マンションの大規模修繕の内容は?
大規模修繕工事の準備から完了までの流れと注意点を解説!
マンションでは十数年に一度のタイミングで、大規模修繕を行う必要があります。とはいえ「いったい何から手をつければいいの?」と不安に思う方もいるでしょう。
この記事ではそんな大規模修繕を控えた方に向けて、準備から工事完了までの一般的な流れを順を追って説明していきます!
- 目次
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- 大規模修繕工事は建物を守る定期メンテナンス
- 事前準備から大規模修繕完了までの流れを解説!
- 【手順1】理事会とは別の専門チーム「修繕委員会」を発足
- 【手順2】外部専門家への依頼を検討する
- 【手順3】3つある施工会社への依頼方法から1つを選ぶ!
- 【手順4】建物を診断する
- 【手順5】資金計画を立てる
- 【手順6】施工会社を決定する
- 【手順7】総会で工事の実施を承認してもらう
- 【手順8】工事期間中の影響について説明会を開催する
- 【手順9】いよいよ着工!
- 【手順10】竣工検査とアフター点検を実施する
- 【手順11】理事会で慰労会などを開催する
- 大規模修繕時の注意点
- 大規模修繕は施工会社の選定が最も重要!
- 大規模修繕工事費用を自動見積もりする!
大規模修繕工事は建物を守る定期メンテナンス
頑丈で劣化しないイメージのあるマンションであっても、十数年経つと、紫外線や風雨の影響で外壁などの劣化が進みます。そのため建物の正常な機能や資産価値を維持するためにも、定期的なメンテナンスを行う必要があるのです。
その手段の1つが、大規模修繕工事。特に十数年に一度のタイミングで実施される大規模修繕では、外壁の塗装や屋上の防水、給排水管などの比較的規模の大きい工事を実施することになります。
大規模な工事であるため、費用も高額になるケースがほとんど。一括で支払うことは難しいため、基本的にマンションの所有者は毎月「修繕積立金」を納め、工事までに必要な資金を少しずつ貯えていくことになります。
詳しくは以下の記事でも解説しています。
事前準備から大規模修繕完了までの流れを解説!
では、以降で事前準備から工事完了まで、大規模修繕の一般的な流れを紹介していきたいと思います。
【手順1】理事会とは別の専門チーム「修繕委員会」を発足
大がかりな工事が見込まれる大規模修繕は、予算計画の策定から工事完了まで通常3〜5年程度という長い期間に渡る可能性があります。そのため日常的な管理業務に時間を割かれる理事会とは別に、「修繕委員会」という大規模修繕専門チームの立ち上げも検討したいところ。
委員会を発足する際には、そもそも大規模修繕工事が今すぐに必要なのかも考えておきましょう。
また、修繕委員会の委員は理事会の役員のなかから選ぶ必要はありません。修繕委員会は立候補制で委員を決めることもあれば、マンションの専門知識に長けているとされる建設業界や不動産業界関係の住人が推薦されるケースもあるようです。
【手順2】外部専門家への依頼を検討する
修繕委員会を発足したとして、必ずしも充分な専門知識を持ったメンバーが集まるとは限りません。
委員会や管理会社を中心に計画を進めるケースももちろんありますが、規模が大きいマンションほど、施工会社の選定や計画の進行に客観性を持たせるため、外部の専門家に依頼するようです。
委員会メンバーの知識やマンションの規模を考慮し、設計事務所や専門コンサルティング会社といった専門家の起用も検討しましょう。
【手順3】3つある施工会社への依頼方法から1つを選ぶ!
次に、工事を行ってくれる施工会社への発注方法を決めておきましょう。
大規模修繕も「管理会社が主導で行ってくれる」と考えている住民の方も多いかもしれません。確かに、管理会社にすべて任せる方法もあります。これを「管理会社施工方式」と呼び、窓口を一括で管理会社にできる分、管理組合の負担を軽減できます。
ただ、その分大規模修繕全体にかかる費用は高額になる可能性があるでしょう。すでに管理会社から発注する施工業者が決まっており、競争原理が働かないのはもちろん、管理会社に支払う中間手数料も発生してしまうためです。なかには、工事金額が相場よりも数千万円以上も高額になるケースもあるといいます。
そこで工事金額を抑える方法としてよく利用されるのが、「設計管理方式」や「責任施工方式」です。
「設計管理方式」は、管理会社ではなく外部のコンサルティング会社に依頼して施工会社を選ぶ方法。良いコンサルティング会社を選ぶ手間はかかりますが、複数の施工会社を比較検討することになるため「管理会社にすべてお任せ」よりも、修繕にかかる費用を抑えられる可能性があります。また、「責任施工方式」は管理組合が自分たちで修繕業者を選ぶ方法。管理会社やコンサルティング会社に支払う手数料が発生しないため、工事金額を最も抑えられる方法といえます。しかし正確な見積もりを依頼するために必要な設計書(主にマンションの修繕箇所を示した書類)の作成や、適切な施工会社の見極めなど、大規模修繕が初めての管理組合にとってはハードルが高そうです。
ここでまで紹介した3つの方法は、それぞれメリット・デメリットがあるため、改めて以下の表でも整理してみました。
【手順4】建物を診断する
「ここの外壁が痛んでいる」「ここのタイルを貼り替えたい」など、どの箇所を修繕してもらうのかを事前に把握するため、建物調査を行う必要があります。
また、建物調査は施工会社に正確な見積もりを依頼する際に必要となる「設計書」を作成する目的も。建物調査については、コンサルティング会社かもしくは専門の調査会社に依頼しましょう。
【手順5】資金計画を立てる
大規模修繕に向けた準備としては、長期修繕計画などをもとに予算の調整も必要となります。
仮に修繕費用が不足している状態で大規模修繕までまだ期間があるなら、修繕積立金の値上げを総会で承認してもらう必要なども出てくるでしょう。
また建物調査の結果を受けて急ぐ必要のない一部の工事を延期することで、当面は必要な修繕費用を抑えられる可能性もあります。それでも足りない場合は、住宅支援機構が提供する「マンション共用部分リフォーム融資」など、マンションの修繕に利用できるローンも検討していきましょう。
今回の工事だけではなく、次回以降の大規模修繕にも費用はかかってきます。今後の工事や資金計画を見通しつつ、予算の調整を行えると良いですね。
【手順6】施工会社を決定する
管理会社にお任せする「管理会社施工方式」ではなく「設計管理方式」や「責任施工方式」を利用する場合、工事を依頼する施工会社の選定は建築業界紙で公募を行い、書類選考で絞る方法が一般的です。
そして書類選考で厳選した後は、各施工会社に見積もりやプレゼンテーションを依頼する流れとなります。
プレゼンテーションでは、工事の内容や体制はもちろん、住民に対するケアやセキュリティ対策、保証・アフターフォローなども含めて確認することが目的。定期的な進捗報告など、円滑なコミュニケーションが可能かどうかも相談しておきましょう。
また事前に、帝国データバンクなどを通じた経営状態の把握や、ホームページなどに掲載されている過去の施工事例も確認しておくと安心です。
【手順7】総会で工事の実施を承認してもらう
施工会社やスケジュールが決まったら、臨時総会を開催し、工事の実施について住民からの承認を得る必要もあります。どの業者に依頼するのか、またいつ実施するのかなどの説明も踏まえて、工事の実施を承諾してもらいましょう。
なお定期的に掲示板や説明会などで大規模修繕に向けた進捗状況を報告しておくと、住民側が事前に状況を把握できている分、臨時総会でも賛同してもらいやすいのではないでしょうか。
【手順8】工事期間中の影響について説明会を開催する
総会で工事の実施が承認されたら、理事会や修繕委員会主導で、大規模修繕期間中の生活への影響について住民に説明する機会を設けましょう。
工事が始まると足場でマンションの周囲が覆われ、洗濯物が干しづらくなったり作業員が行き来したりすることで、生活への影響が少なからず生じます。こういった生活に影響を与える旨も、施工会社やコンサルティング会社の担当者の協力を得ながら事前に説明しておくと、工事期間中の苦情や問い合わせを軽減できるでしょう。
【手順9】いよいよ着工!
一般的に着工から工事終了までは、下記のように進んでいきます。
①仮設足場の組立
②外壁の下地、タイルの補修
③シーリング
④洗浄
⑤外壁・鉄部の塗装
⑥屋上防水工事
⑦その他(開放廊下、階段、バルコニー)床防水工事
⑧完成検査
⑨足場の解体
着工すると、施工会社の現場代理人と週1回程度「ここはもう少し○○して欲しい」といった話し合いを踏まえながら進行していきます。
ちなみに現場代理人とは、建築現場の「司令塔」としての役割を果たす人物。施工会社側の窓口担当者として、工事期間中は現場に常駐し、コンサルティング会社や住民と直接やり取りすることになります。
なお、コンサルティング会社に工事の監理業務を依頼している場合も、すべて任せっきりというわけにはいきません。月に1回程度、コンサルティング会社の担当者には修繕委員会のミーティングに同席してもらい、随時住民側の要望も伝えていきたいところ。そしてコンサルティング会社経由で、住民の要望が工事に反映されるかたちで大規模修繕は進行していきます。
【手順10】竣工検査とアフター点検を実施する
工事が終われば完了というわけではなく、当初の修繕計画通りに工事が行われたかどうか、最後に竣工検査を行います。検査の時点で仮に問題がある場合は、再工事や追加工事に関して施工会社との交渉やスケジュール調整などを実施することになるでしょう。
なお、問題がなければ理事会で確認を取り、工事完了の書類にサインします。このとき施工会社から受け取る工事完了届はもちろん、図面や修繕箇所の写真などは、次回以降の大規模修繕で活かすことになるため大切に保管しておきましょう。
さらに、工事終了後となる1年・3年・7年という周期でアフター点検も実施しておきたいところ。特に防水回りの修繕は、しばらく経過した後に不備が顕在化することも多いと言われるため、重点的に点検しておきましょう。アフター点検については大規模修繕の工事プランに含まれていることもあり、修繕後もサポートしてくれるかどうかも業者を選ぶポイントといえそうです。
【手順11】理事会で慰労会などを開催する
竣工検査を終え、無事に工事が完了したら最後に理事会で慰労会などの開催も検討しましょう。ともに大規模修繕を乗り切った仲間として、住民同士の結束をさらに固める機会にもなります。
大規模修繕時の注意点
注意しておきたいのは、大規模修繕工事を主導するのはあくまでも管理組合であるという点です。
専門的な知識が必要で、工事期間も長くなるため、修繕委員会のメンバーや委託先の施工会社に任せっきりになってしまうケースもあるでしょう。
しかし、マンションは全ての管理組合員のものです。全員が住みよい環境を保っていこうという意識を持つ必要があります。
修繕委員会や理事会から積極的に状況を共有し、管理組合全体で修繕工事を「自分ごと」として認識してもらうよう努めましょう。
また、大規模修繕工事は1度だけではありません。次回の大規模修繕に向けて、図面や材料のサンプル、工事記録、ノウハウを蓄積し、引き継げる状態にしておきましょう。
今回の工事を振り返って予算や工事内容に変更があった場合は、次回以降のプランの変更も検討する必要があります。
大規模修繕は施工会社の選定が最も重要!
建物の経年劣化を防ぎ、資産価値を維持するために必要不可欠な大規模修繕。ただ、大規模な工事となるため、費用は高額になります。適正な価格で、質の高い工事を行ってもらうためにも、やはり施工会社の選定が最も鍵を握るといえそうです。
前述した通りマンションでは「施工会社の選定も管理会社に任せる」という場合も多く、複数の業者から相見積もりを取る機会はそれほど多くないという現状があります。そのため純粋に複数の施工会社を比較検討するだけでも、適正価格でなおかつ優良業者を見つけるきっかけになるでしょう。
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