連載:ついにやって来た!大規模修繕

大規模修繕と一緒にバリアフリー化工事を検討しよう!

2022.08.10
大規模修繕と一緒にバリアフリー化工事を検討しよう!

大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回はバリアフリー化工事を進めるメリットについて解説していきます!

数十年先も入居者を保つにはバリューアップ工事が重要

新しい設備の追加工事がマンションの付加価値となる

大規模修繕は、経年によって劣化したマンション共用部分の設備を原状回復させて、暮らしやすい住環境や資産価値を保つことを目的としています。

しかし、メンテナンスが行き届いていれば、100年以上建物を維持することが可能といわれる現代のマンション。築年数が長くなれば、時代の移り変わりによってマンションに求められる性能も変化していきます。

新築当時の水準まで原状回復を行っても、設備が古いままのマンションでは新規入居者の獲得に苦労するかもしれません。それだけでなく、住民の退去が増加して、空室リスクが高まって行く可能性もあります。

数十年先も空き家が出ない環境を保つためには、大規模修繕以外にもマンションのバリューアップ工事が重要となっていくでしょう。

高齢化社会に向けてバリアフリー化を実施しよう

バリアフリー化はこれからの日本のマンションの大きなテーマ

現代のマンション事情を考慮すると、未来に向けて特に注目したいテーマにバリアフリー化が挙げられます。高齢化がますます進行していくと予測される日本において、住環境のバリアフリー化を行うことは大きな課題です。

バリアフリーのマンションは高齢者や障害者も入居しやすいため、それだけ入居希望者の間口を広く持てます。また、管理組合が将来を見据えた取り組みを行っているという姿勢が伝わるため、新規入居者へ好感を与えられるかもしれません。

現在でもバリアフリー対応のマンションは増えてきています。今後ますます普及が進めば、未対応であるとそれだけで見劣りするようになるかもしれません。

バリアフリー化工事の例

バリアフリー化工事を進める場合、どの部分にどのような工事を実施すると効果的でしょうか。代表的な内容を、対象箇所ごとに見ていきましょう。

1. エントランス

エントランス部分に階段や段差を設置しているマンションは多く見られます。車椅子が通れなかったり、高齢者や子供などが転んで怪我をする可能性が懸念されるため、バリアフリーの観点で考えると対処を行いたい箇所です。

工事を行うなら、段差の解消や、階段にスロープを併設するなど、誰にでも利用しやすい安全な状態を目指しましょう。

また、エントランスのドアが開き戸となっているのであれば、改良の余地があります。普段の生活では気付きづらいかもしれませんが、開き戸は車椅子を使用する人からするとドアの開閉が大変で、出入りがとっても不便なもの。この不便さを解消するためには、自動ドアへの改修が効果的です。

エントランスを自動ドアに変更すれば、ベビーカーを押している時や、多くの荷物を抱えている時にも出入りが楽になるので、多くの人にとって利用しやすい環境になるといえるでしょう。

現在の住民に車椅子使用者がいなくても、突然の怪我や病気で必要となる場合もあるかもしれません。また、マンションに親族や知人を招く機会もあるでしょう。さまざまなシチュエーションにおける利便性を考慮していくことが、暮らしやすさのひとつの指標となります。

2. 階段・廊下

廊下で車椅子とすれ違うのに困らないスペースは欲しい

2000年の建築基準法の改正によって、以降に建設される建物の階段には手すりの設置が義務づけられました。それ以前に建てられた建物には設置義務はありませんが、今後は階段に手すりがついていることが当たり前となっていくと考えられ、設置されていない建物は、それだけでマイナスイメージがついてしまうかもしれません。

また、高齢者に配慮するならば、廊下にも手すりを設置すると移動がしやすくなります。

設置する際に注意したいのは、手すりの分だけ通路スペースが狭くなってしまう点です。多少狭くなるのは仕方ないとしても、車椅子とのすれ違いが可能なスペースは確保しておきたいもの。

JIS規格が定める車椅子の幅は、手動車椅子は630mm以下、電動車椅子は700mm以下です。

また、通路で歩行者と車椅子がすれ違う際には、歩行者が横向きの場合で120cm以上、前を向いた場合で150cm以上の通路幅が必要とされています。この通路幅の目安に、廊下の左右に手すりを設置した状態を想定してスペースの計算を行いましょう。

3. エレベーター

お住まいのマンションにエレベーターがないのであれば、設置を検討したいもの。今はまだ若く、階段での移動に支障を感じていない人であっても、年齢を重ねていくと階段の昇り降りが大変になっていくでしょう。

特に、高齢者、車椅子利用者、小さな子供がいる親は、例え低層階であっても、階段での移動は骨が折れるので、現在のマンションに長く住み続ける予定であれば重大な問題となり得ます。

エレベーター内部には、手すりや車椅子用操作ボタンを設置しておくのがオススメです。特に車椅子用ボタンには、小さな子供でも操作ができるというメリットもあります。

重要性の高いエレベーターの新設ですが、マンションの敷地に余裕がなければ設置が不可能な場合もあるという点は覚えておきましょう。

地方公共団体によっては補助制度を利用できる場合もある

ここまでバリアフリー化について説明してきましたが、多額の費用が掛かる点は大きな障害です。

建物の形状によって異なりますが、手すりの設置や段差の解消といった工事費用の目安は200〜400万円。エレベーターを新設する場合には数百〜千万円以上の費用が掛かる場合もあります。

バリアフリー化を行いたいけれども、費用がネックとなって、なかなか実現に至らないという管理組合も多くあるでしょう。

そこで検討したいのが、地方公共団体の補助金制度です。補助される内容は自治体が実施している制度によって異なるため一概にはいえませんが、利用すれば管理組合の負担を多少は減らせるでしょう。

例として、以下のような制度が実施されています。

また、お住まいの自治体で補助制度を実施していない場合や、制度があっても管理組合が要件に不適格な可能性も考えられます。補助制度の利用を希望する場合は、地方公共団体のホームページを確認したり、直接問い合わせたりして、制度の利用が可能かを確認しておきましょう。

以上、今回はバリアフリー化工事について解説しました。

バリアフリー化工事は管理組合の都合に合わせて任意のタイミングで実施できますが、大規模修繕と同時に行えば1度に工事を終わらせられるので、住民への負担を減らせます。また、マンションの大規模修繕工事を実施するタイミングに合わせて改修工事を行えば、別々に工事をするよりも工費を抑えることが可能です。

マンションの将来を考えた際に、資産価値の低下や空き家リスクに不安に感じたら、管理組合で情報共有の上、バリアフリー化を検討してみましょう。

イラスト:平松 慶

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この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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