大規模修繕期間中は防犯意識を高く持とう! セキュリティ対策をご紹介
大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は大規模修繕工事の際に気をつけるべき防犯トラブルについて、ポイントと対策を解説していきます!
足場を組むことで高層階へも侵入しやすくなる
マンションの大規模修繕工事期間中は、部外者による不法侵入や空き巣などの犯罪被害が発生するリスクが高まるのをご存じでしょうか? 何故、犯罪被害発生のリスクが高まるのかというと、大規模修繕期間中のマンションの環境が侵入犯罪を行う者にとって好都合であるためです。
その理由の1つが、マンションを取り囲むように周囲に設置される足場です。大規模修繕の工事には、足場の設置は必要不可欠。しかし、足場が組まれると、部外者のベランダからの侵入が容易になるというデメリットも存在します。
加えて、工具の落下や騒音を防止するために足場の周囲を覆う、保護シートや防音シートも侵入者側からすれば好都合です。シートがあることで、足場の内側が見えづらくなるため、敷地内に忍び込む姿を外部から目撃されにくくなります。
また、大規模修繕工事の期間中は、施工業者の職人など、普段よりも多くの人がマンションへ出入りするもの。そのため、見覚えがない人物がマンションの敷地内にいても、住民としてはあまり違和感を感じられないでしょう。不審に思われづらくなるという点も、侵入者にとっての大きなメリットです。
このように、大規模修繕工事中のマンションは侵入者にとって狙いやすいという条件が揃っているといえます。
セキュリティアイテムを利用して防犯対策に努めよう
セキュリティ上のリスクが高まる大規模修繕期間中のマンション。被害に遭わないようにするためには、防犯対策が重要です。
防犯対策にはどのような方法があるのか、代表的な内容を見てみましょう。
【防犯対策1】サッシ補助ロック
空き巣などの侵入犯罪では、侵入経路として最も多いのは窓とされています。そんな窓の防犯グッズとして重宝されているのが、サッシの補助ロックです。
補助ロックがされていると、窓に付属している錠を開けても窓を開けることができず、侵入するためには補助ロックの解除を行わなければなりません。
警察の調べによる犯罪者の心理として、空き巣犯の約7割が侵入に5分以上かかる場合は犯行を諦め、10分以上かかる場合にはほとんどの者が侵入を断念するというデータがあります。そのため、通常よりも手強い補助ロック付きの窓は、侵入されるリスクを下げる効果が期待できるでしょう。
補助ロックは、商品によっては数百円から売られており、防犯グッズのなかでは比較的安価な部類です。施工業者によっては、大規模修繕のサービスとして、工事期間中に補助ロックを無償で貸し出している企業もあります。
【防犯対策2】透過性シート
足場を覆う防音シートや保護シートを透過性のものにすれば、侵入者がいる場合に外部から目撃しやすくなるので、犯行の防止につながります。
また、防犯面以外でも、マンションの内側から外側を見た際に、閉塞感が軽減されるという点は透過性シートを使用するメリットです。
ただし、一般的には黒や灰色といった濃い色味のシートが主流で、透過性シートを用意できない施工業者も多くあります。どの施工業者でも対応できるわけではないという点は、前もって理解しておきましょう。
【防犯対策3】センサーライト
夜間の被害防止にはセンサーライトが有効です。機器の対象となる範囲内に動くものがあれば、センサーが感知してライトが点灯します。暗闇に乗じてマンションに忍び込もうとする侵入者への威嚇効果を期待できます。
夜間に人が潜みやすくなる箇所に、センサーライトの設置を行えば高い防犯効果を発揮するでしょう。
【防犯対策4】防犯カメラ
防犯カメラは、設置するだけで高い効果が見込めます。姿が映像に残ってしまうと、後々捕まる可能性が高くなるため、侵入者にとって防犯カメラは脅威といえるでしょう。
防犯カメラは被害防止だけでなく、万が一被害が発生した際に、記録した映像が犯人逮捕につながる有力な証拠となることにも期待できます。
【防犯対策5】暗証鍵付きの足場出入り口の扉
多くの施工業者は、足場出入り口の扉を、開閉に暗証番号の入力が必要なものを採用しています。暗証番号を知らない部外者は扉を開けられないので、侵入防止に効果的です。
【防犯対策6】オリジナル作業着
施工会社によっては、現場で作業するスタッフが、自社オリジナルの作業着やヘルメットを着用するところもあります。
オリジナルの作業着を着ていれば、一目でその施工業者の関係者かどうかが判断可能です。
【防犯対策7】警備員による巡回
警備会社に依頼して、警備員に巡回してもらう方法もあります。
この方法は、大規模修繕工事が年末年始やお盆休みの期間にさしかかる場合など、足場が設置されたままの状態で、長期休暇に入る際に利用されることが多い傾向です。
住民の防犯意識を高めることも重要
大規模修繕期間中の侵入犯罪発生を防ぐためには、住民ひとりひとりが防犯意識を高く持つことが重要です。
例え少しの時間であっても、家を空ける際には、玄関はもちろん室内のすべての窓を必ず施錠しておくことは基本中の基本。
上述の窓の補助ロックをはじめ、防犯フィルム、防犯アラームなどの自宅で使える防犯グッズを利用するのも効果的です。空き巣犯の心理として、光を避ける傾向があるため、不在時にあえて照明を点けっぱなしにしておくのもよいでしょう。
また、高層階に住んでいる住民ほど、侵入犯罪に対する防犯意識が低い傾向です。大規模修繕期間中は、足場があるため高層階への侵入リスクも高まります。高階層の住民も、普段から防犯意識を高く持つことは当然重要ですが、期間中は特に窓の戸締まりをしっかりと行いましょう。
住民の防犯意識を高めるためには、管理組合が住民説明会などの場で防犯対策の必要性を周知するのが効果的。大規模修繕の期間中は犯罪発生リスクが高まることや、各住民が自宅で実施できる効果的な防犯対策の方法などを説明し、マンション全体の防犯力を高めていきましょう。
以上、今回は大規模修繕の防犯対策について解説しました。
マンションの住民が安全で快適に暮らすために防犯対策は重要。犯罪被害が起きてしまえば、被害を受けた当事者はもちろん、同じマンションで暮らす住民全体までが生活に不安を感じるようになってしまうでしょう。
特に、犯罪者にとって好都合な条件が揃う大規模修繕の実施期間中は、気を引き締めて防犯対策に取り組んでいきましょう。
イラスト:平松 慶
この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!