大規模修繕は季節も重要⁉ おすすめの季節について解説
大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は大規模修繕に適した季節について解説していきます!
大規模修繕は天候に大きく影響を受ける
マンション管理組合における最大のイベントである大規模修繕は、戸数の少ないマンションであっても工事に数ヵ月かかる場合が多くあります。
大規模修繕で行う作業は、台風や積雪の影響で中断を余儀なくされるなどの悪天候による工期の問題や、資材を乾燥させる工法を行う際に、気温が低いと乾燥しづらいといった工事のクオリティに関わる問題が考えられるため、実施する季節の選択が重要です。
お住まいのマンションの修繕の内容に合わせて、どの季節に工事を実施するのがベストなのかという点も考慮して、計画の立案を進めていきましょう。
真夏の実施を避けるべき理由
大規模修繕に最も適さない季節は夏だとされています。夏場は雨が多く、悪天候によって作業を中断せざるを得なくなる可能性が高いとみられているためです。工事の中断が続けば、工期が延長してしまい、予定外のコストがかかってしまうかもしれません。
夏場を避けるべきもう一つの理由として、外壁の塗装やベランダの防水工事などの作業の際に、窓の開閉やエアコンの使用を制限される場合がある点が挙げられます。真夏に窓を閉め切った状態でエアコンの使用が不可となれば、室内は高温多湿となり、熱中症などの健康を害するリスクが高まるでしょう。
大規模修繕工事を夏場に予定しているマンションは、このようなデメリットを事前にしっかりと把握し、住民へ共有しておくことが必要です。
一方、夏場は施工会社への工事の依頼が少なくなる傾向があるため、初期工事費用の減額交渉が行える可能性があります。夏場の大規模修繕のデメリットを理解しつつ、コスト削減を見込めるのであれば、夏の時期に工事を実施するのも一つの手であるといえるでしょう。
気温の低い冬も注意が必要
夏が大規模修繕に適さない一方で、冬場も大規模修繕の実施を避けるべき季節だとされています。
冬場は気温が下がるため、塗料などの資材が凍ってしまい、本来の品質を発揮できなくなるかもしれないという点に注意が必要です。
モルタルやコンクリート、漆喰、土壁、石膏などの塗り壁材を水と混ぜ合わせて壁面に塗って仕上げる工法は「湿式工法」と呼ばれます。湿式工法で使用する塗料は、気温が5℃を下回ると硬化が進みづらくなるため、真冬の気温では品質の劣化が起きるリスクが高まります。近年では、塗料に添加剤を併用することで、低温でも壁材を硬化させることが可能となってきていますが、やはり冬よりも気温の高い時期に実施する方が不安も少なく行えるでしょう。
また、積雪量の多い地域では、雪の影響で作業を実施できなくなる可能性が高いため、冬場を工事の実施期間に選ぶのは避けるべきでしょう。
それ以外にも、年末年始やお盆を挟む工事の場合には、防犯面の注意が必要です。年末年始の時期は、帰省や旅行をする世帯が増加するため、人のいなくなった時期を狙って空き巣などの被害が増える傾向にあります。そのような時期に足場が組まれていると、高層階であっても足場をつたって窓側からの侵入が可能となるため、注意が必要です。
おすすめの季節は春と秋
春と秋は気温や天候が比較的安定しやすく、大規模修繕に最も適した季節であると言えます。
ただし、秋は台風の季節でもあるので、秋の実施を計画している管理組合は、あらかじめ台風による遅延を考慮して、余裕を持ったスケジュールを立てておくと良いでしょう。
また、この時期は大規模修繕工事の実施における人気シーズンであるので、施工業者のスケジュールを押さえられるかどうかという点も考慮しなければなりません。春・秋といった人気シーズンに、工事の実施を希望するのであれば、早めに計画を立てて、施工業者の予定を押さえておくことが重要です。
いずれの季節であっても、悪天候によって工事を予定通りに進められなくなる可能性は存在します。不足の事態に対処するためには、ゆとりをもった計画を立てておくことが鍵となります。
以上、今回は大規模修繕に適した季節について解説しました。
夏場の工事は、天候によって工期延長の可能性が高まるため特に注意が必要です。
実際に工事を実施する時期は、お住まいのマンションの大規模修繕で必要となる工事内容に沿って、修繕会社と相談していくようにしましょう。
イラスト:平松 慶
この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!