事の違いについて紹介していきます。
初回と2回目では劣化の進行状況の差が大きくなる
マンションでは、建物のあらゆる部分が月日の経過とともに劣化していきます。外壁や防水シートは雨風や紫外線に晒され、エレベーターや電灯などの設備は日常的に繰り返し使用されることで、徐々に耐久性が弱まっていくものです。
劣化は時間が経過するにつれて範囲が広まり、度合いも激しくなっていきます。そのため、一般的に12〜15年という長い周期で実施される大規模修繕では、回数を追うごとに対応するべき劣化箇所が増えていくでしょう。
特に初回と2回目では違いが大きいので、お住まいのマンションがまだ2回目の大規模修繕を終えていないのであれば注意が必要です。
1回目の大規模修繕は工事を先送りにしやすい
竣工から十数年後を目安に行われる1回目の大規模修繕は、劣化箇所を新築に近い状態に回復させる目的で実施するのが一般的。
主な修繕内容は、外壁塗装の塗り替えやタイルの補修、シーリングの打ち替え、防水工事など。それ以外にも、新築時の施工不良によって不具合を感じる箇所があれば、1回目の大規模修繕が改善のチャンスとなります。
竣工からそれほど長い期間が経過していないため、緊急で対応しなければならない修繕は少なく、必要最低限の工事だけで済ませることも可能です。工事の実施を次回以降に先送りにしやすいという点は、初回の大規模修繕の特徴の1つといえます。
ただし、お住まいの地域によっては、日常的に湿気が高い傾向にあったり、海の近くで外壁が常に潮風に晒されたりするなど、環境要因によって一般的なマンションよりも劣化の進行が早い場合があるので一概には言えません。
また、初回の大規模修繕では管理組合のほとんどのメンバーが大規模修繕未経験者であることが多く、知識や経験がないためスムーズに進められない場合もあるので注意が必要です。
2回目の大規模修繕は取り替えが必要な設備が多い
2回目の大規模修繕は、竣工から少なくとも20年以上が経過してから行われることが多くなります。なかには、築30年以上となっているマンションもあるでしょう。
1回目の大規模修繕は「全体的な補修」のレベルで済む場合が多くありますが、2回目の時は前回よりも建物の劣化が進行しているため、より広範囲の修繕が必要です。
例えば屋上の防水工事の場合、初回は部分的な実施だけで済むかもしれませんが、2回目は屋上全面を対象とした工事が必要になる可能性が高くなります。
補修、修繕だけでなく、電気・給排水・消防関連で使用期限を迎える設備や道具が多くあるため、取り替えなども視野にいれなければなりません。
エレベーターのリニューアルも検討するべき事項です。国土交通省のガイドラインでは、エレベーターは新規設置から15年で補修、30年で取り替えることを推奨されていますが、メーカーによっては耐用年数を25年としているところもあります。2回目の大規模修繕のタイミングと近いため、合わせて取り替えを実施する管理組合もあるようです。
また、竣工から年月が経過しているので、その時点の新築マンションと比較するとデザインが古くなっていたり、機能性に大きな差が出ていたりすることも考えられます。古いマンションというイメージを払拭して、資産価値の向上を目指すのであれば、デザインや共用設備のグレードアップ工事の実施も検討しましょう。
2回目大規模修繕は予算不足に要注意
2回目の大規模修繕では、対応しなければならない範囲が増えるので、費用も高額になります。1回目の大規模修繕は平均で1戸当たり約100万円が費用の目安ですが、2回目の大規模修繕は、1戸当たり約120万円かかるとされています。
1回目から一戸当たり20万円の値上がりとなるので、総戸数が100戸のマンションの場合で2000万円の増額です。
実施内容によってはさらに高額となる場合も考えられるので、十分に修繕積立金を集めてこられなかった管理組合は、予算不足になってしまうかもしれません。
予算が足りない場合は、住民から一時金を集めたり、金融機関から借り入れたりといった対応が必要になるでしょう。資金繰りが難しい場合には、修繕工事の延期や中断が余儀なくされることも考えられます。
予算不足を防ぐためには、費用が高額になる2回目に備えて、初回の大規模修繕での実施項目を減らして、なるべく出費を少なくする、といったように先を見据えて計画的に進めることが重要です。
また、建物診断の実施も修繕費の節約に効果が見込めます。建物診断とは、専門知識を持つ業者に依頼して、建物の劣化状況や耐震性などの調査を行うものです。
診断によって、急いで実施する必要がない工事がわかるので、修繕の優先度を把握できます。優先度が低い工事は次回の大規模修繕へ先送りしても問題ない場合もあるので、その分修繕費用を抑えることが可能です。
診断費用はマンションの規模によって異なります。小規模のマンションであれば20〜40万円程度ですが、戸数が200を超える大規模マンションの場合、目安が50〜100万円と高額になるので、メリットとデメリットを比較して実施を検討しましょう。
以上、今回は1回目と2回目の大規模修繕の違いについて解説しました。
長期修繕計画を立てる際は、大規模修繕は回数によって実施する内容も費用も大きな違いがあることを理解して取り組みましょう。また、想定外の修繕が必要な場合も多くあるので、計画は定期的な見直しが必要です。
イラスト:平松 慶
この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!