志が高い理事長が集う「RJC48」の活動に迫る!
マンション管理組合において予算管理や修繕計画の立案・施行など、業務執行の要を担う理事。そのなかでも業務を統括する理事長は強い権限を持ち、マンションをより良くしていきたいという熱意のある組合員にとっては、ぜひ臨むべき役職といえます。
しかし周到に準備して総会や理事会で議案としたテーマでも、組合員から理解が得られず「何が悪かったのだろう」と思い悩んでしまう理事長も少なくありません。相談できる人が身近におらず「同じ悩みを共有し合える、仲間がほしい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そんなマンション理事長の悩みを解決に導き、さらに活発な情報交換によってマンション管理の手腕を日々磨いている「RJC48(アールジェイシーフォーティーエイト)」と呼ばれる団体をご存じでしょうか。今回はRJC48の代表を勤める應田治彦さんに、具体的にどのような活動を行っているのかを伺いました。
互いに先生役としてアドバイスし合う参加型の集い
RJC48は日本全国のマンション理事を主な参加資格者とした、マンション管理に関する様々なテーマを取り扱った勉強会などを開催している団体です。「RJC」はRIJICHO(理事長)を由来としており、その名のとおり参加者のほとんどが現役の理事長となっています。「48」は有名アイドルグループの名前になぞらえたものであり、設立当初の会員が30人程度だったころに将来の目標としていたメンバー数でもあります。しかし現在ではそれをはるかに超える約200人の会員が在籍し、同種団体のなかでは国内最大級の規模を誇っています。
代表を務める應田治彦さんは、マンションの理事会運営に13年間関わってきたベテランの現役理事役員。そしてマンション管理組合に関わる様々な情報をブログやSNSで精力的に発信し、インターネット上ではハンドルネーム「はるぶー」さんとして有名なインフルエンサーです。應田さんはRJC設立のきっかけを次のように話しました。
「マンションの理事長に就任して2年目となり、理事長の仕事が思ったよりも孤独なものだと感じ始めていたころのことです。管理会社は全面的に信用できるわけではないし、住民からは理事会は仕事をしてないと言われるなど、誰も味方がいない状況でした。そんななかで『理事会で物事が決まらなくてつらい』などとSNSに投稿したんです。すると投稿の内容に共感したほかのマンションの理事長達が返信をしてくれて、その後実際に顔を合わせる交流が生まれるようになりました。それがRJC48の原型となったんです」
「理事長の悩みは、理事長にしかわからない」−−。そんな考えのもと、当初は飲食店で理事長が7〜8人で集まり、お酒を飲みながらお互いの苦労を話し合っていたと語る應田さん。しかし飲み会以外にも集まれる場があった方がいいのではないかと話し合う中で、徐々に勉強会のかたちになっていきました。
そんなRJC48において活動の原則とするものが、会員同士が互いに先生役としてアドバイスし合う「参加型・情報交換型」の会としていることです。
「会員には、勉強会で常に聴衆になるなど受け身がちな姿勢では無く、積極的な情報共有が推奨されています。ただ延々と聞き手に回っている状態では、参加料を払ってマンション管理士などプロが主催するセミナーを受講するのと変わりがなく、アマチュアである理事同士で集まる意味がないからです」
しかし、先生役として教えられるほどの理事会の経験を持っていない方でも、入会に際して不安を感じる必要はなさそうです。
「理事会の経験が浅い会員であっても、自分のマンションの事例や事情紹介などをしてもらえれば、それだけで会の活動に貢献したことになります。また、本業で何か得意分野を持っていれば知識を生かすこともできます。例えばIT企業に勤めていれば、インターネットの通信速度が遅いという問題にアドバイスできるかもしれません」
こうしたRJCの「参加型・情報交換型」を原則とする姿勢からは、理事会の経験年数による立場の上下などなく、互いに切磋琢磨していこうとする志の高さが伝わってきます。
オン・オフを使い分けて交流するRJC48の活動
RJC48の活動内容は主に2つに分かれます。1つ目は会員だけが参加できるインターネット掲示板で日常的に行う、オンライン上の情報交換です。RJC48では入会に際して、氏名・マンション名の登録が義務づけられており、これが掲示板の運営で大きな役割を果たします。
「掲示板の投稿は会員のマンション名と紐付けされており、どれくらいの規模・築年数のマンションで、どのような情報交換が行われていたかを調べることが可能です。加えて、実名が表示されることによって建設的ではない愚痴や文句といった不適切な書き込みを抑止する効果もあるんです」
また、新たに掲示板で質問する場合には、約200人の会員から意見を聞くことが可能です。会員の理事会での経験年数は平均すると約5年ですので、考え方によっては1000年分の経験を活用できるのです。
「例えばマンションのエレベーターが落雷を受けて止まった経験は、普通なら一生理事長を務めたとしても起こらないことです。インターネットで対応策を調べても情報は決して多くありません。しかしRJC48では落雷被害を受けた経験者が複数人おり、実際に問題が生じた場合に具体的な対応策を聞くことができるのです」
RJC48における主要な活動のもう1つが、会員同士が顔をつきあわせたリアルな勉強会、いわばオフラインでの情報交換です。勉強会は定期的に行われるものではなく、会員が自主的に立案して開催されるのですが、熱心な企画・参加者のかいあって途切れることはなく、現在までに計48回、おおよそ2カ月に1回の頻度で開催されています。
「勉強会はテーマを詳細に絞り込んだうえで開催します。例えば大規模修繕を取り扱う場合は『タワーマンションの足場仮設』といったように具体的なテーマを定め、対象とするマンションを限定し、希望する参加者にとって有意義な催しとなるよう務めています。ちなみにタワーマンションとは反対に、小規模戸数のマンションを対象とした勉強会も過去には開催しています」
これまでの勉強会は、企画を立案した会員が在住しているマンションの会議室を利用して行われてきましたが、ここ1、2年は新型コロナウイルスの感染拡大により状況が変わっているそうです。
「現在は一時的にビデオコミュニケーションツールを使って勉強会を行っています。会員同士が直に顔を合わせた交流ができなくなっていることが残念です。折を見て、まずは首都圏だけでもリアルな付き合いを復活させたいと考えています」
勉強会では名刺交換や懇親会が行われるなど、理事長同士のつながりづくりにおいて重要な役割を持っていたそうです。
「私は普段は研究職に就いているので同僚は自ずと理系出身者ばかりになり、付き合う人間関係に偏りができてしまいます。しかし理事会や理事長の集まりであれば、普段知り合えない不動産業や弁護士など様々な人がいて、お話しすると非常に楽しいんです」
単なる情報交換に留まらず、マンション管理について志を同じくする仲間をつくり、楽しく交流して人生を豊かにする。應田さんの言葉からは、そんなRJC48のポリシーもうかがえます。
マンションの最新トレンドも活発に議論
これまでRJC48に参加することによる様々な利点を述べてきた應田さん。最大のメリットは何かと問われると、次のように答えました。
「RJC48への参加を希望する理事長に多いのが理想に燃えていて、数々の施策を独断で短期間に進めていこうとする方です。そして、ほかの理事会員の理解が得られず思い悩み、解決策を求めて入会してくるわけです。そんな方々が『目標に向かって急いで突っ走らず、まずは落ち着こう』などと経験豊かな会員から、客観的にアドバイスしてもらえることが、最も大きなメリットと言えます」
應田さんは具体的な事例も話しました。
「例えば新規入会者のなかには、修繕積立金の不足問題に取り組みたい理事長が数多くいます。積立金の値上げを行おうと思ったら通常は4〜5年、早いマンションでも最低2年は必要ですが、入会したての理事長の中には、これを1年で実現しようとする方がいるのです。さらに理事の任期延長など、別の施策を同時に取り組もうとする方も少なくありません。こうした理想に先走る方々に向けて『あなたのやりたいことの1つ目は1年目に、2つ目は2年目から着手していこう』と現実的な提案をするわけです」
さらに、数多くの理事長が集うことによって、マンション管理に関するトレンドや、多くの理事が気にかけている関心事をいち早く知ることができる点も、大きな利点だと話します。
「1年前だと、やはり新型コロナウイルスへの対応に関する話題が多かったです。『あなたのマンションでは共有施設を開放していますか? 感染防止のために閉鎖していますか?』といったアンケートも行いました。ほかのマンションではどうしているのかリアルタイムの動向を知ることができ、自分のマンションの対応に生かすことができるんです。一方で現在、多くの会員が話題にしているテーマは2022年4月から施行される『マンション管理適正評価制度』ですね。細かい評価方法がどのようになるのかなど、活発な意見交換が行われている最中です」
RJC48には数多くのベテラン理事が在籍していますが、いずれの方も新しい話題への感度が高いのだそうです。過去の経験だけにとらわれず、常に未来に目を向けて新しい知識を身につけていく。そんなRJC48の志が高い姿勢は、理事長として目下の悩みを解決したうえで、さらに新たなステップを踏み出すための参考にもなりそうです。
この連載について
【連載】マンション管理最前線
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