連載:ついにやって来た!大規模修繕

後付けでの工事も可能!断熱化でマンションの住み心地アップを目指す

2024.12.26
後付けでの工事も可能!断熱化でマンションの住み心地アップを目指す

大規模修繕を控えた皆さんに向けて、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回はマンションの断熱化について。断熱機能がないマンションでも、後付けでリフォームが可能なので断熱化に関心がある人はご一読ください。

断熱化でマンションが快適な温度になる

断熱化で室内の温度を一定に保つ効果を得られる

「断熱」とは、熱の移動を断つことを意味する言葉です。住宅における断熱は、熱伝導率の低い素材などを利用し、外からの熱を屋内に伝わりにくくすることで室内の温度を一定に保つ効果を指します。

断熱化されたマンションでは夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるため、冷暖房の電気代を節約可能です。

高い断熱性能を持つ建物では、屋内全体を同じぐらいの温度に保てるので、冷暖房設備が行き届いていないトイレや廊下などでも快適に過ごせます。

内断熱よりも外断熱のほうが優秀とされる理由

断熱材で建物全体を包む外断熱のほうが効果が高い

断熱の工法は断熱材を設置する場所によって、外断熱と内断熱の2種類に分類されます。

外断熱は建物の外側に断熱材を設置して、建物全体を包む工法です。全体が覆われることにより、住宅の気密性が向上します。外が寒くても、冷たい空気が屋内に入り込みづらくなるので、冬でも快適に過ごせるでしょう。

また、気密性の高さによって結露の発生が抑えられるので、マンションに使われている金属製の資材が錆びにくくなるメリットも。外壁のすぐ内側に断熱材が設置されるので、柱などを保護する効果もあり、耐久性向上のメリットも得られます。

一方の内断熱は、建物内側の柱と柱の間に断熱材を入れる工法です。外断熱よりも工事費用が安価で、使用できる断熱材の選択肢が広いというメリットがあり、日本国内では外断熱よりも多くの住宅に取り入れられています。ただし、外断熱と比べると断熱性能は劣ります。また、湿気が溜まりやすいため、外断熱と反対に結露が発生しやすい点はデメリットです。

2025年4月からは建物の断熱機能が義務化される

2025年4月以降に着工する建物はすべて断熱等級4への適合が必要

前述の通り、断熱化された住宅では冷暖房の使用を抑えられる傾向にあるので、省エネの観点からも注目が高まってきています。
特に、2025年4月以降には「住宅の省エネ基準適合義務化」がスタートします。省エネ基準とは、「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)」で定められる建物の省エネ性能についての基準です。

この中には、建物の断熱性能についての規定も含まれており、2025年4月以降に着工する建物は用途や規模にかかわらず、すべて断熱等級4への適合が義務づけられます。

断熱等級とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく「住宅性能表示制度」の評価基準のひとつで、その名の通り断熱性能の水準を表します。

等級は全部で1から7までの7段階。数字が大きくなるほど高評価となります。2025年にすべての建物に義務づけられる等級4は、2022年3月までは断熱等級における最高位でしたが、その後になって5〜7等級が新設されました。現在では、全7等級中の丁度真ん中に位置していますが、ほんの数年前までは最高の等級であったこともあり、決して低い評価ではありません。

断熱リフォームで後付けで断熱性能を追加できる

既存の建物に断熱性能を追加することは可能

住宅の省エネ基準適合義務化など、環境に配慮する風潮の影響もあり、近年では断熱機能を備えた新築マンションが増えてきています。

一方、ある程度築年数が経過しているマンションでは、断熱材が使われていない場合が多くみられます。そのようなマンションであっても、既存の建物に断熱性能を追加する、断熱リフォームが可能です。

マンションの場合、建物全体に影響する外断熱工法の実施は成立要件が厳しいため、専有部分の内断熱工法でのリフォームが主流となっており、区分所有者が個人の手配で進めます。

施工内容としては、前述の柱の間に断熱材を設置するほか、既存の窓に内窓を新たに設置し、二重窓にする工事が代表的。ただし、内断熱工事では住戸内に新たに素材や設備を追加するので、施工する度に室内のスペースが狭くなる点には注意が必要です。

マンション総会で決議をとり、無事に可決されればマンション全体を外断熱工法でリフォームすることもできます。ただし、工事には高額な費用がかかるので、必ずしもほかの住民から賛同を受けられるとは限らない点に注意しましょう。

また、外断熱工法は建物の外側に断熱材を設置するので、マンションの敷地の空きスペースや隣接する建築物との間隔の都合によっては施工が不可能な場合もあります。

実際にマンション外断熱工事を実施したマンション管理組合の理事長にお話しを聞いた取材記事があるので、外断熱工事を希望する人は参考にしてください。

使える補助金がないか確認してみよう

今回はマンションの断熱化について解説しました。断熱化は、居住空間の快適さを向上させられる工事です。施工費用は少額ではありませんが、電気台の節約にもつながるため、長期的に考えて検討してください。

断熱リフォームを実施すれば活用できる補助金もあるので、興味がある人は利用可能な制度がないか調べてみましょう。

イラスト:平松 慶

あなたのマンションの課題を解決!おすすめサービス!

この記事を誰かに知らせる/自分に送る

この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

MAGAZINEおすすめ連載

ついにやって来た!大規模修繕
理事会役員超入門
となりの管理組合
マンション管理最前線
これで解決!マンション暮らしのトラブル
APARTMENT LIFE GUIDE BOOK
¥0

無料
ダウンロード

マンション居住者のお悩み解決バイブル!

『マンション暮らしのガイドブック』

最新マンショントレンドや理事会の知識など、
マンションで暮らす人の悩みや疑問を解決するガイドブック。
ここでしか手に入らない情報が盛りだくさん!

※画像はイメージです。実際のガイドブックとは異なる可能性があります。

無料配布中!

このサイトでは、アクセス状況の把握や広告配信などのためにクッキー(Cookie)を使用してしています。このバナーを閉じるか閲覧を継続した場合、クッキーの使用に同意したこととさせていただきます。なお、クッキーの設定や使用の詳細については「プライバシーポリシー」のページをご覧ください。