大規模修繕に欠かせない建物診断。修繕費を抑えられるってホント?
修繕委員会とは? 仕事内容と注意すべきポイントを解説
十数年に一度のタイミングで実施される大規模修繕は、マンション管理組合にとっての一大行事です。準備から完了までに数年かかることもあり、対応しなければならない内容は多岐にわたります。そんな大規模修繕を進めていくための専門組織として立ち上げられるのが、修繕委員会。この記事では修繕委員会の基礎情報や活動内容について説明していきます。
修繕委員会は大規模修繕のための専門チーム
修繕委員会とは、大規模修繕の実施に必要となるさまざまな準備や対応を進めるために組織される専門チームです。
チームメンバーの人数について特別な定めはありませんが、一般的には5〜10名程度が望ましいとされています。通常、メンバーは実際にマンションで暮らしている人で構成されますが、マンション居住者以外の人物も委員会に参加することは可能です。
修繕委員会はマンション理事会の下部組織という位置づけです。修繕委員会は、理事会に代わって大規模修繕の対応を進め、その活動内容について報告を行います。
修繕委員会のメリット
修繕委員会の設置は区分所有法などによって義務づけられてはおらず、立ち上げが必須となる組織ではありません。では、どうして修繕委員会を立ち上げるとよいのでしょうか。主なメリットを解説します。
理事会業務との分担ができる
修繕委員会を設置しない場合は、理事会が主導となって大規模修繕を進めていきます。
しかし、普段からマンション管理における多岐にわたる業務を担当している理事会で、大規模修繕まで対応していくとなると、理事達にかかる負担が大きくなり過ぎてしまうかもしれません。理事会が本来対応していくべき活動を滞りなく進めるためにも、修繕委員会を設置し、理事会と修繕委員会で業務を分担していくことは非常に有効です。
長期間にわたって計画を管理できる
大規模修繕は長期間に及ぶため、準備開始から工事の完了までに長ければ3〜4年を要する場合もあるもの。多くのマンションでは理事会の任期を1〜2年に定めていることが一般的であるため、理事会主導で大規模修繕を進めると、途中で理事が交代してしまう可能性もあります。担当者が途中で交代すると、引き継ぎが煩雑になってしまったり、当初の計画から一貫性が損なわれてしまうというデメリットが考えられます。
修繕委員会のメンバーには任期を定める必要がないので、担当者が交代することなく、綿密で一貫性のある長期修繕計画を進めていくことができるという点は大きなメリットであると言えるでしょう。
修繕委員会の仕事内容
続いて、実際に修繕委員会がどのような活動を行っているのかを紹介していきます。
施工業者・コンサルタント会社の選択
修繕委員会の重要な活動のひとつが大規模修繕に関わる業者の選定です。
実際の工事を受け持つ施工業者の選定は、修繕費用の金額や、仕上がりのクオリティを大きく左右する重要なポイントとなるので、慎重に行いましょう。
修繕委員会に修繕についての専門知識を持つ人がいない場合には、どのように対応していけば良いのかが分からなくなってしまいがちです。専門家からのサポートが必要だと感じた場合は、大規模修繕コンサルタント会社に依頼することも検討しましょう。コンサルタント会社の選定も修繕委員会の主導で進めます。
修繕計画の立案と見直し
修繕計画を立案することも修繕委員会の重要な役割です。 施工業者や管理会社と連絡を取りながら、修繕が必要となる箇所を洗い出し、工事を実施する期間や予算額をまとめたうえで理事会に提案を行います。理事会の承認を得られた後も、修繕計画を管理組合全体で正式に承認するためには、総会で決議を行うことが必要です。
修繕にどのぐらいの予算が必要となるかは、マンションの規模や構造によって異なるもの。そのため、同じマンションでの過去の大規模修繕における実績は貴重な参考元となります。2 回目以降の大規模修繕では、以前の修繕でどのぐらいの費用が掛かったかを参考にして試算すると、実際に必要な金額がわかりやすくなるでしょう。
また、長期修繕計画の見直しも定期的に行いたいもの。国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、5年ごとに長期修繕計画を見直すよう推奨されています。建築技術の発達や法令の変更によって、修繕における最良の選択がその時々で変わることが考えられるため、計画の見直しも忘れずに行いましょう。
建物診断の実施
実際に修繕を行う箇所を決める前には、建物診断を実施しておきたいもの。建物診断は、建物の劣化状況などを確認するために行う調査のことです。
診断によって、補修や交換が必要となる箇所や、修繕対象となる部分の優先度合いを知ることができ、効率的な修繕が可能となります。 修繕委員会として活動していく際には、建物診断の重要性をしっかり理解しておきましょう。
住民への対応
大規模修繕は同じマンションに暮らす全住民に影響を及ぼすため、住民から意見を取り入れて進めることも重要となります。住民の意見を修繕に反映させるためには住民アンケートが効果的です。アンケートでは、実際に暮らしていくなかで、共用部分における不具合や資材の劣化などを感じている箇所がないか、などを確認しましょう。
その他にも、住民を対象とした大規模修繕の進捗報告や、修繕内容の周知といった活動も修繕委員会が担当します。住民に修繕活動へ関心を高く持ってもらいたいのであれば、大規模修繕についての学習会を修繕委員会主導で開催してみるのも良いでしょう。
修繕委員会の立ち上げ方
国土交通省が作成したマンション標準管理規約第55条には「理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。」と記載されており、理事会の決議によって修繕委員会の設置が行えると解釈できます。
ただし、過去には総会での承認を得ずに理事会だけで設置を決めたことで、管理組合から反感を買って、トラブルに発展した事例が存在します。修繕委員会を立ち上げる際には、事前に総会に決議を取って承認を得ておくほうがベターだといえるでしょう。
立ち上げの詳しい手順は、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
また、トラブルを未然に防ぎ、一貫性のある運営を行うためにも、細則を設けておくとよいでしょう。修繕委員会の目的や人数、役員構成とその権限などをルールとして明文化しておきます。
細則で定めておくべきポイントは、下記の記事で詳しく解説しています。
修繕委員会運営で注意するポイント
修繕委員会が活動していくために注意しておきたいのが、修繕委員会は理事会の諮問機関である点です。 修繕委員会は大規模修繕に関わる実務を行いますが、業者の選定などに対する最終的な決定権は持ちません。大規模修繕における決め事の最終的な判断は理事会が下します。修繕委員会は、あくまで理事会の下部組織として、理事会が意思決定を行うための判断材料をまとめて報告するためのチームです。修繕委員会として活動をする際は、理事会をサポートする立場であるという点はしっかりと覚えておきましょう。
また、工事期間中に起こる騒音や設備の使用制限に対して、住民からクレームがあがる可能性もあります。多くの場合、事前に修繕の内容を周知して了承を得ておけば、クレームの発生は防げます。同じマンションで暮らす住民間の関係性に亀裂を生じさせないためにも、積極的な情報共有が重要です。
修繕委員会のメンバーが集まらないときはどうする?
前述の通り、修繕委員会のメンバーは5-10名程度が望ましいとされていますが、委員の成り手の募集で苦労するマンションもあるそうです。
修繕委員会のメンバーを募集したけれども、希望者がほとんど現れない場合には、設立を断念して理事会主導で大規模修繕を進めて行くのが一般的です。このような場合に、理事の負担が増えすぎてしまうようであれば、大規模修繕のコンサルタント会社に依頼する方法も検討しましょう。
修繕委員会が大規模修繕を成功に導く
長期修繕計画の作成や見直し、施工業者の選択など、修繕に関する業務を行う修繕委員会。理事会の負担を軽減するとともに、一貫性のある長期修繕計画を実行していくためには、修繕委員会の活躍が重要となります。