連載:ついにやって来た!大規模修繕

大規模修繕に欠かせない建物診断。修繕費を抑えられるってホント?

2021.07.16
大規模修繕に欠かせない建物診断。修繕費を抑えられるってホント?

大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は建物診断について。建物診断のメリットや修繕費削減になる理由について解説していきます!

そもそも建物診断とは?

建物診断とは、建物の現在の状況を調査すること。建築診断協会によると、「経年劣化診断」「耐震診断」「収益性診断」という主に3つの項目に沿って調査します。

具体的に診断内容を見ていきましょう。

【項目1】建物の傷み具合を調査する「経年劣化診断」

資材などの劣化度合いを診断

経年劣化診断とは、建物の傷み具合や構造上の問題を確認する調査です。目視や触診、ハンマーで壁面や床面を叩いた際の音で、劣化状況を判断します。

チェックする項目をまとめると、次の通りです。

・外壁モルタルやタイル等の浮き状態
・コンクリートの劣化の程度
・鉄筋の強度
・防水の寿命
・空調換気、給排水、電気等に関わる設備の損耗具合

特に外壁タイルは昨今剥落事故が問題となっているため注意が必要です。高い位置に張られたタイルが剥がれ、地上に落ちて人に当たれば大怪我につながるほど危険です。実際に剥落したタイルが通行人を負傷させた事故の事例もあります。2008年には外壁タイル剥落事故の多発に伴い国土交通省が「 定期報告制度 」を改訂。外壁タイルの検査が義務化されました。定期的な調査と報告を怠った場合、マンションのオーナーは罰則の対象となることが定められています。

【項目2】地震に耐えられるかどうかを知る「耐震診断」

耐震診断とは、どのくらいの地震に耐えられるかを把握する調査。経年劣化の程度や、これまでの被災によるひび割れ、沈下の度合いなどをもとに判断します。日本は地震が多い国ですから、耐震診断は不可欠ですね。

ちなみに、現在は1981年に施行された「新耐震基準」を満たす建物が主流です。新耐震基準が施行される以前に建築された建物は、耐震構造が十分ではない可能性もあるため、こまめに診断をするのが良いでしょう。

【項目3】資産価値がどの程度かを調査する「収益性診断」

近隣の状況を参考にして価値を診断

収益性診断とは、近隣マンションの入居率や周辺地域の状況から、建物の資産価値を判断する調査です。ほかの建物と比較することで、「どういった差別化ができるのか」といったことも報告してくれます。

建物診断はなぜ必要? 4つのメリット

【メリット1】修繕費が抑えられる

施工業者によって、修繕費が大きく異なるといったケースは珍しくありません。なぜなら、すぐに行う必要のない工事が含まれていることもあるからです。

しかし、建物診断をしておけば修繕の優先度が分かり、今必要な工事を見極めることができます。その結果、正確な修繕費用の算出ができるため、結果として修繕費が抑えられると言われています。

【メリット2】修繕部位の優先度が分かる

建物の劣化は、目視でわかる損傷ばかりではありません。例えば配管など、普段あまり目にしない部分の劣化具合はなかなか気づかないもの。

そんなとき建物診断を行えば、マンション全体の劣化状況を把握することができます。前述した通り、全体を調査することで修繕の優先度もわかる。その結果、「劣化が進行し過ぎていた」という事態も避けられるはずです。

【メリット3】長期修繕計画の精度が上がる

修繕費用は一般的に、長期修繕計画に沿って積み立てていきます。長期修繕計画とは、建物の部位や設備ごとに修繕の内容や時期、費用を記載した計画書のこと。

つまり建物診断によって「建物のどこを修繕するか」が把握できれば、長期修繕計画の精度も上がる。結果的に、適正な金額の修繕積立金を積み立てていくことにつながります。

【メリット4】空室対策、近隣マンションとの差別化が図れる

「空室が埋まらない」「近隣の新築マンションに人気が集まっている」といった場合もあるかと思います。そんなとき建物診断によって周辺の建物と資産価値を比較すれば、どういった対策が有効か、把握できるかもしれません。

例えば、高齢者が多い地域で、まだ周辺の建物ではバリアフリーが進んでいない場合、手すりやスロープの設置が差別化に繋がることもあるでしょう。

建物診断を行う理想的なタイミングとは?

建物診断はいつするのが効果的?

【タイミング1】長期修繕計画の作成時

メリットでもお伝えした通り、より正確な長期修繕計画を立てるために、建物診断が有効。つまり、長期修繕計画を見直すタイミングで建物診断も実施すれば良いわけですね。

国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」によると、5年程度で長期修繕計画を見直すよう推奨されています。これは、建築技術や法令が5〜10年ほどで変わることが多いため。5〜10年に一度、計画書の見直しとあわせて建物診断を行いましょう。

【タイミング2】大規模修繕の実施前

修繕工事を施工会社に依頼する際、正確な見積もりを出してもらうために、修繕箇所を記載した設計書を提出するのが一般的です。

設計書を作成するためにも、どの箇所の修繕を行うか把握することが大切。つまり、このとき建物診断が必要となるのです。

建物診断は誰に依頼すれば良いの?

【依頼先1】コンサルティング会社

設計書の作成や工事が適正に行われているかどうかを監理する役割を担う、コンサルティング会社。建物診断の依頼先の一つです。「住宅診断(ホームインスペクション)」という名前で、サービスを提供している会社もあります。

なお、コンサルティング会社の役割は以前、この連載でも紹介しているので、気になる方は確認してみてください。

【依頼先2】管理会社

コンサルティング業務も請け負っている管理会社でも、建物診断を実施しているところがあります。「建物診断は実施していない」という場合でも、建物診断を行っている会社を紹介してもらえる可能性もあります。ただその際、紹介料として中間マージンが発生することもあることは、お忘れなく。建物診断の費用を抑えたいという場合は、自分たちでコンサルティングを探して依頼するほうが良いかもしれません。

【依頼先3】施工会社

建物診断は直接、施工会社に依頼することも可能です。修繕が必要となった場合、実際に作業をするは施工会社ですので、具体的な作業を見据えた診断が行えます。管理組合は実際に修繕作業が発生した時以外には施工会社と関わる機会があまりないもの。建物診断を通じて事前に施工会社と良い関係を築いておけば、いざ大規模修繕が始まったときも安心して作業を任せられるでしょう。

以上、今回は建物診断について解説していきました。

建物診断は、現在の建物の状況が分かるだけでなく、長期修繕計画を立てる際にも役立ちます。また正確な修繕箇所が把握できれば、修繕費の削減に繋がる可能性も。長期修繕計画を見直すタイミングで、あわせて建物診断も検討しましょう。

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この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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