各住戸の玄関ドアは大規模修繕で交換可能? 迷いがちなポイントを解説
大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回はマンションの各住戸の玄関ドア交換について。玄関のドアは、専有部分と共用部分の境目に位置するので、管理組合と区分所有者、どちらが主体となって交換を進めるべきか迷いやすい部分です。記事を読んで正しい知識を身につけましょう。
玄関ドアは内側と外側で扱いが違う
たくさんの人が住むマンションは、建物内部の場所ごとに管理の主体が異なります。大まかに分けると、専有部分は各区分所有者、共用部分は管理組合が管理主体です。
では、一枚のドアの表と裏が専有部分にも共用部分にも面する、各住戸の玄関ドアはどのように扱われるのでしょうか?
特に管理規約による取り決めがないマンションでは、玄関のドアは一枚でその両方をかねる存在とみなされます。内側は専有部分である住戸、外側は共用部分の廊下部分として扱われます。
そのため、例えば区分所有者がドアの内側を飾り付ける行為は認められますが、共用部分であるドアの外側部分に管理組合の許可を得ずに勝手に装飾を施す行為は認められません。
では、ドアの修理や交換は誰が主体となって行うべきなのでしょうか?
例をあげると、日常的に使用していくなかで、鍵の故障や破損などの不具合が起きた場合は、区分所有者に修理の責任が生じます。
ただし、ドアに発生している不具合が経年による劣化が原因となっているのであれば、管理組合の主導で全住戸のドア交換を進めていくべきです。このパターンでは、他の共用部分と同じ扱いとなります。
玄関ドアの交換時期は約25年が目安といわれていますので、管理組合はその前後のタイミングでドアの劣化状況を調べて、必要に応じて交換の実施を検討するといいでしょう。
玄関ドアの交換で得られるメリットは?
「そもそも玄関ドアを交換したいと思ったことないけど、何かメリットがあるの?」そう思った人も少なくはないでしょう。
実は、ドアの交換にはいくつかのメリットが考えられます。
まず、築年数が経過した古いマンションでは、玄関ドアを新しいものに交換すると、断熱性と遮音性の向上が見込めます。
ドアの種類によっては、防犯性を高める効果も得られるでしょう。玄関の鍵をディンプルキーなどの防犯性能が高い設備に変更すると、ピッキングなどの犯罪行為の発生を抑えることにつながります。
さらに、近年ではスマートフォンアプリで鍵を施解錠できるタイプのドアなども出てきました。このような最新機能を搭載したドアに交換すると、ドアの鍵を持ち運ぶ必要がないため、利便性の向上も図れるでしょう。
また、大地震が起きた際は、揺れによりドア枠が歪み、ドアを開けられなくなり、住戸内に閉じ込められてしまう恐れがあります。ドアの交換時に合わせて、耐震効果のある改修工事をしておくと安心を得られるでしょう。
玄関ドアのメンテナンスは大規模修繕に合わせるのが理想的
先述のとおり、玄関ドアの交換目安は25年ですが、可能であれば毎回の大規模修繕のタイミングでメンテナンスもしていきたいところ。
その理由は、10年程度利用し続けると、玄関ドアに使用されている金属部品が錆びるなど、劣化がみられるケースがあるためです。
新築のマンションでは、多くの場合、1度目の大規模修繕は竣工から12年程度で実施されます。このタイミングで、ドア枠に錆びが発生していないかを点検し、必要に応じて塗装などをして修繕するのが理想的といえるでしょう。
2回目の大規模修繕は竣工から24年程度が実施時期となります。交換目安の25年に近い年数が経過しているので、劣化状況が深刻な場合は交換を検討しなければなりません。
ただし、メンテナンスを施せばまだまだ使えるという状態であれば、無理にドア交換をしなくてもよいでしょう。管理組合が主体となって住民の意見をヒアリングしたり、プロに依頼して点検や建物診断を実施するなどして、交換の要・不要を判断しましょう。
イラスト:平松 慶
この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!