大規模修繕工事の国土交通省ガイドラインとは? 改定内容も紹介!
大規模修繕工事の周期が12年とされていたのは昔の話。最近では、マンションに合った周期として、15年や18年で行われることも珍しくありません。
周期を決める参考となるのが、国土交通省ガイドライン。今回は、このガイドラインについて、2021年に改訂された内容も含めて解説していきます。
大規模修繕工事の国土交通省ガイドラインとは?
国土交通省は、マンションの大規模修繕工事に関するガイドラインを公表しています。このガイドラインでは、マンションの現状を踏まえた改修や建て替えについて、データや法律なども絡めた多角的な提案を行っており、大規模修繕を控えた管理組合にとって非常に有用です。
国土交通省がこの様なデータを公表するのは、各マンションがタイミングよく、円滑な修繕工事を行うための目安を提示することが目的です。ガイドラインを参考にすれば、管理組合が無理のない修繕積立金の計画を立てるための助けとなるでしょう。
大規模修繕工事の定義
国土交通省が作成した長期修繕計画作成ガイドラインには、マンションの大規模修繕工事について「マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう」と記載されています。
時間の経過が進むにつれて、建物の劣化は必ず起こるもの。快適な居住性や資産価値を維持し、居住者や周辺住民が安全に暮らすためにも、大規模修繕工事を定期的に行うことが必要です。
国土交通省ガイドラインの主な内容
【1】築30年超のマンションの問題点
ガイドラインでは、現代のマンションが抱える問題点として、マンションの高経年化が指摘されています。
国土交通省調べによる、建築後30年超のマンション管理組合又は建替え相談のあるマンション管理組合への調査では、現在のマンションの問題点として「配管や給水設備の劣化」と「地震などに対する安全性の不安」を挙げるマンションが5割を超える結果となりました。
さらに、今後の不安として「居住者の高齢化から管理組合・自治会に影響が出ること」と回答したマンションが全体の7割を超えています。居住者の高齢化は、管理会社からみた問題点としても、もっとも多く回答された項目でした。
【2】計画修繕・改良・改修の重要性
高経年マンションの場合は、修繕による性能の回復だけでなく、マンションの性能を向上させ、住みやすくしていくことが必要です。
ガイドラインでは、劣化に対応していくためには「修繕」「改修」「改良」の3つのポイントが重要になると紹介されています。3つのポイントはそれぞれ以下のように定義されています。
1.修繕
部材や設備の劣化部の修理や取替えを行い、劣化した建物又はその部分の性能・機能を実用上支障のない状態まで回復させる行為
2.改良
建物各部の性能・機能のグレードアップ(マンションを構成する材料や設備を新しい種類のものに取替えることや、新しい性能・機能等を付加することなど)
3.改修
修繕及び改良(グレードアップ)により、建築物の性能を改善する変更工事
築年数が長いマンション程、この3つを大々的に実施していくことが必要となるといえるでしょう。
マンション長期修繕計画ガイドラインの改正について
国土交通省は、マンション管理の適正化推進に関する法律の改正を踏まえて、2021年9月28日に長期修繕計画作成と修繕積立金などに関するガイドライン改定を実施しています。
今後、修繕計画を見直す際の参考として、主要な改訂ポイントを押さえておきましょう。
長期修繕計画作成ガイドラインの改訂点
今回の改訂は、マンション管理の適正化推進に関する法律の改正、高経年マンションの増加や社会情勢の変化を踏まえて行われました。
改定における主なポイントは次の3つです。
1. 長期修繕計画の計画期間
これまでは「中古マンションは25年以上、新築は30年以上」が長期修繕計画を立てる期間として推奨されていました。
今回の改定では「中古・新築マンションともに30年以上で、2回の大規模修繕工事を含む」という内容に変更されています。
2. 大規模修繕工事の修繕周期の目安
工事事例等を踏まえて、一定の幅のある修繕周期に変更されています。
具体的な例として、外壁塗装の塗替えが、既存の12年から12~15年、空調・換気設備の取換については、改訂前の15年から13~17年へ変更となりました。
3. 社会的要請を踏まえた修繕工事の有効性
とくに高経年マンションでは、省エネ性能が低い水準である場合が多いため、向上させるための改修工事の有効性が説明されています。
また、「昇降機の適切な維持管理に関する指針(平成 28 年2月国土交通省策定)」に沿って、定期的なエレベーター点検を実施することの重要性も示されています。
修繕積立金ガイドラインの改訂点
修繕積立金のガイドラインについても内容が改訂されています。主な2つのポイントを押さえておきましょう。
1. 修繕積立金の見直し
これまでの適切な長期修繕計画に基づく修繕積立金の事例を踏まえ、目安とする修繕積立金の㎡単価を更新。
たとえば、改訂されたガイドラインでは、20階建て以上の高層マンションの平均値は一ヶ月あたり338円/㎡、20階建て未満の平均値は建築延床面積で変わり、252~335円/㎡と紹介されています。
2. 修繕積立金の目安に係る計算式の見直し
新たに既存マンションも対象に追加して、修繕積立金額の目安に係る計算式の見直しが行われました。
積立額は「均等積立方式」か「段階増額積立方式」かで異なってきます。
均等積立方式は、長期修繕計画の期間中に、積立金の額が均等になるように金額設定する方式。
段階増額積立方式は、最初の内は積立額を抑えておいて、期間が経過するにつれて段階的に増額していくもの。長く住むにつれて、将来の負担が増加していきます。
大規模修繕工事の周期が12年とされてきたワケ
一般的に大規模修繕の周期が12年とされてきたのは、これまでのガイドラインに「大規模修繕(周期12年程度)」と記載があったためです。この記載を根拠として、多くの分譲マンションの長期修繕計画が「12年ごとに行うもの」として設定されてきました。
しかし、12年ごとという周期は一般的な目安にすぎず、必ずしもガイドラインに従わなければならないというわけではありません。最近では、15年や18年などへ、周期の見直しの提案を行う管理会社も出てきました。
たとえば、塩害が想定される地域と、雨も日照も標準的な地域では、建物の経年劣化の進行の早さに当然差が出ます。このように、マンションで大規模修繕が必要となる周期は、各地域ごとの天候の差や、建物に使用されている素材によって異なるものです。そのため、国内にあるすべてのマンションに対して、一律の修繕期間を推奨することは、ナンセンスだといえるでしょう。
今回の改定では、過去の工事事例等を踏まえて、大規模修繕の推奨周期が、一定の幅のある修繕周期に変更されました。たとえば、外壁の塗装塗替えは、改定前の12年が、12~15年、空調・換気設備の取換は改定前の15年から、13~17年へと変更されています。
改定後のガイドラインを大規模修繕の参考にしよう
大規模修繕工事の国土交通省ガイドラインは、マンションの現状を踏まえた改修や建て替えについて、データや法律なども絡めた多角的な提案を記載したものです。
ガイドラインは2021年に内容が一部改訂されています。改訂後の内容を参考にすれば、これまで以上に、マンションごとの事情に適した長期修繕計画の作成、修繕積立金の金額設定ができるようになりました。
これまでは、一般的に大規模修繕の周期が12年とされてきましたが、近年は15年や18年などの周期で見直し提案を行う管理会社も出てきています。改訂後のガイドラインを参考にして、自分のマンションに適した大規模修繕を行っていきましょう。