高齢化マンションほど要注意!マンションスラム化の恐怖
長くマンションに住むためには、管理を適切に行っていくことがとっても重要。管理をおろそかにしてしまい住環境の質が低下すれば、住民の不満が溜まり、マンションから流出が進んでいってしまうかもしれません。
住民が減少したマンションでは、管理組合が機能不全に陥りやすく、修繕積立金や管理費を十分に徴収できなくなることが考えられます。そうなってしまうと、行き着く先に待っているのはマンションのスラム化です。
今回の記事では、スラム化しやすいマンションの特徴や原因を紹介しますので、参考にしてください。
「マンションのスラム化」とは?
「スラム」とは、都市部において貧しい人々が集まって居住する、荒廃が進んだエリアを指す言葉です。同じ都市の他の地区よりも、衛生状態が悪い傾向にあり、犯罪の発生率も高く、劣悪な環境といえます。スラムでは世代から世代へと貧困の連鎖が続いていくため、なかなか問題の解消に至らず、世界中の都市における根深い問題となっています。
それでは「マンションのスラム化」とは、どのような状態を意味するのでしょうか?
本来必要な管理や修繕が行われずに設備やコミュニティの質が低下し続けることで、マンションが廃れてしまった状態がマンションのスラム化です。
スラム化したマンションでは、悪臭や水漏れなど、設備の品質劣化を原因とするトラブルや、管理者がいないことで共用部分に不審者が侵入するといった治安の低下が発生します。スラム化が進行して建物がボロボロになっていくと、酷い場合には階段やバルコニーの崩落が起きてしまうかもしれません。
まだ件数は少ないですが、実際に日本でもマンションのスラム化が発生した事例も存在します。これからの日本では、少子化による人口減少で起きる空き家問題が加速していき、築40年を超える高齢マンションの割合が増えていくことで、マンションのスラム化が増加していくことが懸念されています。
マンションの財政難がスラム化の引き金になる
マンションがスラム化してしまうのは、必要となる管理費や修繕積立金の徴収が適切に行えないことが大きな要因です。
スラム化問題は資金があれば対処が可能ですが、スラム化が進むようなマンションでは管理組合が機能しておらず、修繕積立金や管理費の徴収が行えていないケースが多くあります。そのため、一般のマンションで行われている管理会社への管理業務委託や、大規模修繕が行えず、マンションの荒廃が進んでしまうのです。マンションの維持管理には多額の資金が必要となるので、費用を集めたり管理したりするシステムがなければ、スラム化から立ち直るのは至難の業でしょう。
管理組合としての活動を進めていく中で、修繕積立金や管理費を滞納する人が出てくる場合があります。滞納があった場合でも、後日滞納分をしっかりと回収できれば問題ないといえますが、回収が行えないまま放置してしまうと危険です。
滞納者がいると、毎月決められた金額を正しく収めている他の住民に不平等感が生まれ、新たに滞納する人が増えることが懸念されます。そのような状況が深刻化していくと、管理組合が財政難に陥り、マンションに不可欠な日々の管理や大規模修繕が実施できなくなってしまうかもしれません。
管理が適切に行われなければ、エントランス部分や廊下など共用部分にゴミが散乱したり、駐輪場に所有者不明の自転車が放置されたりするなど、マンションの住み心地が低下していきます。大規模修繕を行わないままでいると、建物内外の見栄えや設備の質、住環境としての安全性が徐々に劣化していく一方です。
そうなると、マンションの数よりも買い手が少ない傾向にある現代では、立地や築年数などの条件が近いマンションと比較して、新規入居者の獲得が困難になるでしょう。不満を感じる住民はどんどん転居して行き、新規入居者もいないため空き家が増加します。しかし、転居する金銭的余裕がない住民は、それでも住み続けるしか選択の余地がありません。
残された住民は経済的事情を抱えた人が多いことから、空き家が増えて区分所有者一人当たりの負担額が高くなった修繕積立金を支払うことは期待できないでしょう。お金がなければ、建て替えはもちろん、マンションを解体することもできません。そのため、マンションの荒廃を止める術がないまま、スラム化したマンションで生活を続けていくことを余儀なくされてしまいます。
高齢化マンションはスラム化が進みやすい
「高齢化」はスラム化が進みやすいマンションの特徴のひとつです。ここでいう高齢化とは、建物の老朽化と、区分所有者の老齢化の2つを意味します。
建物の高齢化は、築年数が長くなるにつれて資材や設備の劣化が進行していくため、マンションの資産価値が低下していく点が問題です。資産価値が下がることで、新規入居者の獲得が困難になってしまうでしょう。
一方の居住者の高年齢化は、高齢になった区分所有者が老人ホームへ入るためにマンションから転出したり、亡くなったりする可能性が高い点が懸念されます。そのため、高齢化が進んだマンションでは、そうでないマンションよりも空き家が発生しやすい傾向にあります。
また、修繕積立金の値上げが必要になった際に、年金暮らしの高齢者世帯では対応が難しく、積立金の滞納が発生するかもしれません。
建物と区分所有者、2つの高齢化が進むと、新規入居者を獲得できないまま空き家が増加していくという負の連鎖を生む可能性があるため注意が必要です。
スラム化は築年数の長いマンションほど発生しやすいといわれる一方で、それほど築年数が経過していないマンションであっても、管理を行わなければスラム化する可能性が高まっていきます。築年数に関わらず、しっかりと管理を行っていくことが重要といえるでしょう。
空き家率が30%を超えるマンションは要注意
マンションのスラム化は、現在はまだ聞き慣れない言葉かもしれませんが、前述の通り、今後日本で増加が懸念されている問題です。
1つの目安として、総住戸数に対する空き家率が30%を超えると、スラム化のきっかけとなる治安の低下が進みやすいとされていますので、覚えておきましょう。
国土交通省による「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」では、築10年に満たないマンションでは空き家率が平均で1.5%であるところ、築40年を超えるマンションでの平均空き家率は5.9%と、築年数によって大きく上昇する傾向にあるデータが出ています。
どのようなマンションであっても日々の管理をしっかりと行うことは大切ですが、築年数が長いマンションにお住まいの区分所有者の方々は、より一層注意して管理組合の活動に取り組んでいきましょう。
以上、今回はマンションのスラム化について解説しました。
スラム化を未然に防ぐためには、普段から区分所有者のひとりひとりがマンションの維持管理に注意を向けて、管理組合の活動に積極的に関わっていくことが必要となります。
日々の管理や大規模修繕を適正に行うためにも、管理費や修繕積立金の不足が起こらないように余裕ある計画を立てていきましょう。
イラスト:平松 慶
この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!