マンションの外壁塗装で利用できる助成金の申請方法とは?
大規模修繕の工事項目として最もポピュラーな修繕工事が外壁塗装です。事実、2018年に国土交通省が行った調査によると、大規模修繕工事を実施した管理組合の内、88%は外壁塗装関連の工事を行っているというデータもあります。
多くのマンションにとって避けては通れないといえる外壁塗装ですが、「こんなに費用がかかるなんて……」と、思わぬ金額に頭を悩ませる理事会役員の方もいるのではないでしょうか。そこでかかった費用の一部を補助してもらえる「助成金」の活用を、ぜひ検討したいところ。今回は助成金の受け取り条件や申請方法などを中心に解説します。
外壁塗装は10年周期! 助成金も活用しよう
そもそもマンションの外壁というのは、風雨や紫外線などの影響で少しずつ劣化します。そのため一般的には、10〜12年の周期で外壁の塗装工事を行う必要があります。
数十年先とはいえ、定期的に実施する必要があるわけですが、工事にかかる費用が塗料代だけではないことは知っていますか。作業用の足場の設置や作業員の人件費などによって、想像以上に費用がかさむ場合もあるのです。築年数や戸数などによって前後するため、一概にいくらとは言えませんが、少なくとも数百万以上はかかるといえます。
そこで工事費用を少しでも軽減するために利用したいのが、各地方自治体などが設けている助成金や補助金というわけです。
地方自治体ごとに助成金の金額は違う
外壁塗装の助成金や補助金のシステムは各地方自治体が定めています。そのため、どの自治体でも制度が利用できるわけではなく、受給できる金額も地域によって異なります。
また自治体によっては、壁全面を塗装する場合に限り費用の一部を補助するなど、工事内容の条件を定めているところも。
返済不要の制度ではありますが、審査や条件が厳しいケースもあるのでよく確認しておきましょう。
なお、支払いは工事終了後に行われます。
外壁塗装に関わる助成金の例
実際に、各自治体ではどのような助成金制度があるでしょうか。例を紹介します。
・東京都品川区「住宅改善工事助成事業(エコ&バリアフリー住宅改修)」
断熱素材や環境に配慮した素材を用いるなどエコ住宅への改修、ならびに防災やバリアフリーを目指した改修に適用される制度です。
マンション管理組合も助成の対象となっており、100万円を上限として工事費用の10%が補助されます。対象期間は令和5年4月3日(月)~令和6年2月14日(水)です。
また、管理組合ではなく個人住宅が対象となる例もご紹介します。
マンションの外壁は個人の所有物ではないため、自由に改修することはできませんが、そのほかのリフォーム等には利用できるでしょう。
・千葉県我孫子市「住宅リフォーム補助金制度」
子育て世帯の場合には優遇があり、上限は50万円となっています。
・大阪府摂津市「住宅リフォーム補助金」
摂津市内で新たに同居・近居するために、子世帯または親等が既存住宅のリフォームを行った場合に適用されます。補助上限額は上限25万円(リフォーム費の2分の1まで)です。
具体例からみる助成金の受け取り条件
では助成金を受け取るためには、具体的にどういった条件をクリアすれば良いのでしょうか。ここでは、横浜市の「住まいのエコリノベーション(省エネ改修)補助制度」を利用する前提で、まずは実際の受給条件や申請者の条件などをみていきましょう。
基本は省エネ対策のための外壁塗装が対象
外壁塗装の場合は、断熱を目的とする工事(断熱改修)であることが対象条件として挙げられています。
現在、外壁塗装で使用する塗料には、性能をプラスしたものが増えてきました。なかでも、省エネ対策用として注目されているのが断熱性能や遮熱性能がある塗料です。横浜市が指定条件としている断熱改修とは、室内の保温効果を保つための外壁塗装です。つまり冬に、室内の温度を暖かく保つ効果が期待できます。
また自治体によっては、遮熱を目的とした工事(遮熱塗装)も対象条件として挙げられていることがあります。遮熱塗装とは、室内の温度が上がるのを抑えて涼しく保ちたい場合に有効な処置です。つまり夏を快適に過ごしたい場合の、外壁塗装といえるでしょう。
横浜市に限らず、概ね助成金の対象となる外壁塗装は、「省エネ対策を目的とした工事」に限られているのが一般的です。太陽光発電システムの設置など、省エネリフォームを実施する場合なども対象となることがあります。
管理組合の代表理事が申請するのが基本
塗装工事を行う場合、誰が助成金の申請を行えば良いのでしょうか。横浜市の場合は、「市内にある対象の建物(寮・社宅は対象外)の所有者または区分所有者」としています。マンション全体の改修工事を行うのであれば、維持・管理などを先導して行う理事会の代表者が申請するのが一般的でしょう。
あわせて助成金は、工事着工前の申請が必要ということも覚えておきましょう。着工した後に申請をしても受け付けてもらえません。
助成金の申請には見積書が必要! 工事開始までの4ステップ
実際に助成金を申請してから工事までの流れを確認していきましょう。
【ステップ1】住んでいる自治体に助成金制度があるかチェック
まずは自分の住んでいる自治体で、外壁塗装に関する助成金があるかどうかから、各市町村の公式ホームページでチェックしていきます。
また、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が運営している「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(令和元年度版)」で検索することもできます。
予定している外壁塗装の内容が、助成金の対象条件に当てはまるかどうかも、あわせて確認しましょう。
【ステップ2】塗装業者に見積りを依頼する
対象条件に当てはまることが確認できたら、塗装業者に見積もりをお願いします。
助成金の申請は、基本的に見積書の提出が必要ですので、事前に手配をしておきましょう。
なお見積りに関しては、1社ではなく複数社に依頼をかけて比較検討することで、適正な価格が見えてきます。
【ステップ3】申請に必要な書類の準備・提出
次に、助成金の申請において必要な書類を準備しましょう。前述した横浜市の場合、主に以下の書類が必要です。
・事業計画書(サイト上からダウンロード可)
・補助申請額の内訳表
・位置図(住宅地図に敷地を示したもの)
・見積書
・工事箇所を示した図面
・建築確認通知書の写し
・施工前の工事箇所の写真
・同意書
・その他(申請者が建物の所有者であることを証明する資料など)
以上の資料が揃ったら、横浜市の場合は「横浜市住宅供給公社 街づくり事業課」の窓口へ直接持参します(郵送不可)。
自治体によっては、下記のような書類も必要になります。
・塗料の性能に関する証明書類
・委任状(施工業者が代理で申請する場合)
なお横浜市の場合、審査に必要な期間の目安は約3週間とされているため、そこから逆算すると工事着工の1ヵ月以上前までには書類を提出する必要があるでしょう。
【ステップ4】塗装業者と契約・着工(塗装開始)
申請を行い、助成金の交付が決まったら、見積りを依頼していた塗装業者と正式に契約を結びます。
当初予定していた工事内容に変更があった場合は、「工事変更届」の提出を義務づけている自治体もあります。
工事が終わったら「工事完了届」を提出!お金を受け取るまでの2ステップ
無事に工事が完了したら、基本的には次の手順を踏むことで助成金を受け取ることができます。
ステップ①:工事完了届の提出
まずは工事完了届を申請した自治体に提出しましょう。あわせて横浜市の場合は、主に以下の書類を提出する必要があります。
・工事施工中の写真
・工事完了後の完成写真
・工事請負契約書の写し
・その他(領収書の写しなど)
ステップ②:交付額の決定・請求書の提出
必要な書類を提出し、自治体による検査が完了したら、交付額の決定通知が来ます。その後、各自治体が用意している請求書に交付額や口座番号などを記載したうえで提出しましょう。
助成金・補助金を使う際の注意点
助成金や補助金を利用する際には、申請期限をよく確認しておく必要があります。期限内であっても予算を超える応募があった場合には、予定より早く締め切られるケースも少なくありません。
申請には見取り図や平面図、工事の見積もり書などが必要となる場合も。書類を揃えている間に締め切られてしまわないよう、すみやかに手続きしましょう。
助成金・補助金が使えない場合の費用削減方法
管理組合で火災保険に加入している場合、一定の自然災害等による破損は補償の対象となるかもしれません。一度、加入している保険の内容を確認してみましょう。施工業者によっては、保険の適用範囲かどうか助言してくれるケースもあります。
また、もっとも手軽に費用を削減する方法は、相見積もりを取ることです。先に述べたように、複数社に見積を依頼すると適正価格がわかるだけでなく、値引き交渉の材料としても活用できます。
助成金の活用で修繕にかかる出費を抑えよう
マンションの外壁塗装に利用できる助成金は、前述した通り住んでいる地域によって対象となる条件や、受給できる金額などが変わってきます。まずは、住んでいる自治体の公式ホームページから、利用できる助成金がないかどうかを確認する。そして助成金を活用することで、外壁塗装にかかる出費を賢く抑えましょう。
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