連載:ついにやって来た!大規模修繕

資産価値を保つマンションの秘訣とは?

2020.11.30
資産価値を保つマンションの秘訣とは?

大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は20年、30年と、マンションの資産価値を保つ秘訣について解説していきます!

資産価値を保つ条件は「立地」「建物」「管理」

一般的に日本の住宅は築年数が経過するにつれ、建物自体の資産価値が下がる傾向にあると言われています。さらに通常、新築マンションの価格には販売のための広告宣伝費や営業費用が加算されているため、購入後には資産価値が1〜2割程度下がることも。そして建物設備が経年劣化し、その時代の住宅のスタンダードに遅れを取ってしまうと、価格が下がってしまうのも当然の成り行きだといえます。

とはいえ、なかには築20年、30年を過ぎてもマンションの資産価値を保ち続けているマンションもあります。

では、資産価値を保つ秘訣とは何か?

それは、「立地」「建物」「管理」という3つの条件が鍵を握ります。

このなかで立地と建物は、すでにマンションを購入している人にとってはどうしようもできない部分もあるでしょう。

立地については新たに鉄道路線が敷設されて新駅ができたり、地域の再開発によって大規模な商業施設ができたりなどで周辺の住宅価格が上がる可能性はあります。また不動産経済研究所と東日本不動産流通機構の調査によると、首都圏のマンションの平均価格は新築・中古ともに上昇傾向にあるため、この流れのままでいけば暴落は考えにくいかもしれません。さらに建物も新耐震基準で建設されたマンションであれば、構造としては問題ないといえます。

とはいえ、前述したように立地と建物はすでにマンションを購入した人が何かコントロールできるわけではありません。

となると、残るは「管理」です。「マンションは管理を買え」と言われますが、つまりは定期的な大規模修繕なども含めた適切な管理こそ、資産価値を保つことができるかどうかに関わってくる部分といえます。

適切な「管理」は管理組合が機能していることが大前提

マンションは外壁や手すり、給排水管やエレベーターなどの定期的な修繕やメンテナンスによって快適な住環境が保たれます。結果として、資産価値の維持にもつながるでしょう。

適切な修繕やメンテナンスが実施されるかどうかは、管理組合が機能していることが大前提。マンション管理の主体は「あくまでも管理組合である」という認識を持っていることが大切です。とはいえ「マンションの管理は管理会社にすべて任せておけば良い」と思っている所有者も少なくないかもしれません。なぜなら、ほとんどの管理組合では管理業務を管理会社に委託しているためです。

通常、管理会社からは管理員や営業担当などが配属され、日常の清掃をはじめとした管理業務や理事会の進行などをサポートします。ただ、管理会社がマンションという財産を持っているわけではありません。「管理会社」は、建物を管理するバックアップを行うだけ。マンションの持ち主は、あくまでも管理組合員である住民自身なのです。

所有者は毎年開催される総会に出席し、管理状況を把握するのはもちろん、理事会は管理会社と協力しながらマンションの管理を主導で行っていく姿勢が求められるでしょう。

管理組合と管理会社の良好な関係構築も鍵

管理組合と管理会社の良好な関係構築も鍵

理事の出番が回ってきて始めて自分の住むマンションの現状を理解し、「なんとかしないといけない」と、理事会の活動に前向きに取り組むようになる方もいるかもしれません。ただ、いくらやる気はあっても必ずしもマンションの管理に詳しいというわけではないでしょう。やはり、管理会社などの専門業者との協力は不可欠といえます。

そのため「管理会社の対応が悪い」と嘆く前に、まずは管理会社に対して不満点や要望を伝えたり、日常の管理をチェックしたりといった動きを理事会主導で実施することが望ましいでしょう。管理会社も理事会がマンションの管理に前向きになると、より住み心地を向上させるための提案なども積極的に行うようになる可能性があります。

業務のすべてを任せっきりになるのではなく、管理会社と理事会が協力し合いながらマンションの管理に取り組むことで、お互いに成長し合うことができるのではないでしょうか。

地域社会や行政との連携で管理はよりスムーズに

管理組合のなかには、地元の祭りに参加したり、地域の防災活動に協力したりといった活動を行っているケースもあるでしょう。また管理組合のほかに単独の自治会を形成し、敷地内のスペースを解放することで、マンションの住民だけでなく地域住民も参加できる夏祭りなどを開催するケースもあります。

さらに、地域の防災・防犯パトロールや消防署の職員を招いたイベントなどを開催する例もあるそう。イベントを地域住民などの外部へも開放し、マンションのコミュニティが活性化すれば、管理に不可欠な住民同士の合意形成もスムーズにいくのではないでしょうか。

資産価値の維持が若い世代を引き込む

築年数の古いマンションであっても、定期的な修繕などで手入れが行き届いていれば、築年数を感じさせることもないかもしれません。こうしたマンションでは、大人になって外に出た子世代が戻ってきて、親子二世代で同じマンションに住むといったケースもあるといいます。住民の高齢化に悩んでいるマンションであっても、やはり時代に取り残されないような適切な管理が、世代交代を促すきっかけになるかもしれませんね。

では、良好な管理を実践していくために何をすれば良いのか。最後に、管理状況のチェックリストを作成してみました。リストをもとに、自分たちの管理組合が実践できているかどうか確認してみましょう。

1.総会が毎年開催されている
2.総会で選任された理事や監事が、毎月もしくは隔月で理事会を開催している
3.2年任期の半数交代制などを導入し、理事会活動の継続性が保たれている
4.民泊など新たな問題に対応するために管理規約の見直しを定期的に行っている
5.修繕委員会や防災委員会など、理事会を支えるための委員会を設置している
6.管理費や修繕積立金の滞納を放置していない
7.長期修繕計画にもとづき値上げを実施するなど、適切な修繕積立金が積み立てられている
8.専門家による耐震診断を受けるなど、耐震性について安全性が確認されている
9.管理員や管理会社の担当者と良好な関係を保てている

補足となりますが、理事会の役員はこれまで経験したメンバーがごそっと入れ替わると、未経験者ばかりとなり運営が非効率です。そのため半数交代制で、経験者も残る仕組みの導入を検討しましょう。あわせて理事会運営に関するマニュアルも作成し、任期終了となり理事会の役員が入れ替わった後も、業務を受け継ぐ土台を構築しておくことも大切です。管理組合のなかには、オブザーバー制度を設けて現役員とは別で、過去の役員経験者が継続して管理を見守ることができる仕組みを導入している例もあります。

管理を機能させるためにも、まずは管理組合の代表から選任される理事会を機能させることが、最初のステップといえるでしょう。

次回は、計画的な大規模修繕を実施するために必要となる「長期修繕計画の立て方」について紹介していきます!

イラスト:平松 慶

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この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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