資産価値はどんな時に低下する? 大規模修繕の意義を再確認!
大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回はマンションの資産価値が低下する要因について。マンションの資産価値がどのような理由で低下していくかを知り、注意するべきポイントを押さえしょう。
資産価値はどうして重要なの?
まずは、あらためて「資産価値」という言葉の意味をおさらいしましょう。
分譲マンションにおける資産価値とは、マンションが市場でいくらで売買できるかを具体的な金額で評価したものです。例えば、3000万円で売却できると評価を受けた場合、この3000万円という金額がマンションの資産価値となります。
資産価値はずっと一定のままではありません。市場での評価は時間の経過とともに変化していくので、当然それにともなってマンションの価格も変動していきます。
将来的に現在住んでいるマンションの売却を検討していても、資産価値が低下してしまうと期待していた金額で売れなくなってしまいます。そのため、マンションの価格は購入時だけでなく、購入後も意識し続けていくべきです。
周囲の物件と比較して資産価値が低いマンションは、値下げに至るマイナスの要因を抱えている物件と考えられます。そのようなマンションが新たな入居者を獲得するのは簡単ではないでしょう。
新規入居者が集まらずに空き住戸が増えると、1人当たりの区分所有者にかかる管理費や修繕積立金が高額になります。そのような状況が続けば、支払いができない区分所有者が出てきて、さらなる悪化の一途を辿る可能性も起こり得るでしょう。そのため、資産価値の低下は管理組合にとって大きな問題といえるのです。
建物や設備の劣化は資産価値低下に大きく関連する
一般的に、マンションの資産価値が最も高いのは新築時です。「新築」とよばれるのは竣工から1年以内の期間のみで、買い手が付かないまま1年を過ぎると「新古物件」となり、資産価値が低下します。
竣工から1年以内の期間であっても、一度でも誰かが所有した物件は「中古物件」となり、新古物件以上に市場価格が下がってしまいます。そのほか、竣工以降に購入者が現れないまま2年が経過するのも中古物件とみなされる要件です。
新古や中古への移行以外に、建物の「劣化」も資産価値低下の大きな要因です。分譲開始以降のマンションは、人に毎日利用され、さらに日光や雨風などの自然のサイクルに常に晒されるため、マンションの設備や建築資材が徐々に劣化していきます。
設備や資材の劣化は、マンションの住み心地の低下につながります。居住環境としての質が悪くなっていくと、市場での評価額が低下するため、資産価値が下がってしまうでしょう。
また、時代と共にマンションに求められる外観や内観、機能性のトレンドが変化していくのも資産価値低下の要因です。数十年もマンションで暮らしていると、新築時には最新だった設備であっても、次から次へと現れる新製品に埋もれてしまい、気付けば懐かしの存在と化してしまいます。
「外観も内観も綺麗な最新設備を完備した新築マンション」と「築30年でデザインが古く、外壁には傷が目立ち、設備も古いタイプのものだらけ」の2つを比較する場合、資産価値に大きな差が出るのは当然です。
このように考えれば、「劣化に対してどのように対処していくか」はマンション管理組合の全員にとっての共通問題だといえるでしょう。
大規模修繕は資産価値を維持するベストな手段
竣工から数十年経過した後に、その時の新築マンションと比較して見劣りするのは仕方ないとしても、中古マンションの購入を検討する人にとっての選択肢に入るレベルの資産価値は維持しておきたいもの。
そこで、行うべきなのが大規模修繕です。10数年に一度、マンションの劣化が進行した箇所に対して、補修や交換などのメンテナンスを実施し、新築時の状態まで回復させることを目的とする大規模修繕は、資産価値の低下を防ぐために管理組合ができる効果的な施策です。
築年数が経過しても、外観や内観といった美観を回復させ、古くなった設備の交換などを実施していけば、住みやすい住環境と資産価値の両方を維持できます。
竣工から100年が寿命といわれる鉄筋コンクリートマンションは、数十年が経過した中古マンションであっても買い手がつくことは珍しくありません。しかし、買い手に選ばれるマンションであり続けるためには、大規模修繕をはじめとした適切なメンテナンスの実施が不可欠です。
劣化への対処をしないまま数十年が経過した場合、外壁はひび割れだらけで、鉄部は塗装が剥がれて錆びだらけになるなど、安全に居住できるのかどうかも疑わしい状態になるでしょう。そのようなマンションは資産価値が大幅に低下し、入居者の獲得がどんどん困難になってしまいます。
資産価値を維持して、将来も入居者希望者が現れるマンションを目指すためにも、大規模修繕はしっかりと実施していきましょう。
今回は資産価値と大規模修繕の意義について解説しました。
劣化以外にも、周辺環境の変化や全国的なマンションに対する需要の上がり下がりが資産価値に影響を及ぼす大きな要因です。地域の開発が進んで交通の便が向上するといった変化が起きると、一躍人気エリア化して需要が高まり資産価値が高騰するパターンも考えられるでしょう。
そのような場合でも、同じエリアにある他のマンションとの競争力を高めるためには、大規模修繕の実施が欠かせません。
イラスト:平松 慶
この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!