理事会の運営で頼りになる「マンション管理士」の役割とは?
「理事会の役員が回ってきた……」
多くのマンションでは立候補制だけでなく、輪番制によって役員が選出されるため、好むと好まざるとに関わらず担当する機会はやってくるもの。そこでこの連載では「理事会役員になったら、まずこれだけは知っておきたい!」ことを紹介していきます。
連載1回目の今回は、「マンション管理士」について。マンション管理は住民同士のトラブルや、騒音・ペットの問題など、管理組合だけではなかなか解決できない問題も珍しくありません。そこで最近では、運営をサポートしてくれる専門家に力を借りるケースが増えているようです。
「マンション管理士って何をやってくれるの?」といった素朴な疑問の答えから、「管理業務主任者」や「宅地建物取引士」などとの業務領域の違いまで要点をまとめて解説していきます。
マンション管理士は管理組合の運営をサポートする専門家
マンション管理士は国家資格の1つで、資格自体ができたのは2001年と比較的最近になってから。「管理組合のサポート」や「運営を改善するためのコンサルティング」などを主な業務としています。
本来、マンションの管理を担うのは管理会社でもマンション管理士でもなく、マンションに住む人たちで形成される管理組合です。しかし管理組合に所属する人の多くは、マンションの管理に関して専門的な知識を持たない人がほとんどでしょう。そこで適切な管理方法について、専門家の視点で助言・指導を行ってくれるマンション管理士の存在が頼りになるのです。
マンションは多くの人が1つの建物をシェアしているわけですが、大勢の人をまとめて生活の秩序を守るためにはルールを明確にしたり、トラブルが発生したときに対処したりする必要があります。またマンションの修繕計画や安全管理など、専門的な知識を要していなければ勝手がわからないことも多々あるでしょう。
こういったマンションの管理で発生する業務を、専門家として支えるのが、いわばマンション管理士の役割といえます。
マンション管理士の代表的な業務は主に4つ
住民トラブルから修繕まであらゆる面でマンション管理のサポートを行うマンション管理士ですが、代表的な業務は、これから紹介する4つに分かれます。
【業務1】理事会への出席や進行などの「顧問業務」
まず1つ目が管理組合と「顧問契約」を締結することで、マンション管理に関するアドバイスやサポートなどの業務を行うことが挙げられるでしょう。基本的には契約の時点で業務範囲をある程度定めることになりますが、主に以下に挙げる内容を依頼することになるでしょう。
・管理組合から選出された理事長の業務をサポート・代行
・定期的に行われる理事会や総会への出席・助言
・理事会・総会の資料作成や進行、取りまとめ
・管理会社と管理組合の調整
【業務2】管理会社との契約見直し業務
一般的にマンション管理に関する業務の一部を管理組合が管理会社に委託する場合、「管理委託契約」を締結します。その際に結んだ契約内容の見直しを行うのも、マンション管理士の業務の1つです。マンション管理士は主に以下の観点をもとに、契約内容の見直しを検討します。
・管理委託契約の内容に管理組合にとって不利な内容はないか
・管理会社に支払う費用は相場と比べてあまりにも高すぎないか
・管理会社は契約の内容に沿ってしっかりと業務をおこなっているか
多くのマンションでは新築時から委託する管理会社が決まっていることがほとんどですが、一度マンション管理士に契約内容をみてもらうことで、管理会社に支払うお金を抑えられる可能性もあります。
一方で、契約内容の見直しをお願いするということは必ずしもメリットばかりではありません。例えば契約内容を確認した結果、管理会社を変更するとなった場合、次のようなデメリットが生じるケースもあります。
・マンション管理士とつながりのある管理会社を紹介される(他社と比較する余地がない)
・管理会社の変更によって抑えられた分の委託費と変更後の委託費数ヶ月分を請求される
もちろん管理会社に支払う費用を大きく抑えられるのなら話は別ですが、マンション管理士に支払う費用も加味したうえで、契約内容の見直しをお願いするかどうか慎重に検討したほうが良いでしょう。
【業務3】管理規約の見直し業務
一般的にマンションの購入時・入居時に所有者や住民へ「管理規約」が渡されるかと思います。この管理規約には、具体的には共用施設の使い方やペットの可否などのほか、各世帯の管理費・修繕積立金の負担割合や費用の使い道など、マンションに関するルールが記載されています。
これらの規約を必要に応じて見直し、助言するのも、マンション管理士の業務内容として挙げられます。
【業務4】大規模修繕の計画・立案業務
築年数の経過による劣化をもとの水準に戻すことで建物の安全性や資産価値を保つため、マンションでは10~15年に一度、大規模な修繕工事(大規模修繕)を行うのが一般的です。そのなかでマンション管理士は、「修繕計画の立案」業務も担います。
業務内容としては、専門的な視点から建物の現状を把握しつつ、いつ・どんな修繕が必要になるのかを計画して管理組合に説明。あわせて、実際に修繕を行ってもらう業者とのやり取りや助言なども行います。
この連載について
【連載】理事会役員超入門
マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!
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