大規模修繕は12年周期が目安! 理由や最適な時期を知る方法も解説
マンションの大規模修繕の必要性とは? 知っておくべき予備知識も紹介
長く安全に、マンションで暮らすために欠かすことができない大規模修繕。建物の安全性や快適な暮らしを保つだけでなく、将来のマンションの資産価値にも大きく影響を与えるため、管理組合にとって非常に重要なイベントです。
この記事では、大規模修繕が必要となる理由や、事前に知っておきたい予備知識について解説していきます。
大規模修繕が必要となる3つの理由
マンションの区分所有者であれば、いつかは関わる必要が出る大規模修繕。費用も手間も大きくかかるため、できればやりたくないという人も多いかもしれません。しかし、長く安全にマンションで暮らすためには、大規模修繕の実施が必要不可欠です。
なぜ、大規模修繕が重要となるのか、その理由について理解を深めましょう。
【理由1】資産価値の低下を防ぐ
マンションは直射日光や雨風に常に晒されるため、建設後時間が経過するにつれて建物の劣化が進行していきます。劣化が進むと、建物の美観が損なわれるため、資産としての価値が低下してしまいます。
ほかの外部要因としては、気温や湿度の変化によってガラスやコンクリートにヒビが入ったり、コンクリートのアルカリ成分が減って中性化が進み、内部の鉄筋が酸化したりします。
劣化は放置すればどんどん悪化していき、資産価値が低下していくごとに新規入居者の獲得が困難となっていくでしょう。
そのような状況に陥らないためには、大規模修繕で劣化箇所の補修を行うのが効果的です。マンションの資産価値を維持するためには、大規模修繕を適切に行って劣化に対処していく必要があります。
【理由2】マンションの安全性を保つ
建物に使用されている資材の劣化によって、生活するうえでの安全性が低下する点にも注意が必要です。 資材は経年による時間的要因や、日々繰り返し利用されることによる消耗で劣化が進行していきます。
例えば、外壁塗装はウレタン系塗料で約6〜8年、フッ素系塗料で約15〜20年が寿命の目安とされています。屋上防水であれば、安価なウレタン防水で8〜10年、耐用年数の長いアスファルト防水で15〜30年程度です。
日々の暮らしでは気がつかなくても、長期間かけて進行した劣化は、時に重大な事故の原因となる場合も。過去には、長期間修繕が行われなかったために、バルコニーが崩落した事例や、外壁タイルが剥落して、通行人が負傷した重大な事故が起きた事例が存在します。
国土交通省から発表されている「マンション政策の現状と課題」においても、劣化が進行した建物は「生命・身体・財産に影響する問題を抱えるものが多い」と指摘しています。
マンションは多くの住民が暮らす場所です。劣化を放置すれば、危険な状況を招く場合があるので、安全面に細心の注意を払って修繕を行いましょう。
【理由3】時代のニーズに対応する
建設から数十年が経過したマンションは、最新のトレンドと比較すると、いささか時代遅れだと言わざるを得なくなるでしょう。
居住空間としてのマンションに求められる設備や性能は、時代ごとに変化していくもの。バリアフリー化や、良質なネット環境、宅配ボックスの設置など、時代ごとに求められるニーズに対応し、「バリューアップ」していかなければ、新規入居者の獲得で苦労するかもしれません。
特に、高齢化社会への対応が課題となる日本では、バリアフリー化が進んだマンションは注目が高まっていくと予測されます。バリアフリー化の例としては、下記のようなものが挙げられます。
・段差の解消
・スロープの設置
・廊下や階段、エレベーター内に手すりを設置
・自動ドアの設置
・床の滑り止め
・点字ブロックの設置
このように、時代の先を読んで適応していくマンションづくりを大規模修繕で実現できれば、物件としての資産価値もあがり、築年数が長いマンションであっても新規入居者を獲得しやすくなるでしょう。
大規模修繕で知っておくべき予備知識
大規模修繕に適したタイミングはマンションによって異なる
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、12年周期での大規模修繕の実施が推奨されています。これは、あくまで目安の数値であり、近年では建築資材の質の向上によって「18年周期でも問題ない」といった意見も多く聞かれるようになりました。
積雪や雨の多い地域であったり、高温多湿な地域など、適切な修繕のタイミングは、土地ごとの気候の特性によって異なります。また、建築方式や使用されている資材も修繕のタイミングに深く関わる要素です。
一概にはいえない以上、適切な時期を知るのは困難ですが、建物診断を実施すれば、ある程度まで正確な状況を把握できるでしょう。
大規模修繕の周期については、下記の記事でも解説しています。
大規模修繕に必要な費用は一戸辺り約100万円! 積み立て金不足は要注意
大規模修繕工事にかかる費用は1戸あたり100万円前後が相場とされています。マンションの規模によっては、総額で数千万~億単位になる場合も。
非常に高額な費用がかかるため、修繕積立金の不足によるトラブルは多く発生しています。
適切なタイミングで必要な修繕を行うためには、実際に必要となる費用を見据えた資金計画を立てて、普段から漏れがないように回収していく必要があります。
大規模マンションなら1年以上かかる場合も! 工事期間は規模によって異なる
大規模修繕の工事にかかる期間は、マンションの規模によって異なります。
戸数が50戸未満であれば3ヵ月~4ヶ月、50戸以上100戸未満の中規模マンションなら4ヶ月~6ヶ月、それ以上の大規模なマンションは1年以上かかる場合も考えられるでしょう。
また、建物の形状も工期に大きく影響を与える要素です。特殊な形状をしている建物は、通常よりも工事に長い期間が必要となる場合も考えられるので、事前に施工会社と確認しておきましょう。
大規模修繕は劣化に対抗するために重要
マンションで暮らすのであれば、いつかは必ず向き合う必要が出る「劣化」という大問題。管理組合にできる劣化への最良の対抗策は、適切な大規模修繕の実施です。
今後、大規模修繕を行う際には、この記事で紹介した大規模修繕の必要性を考慮して、資産価値の向上につながる修繕を意識して計画を立てていきましょう。