工事期間中はベランダが使えない!? ベランダの修繕について解説
大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回の記事では、ベランダの修繕工事における注意点を紹介します。
ベランダは専有部分ではないため大規模修繕の対象
大規模修繕で工事の対象となるのはマンションの共用部分です。ベランダは、使用者が各住戸の住民に限られるため、専有部分だと思っている人が多いのではないでしょうか。しかし、火災などの災害時には、避難経路としてベランダの利用が想定されるため、法律上の定義では「専用使用権が認められた共用部分」として扱われます。そのため、大規模修繕ではベランダも工事の対象です。
大規模修繕におけるベランダの修繕では、外壁塗装やサッシ周りのシーリングの打ち替え、床面の防水シートの張り替えなどを行います。
ベランダは屋外に位置するため、紫外線や雨風に晒されて劣化が進行しやすい場所です。シーリングの耐用年数の目安は7〜10年、防水シートは10〜15年程度とされています。そのため、十数年周期で大規模修繕を実施する場合、ベランダは毎回修繕の対象となると考えておくべきでしょう。
修繕前にはベランダの片付けが必要
ベランダの修繕工事では、壁に塗料を塗ったり、床を張り替えたりと、ベランダ空間内において広範囲に亘る作業を行います。私物をベランダに置いたままにしておくと、修繕作業の妨げとなってしまうため、片付けておかなければなりません。大きめのテーブルを置いていたり、ガーデニングをしたりしていると、なかなか大変な作業となるでしょう。
片付けが必要となるタイミングは、事前に施工業者から告知されます。期日までに片付けがされていなければ、工事の進行に遅延をもたらす場合があるので、所定の日程までに対応が必要です。
片付けた私物は各住戸の室内で保管するのが基本。ベランダの修繕を実施する際には、室内に保管のためのスペースを用意しておくことが重要となります。
意外かもしれませんが、ベランダの工事期間中は網戸も取り外さなければなりません。通常であれば、施工業者から網戸を保管するための専用の袋が各住戸へ支給されるので、そちらを使用して保管します。
自室での保管が困難なため、ベランダに置いていた私物を捨てる場合は、撤去・廃棄に関わる費用は自費となる点に注意が必要です。時々、廃棄のために発生した費用を管理組合や施工業者へ請求する人がいるようですが、支払われることはありません。これは、法律上の共用部分であるベランダに私物を置く行為が私的利用に該当するため、廃棄の責任が物の所有者本人にあるためです。
マンションによっては片付けた私物の保管場所として、管理組合が仮置き場を用意する場合もあります。利用を希望する人は、事前に管理組合と仮置き場の設置の有無を確認しておきましょう。
仮置き場を利用できる場合は、各住戸ごとにどのくらいの物量を預けられるのかといった、使用ルールの確認も重要です。例えば、生き物を飼育する水槽や植物など、手入れが必要なものを預けると、何かあった場合にトラブルに発展しやすくなります。そういった物は、仮置き場に置けないとするルールが定められている場合も多いので、前もって確認が必要です。
なお、工事期間中であっても、エアコンの室外機や物干し竿などは、片付けなくても良いとする場合もあります。どのようなものが片付け不要に該当するかは、マンションのつくりや修繕の内容によって異なりますので、施工業者に問い合わせましょう。
修繕期間中はベランダに入れない
ベランダの修繕作業を行っている期間中は、私物を片付けなければならないだけでなく、作業内容によってはベランダを使用することができなくなります。
ベランダの使用が制限される場合は、当然、洗濯物をベランダに干すことはできません。洗濯物を乾かす際は、乾燥機を使用したり、室内干しをしたりといった方法を行う必要が出てきます。
また、壁面の塗装などを実施するのであれば、塗料を乾燥させるために時間を要するため、作業を行う日中だけでなく、夜間の時間帯もベランダの使用が制限されます。
工事内容によって異なりますが、概ね1〜2週間はベランダの使用が制限されるというように考えておきましょう。
以上、今回は大規模修繕でのベランダの修繕工事について解説しました。
工事期間中は日常的に使用しているベランダが利用できなくなるため、不便に感じることが多く出てくるものです。どのような行為が制限されるのか、事前にしっかりと理解しておきましょう。
また、ベランダの片付けは、人によっては大掛かりな作業を要するので、早めに準備を進めておきましょう。
イラスト:平松 慶
この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!