連載:となりの管理組合

大規模修繕経験者が教える「修繕費用を抑えるコツ」とは?(前編)

2020.03.16
大規模修繕経験者が教える「修繕費用を抑えるコツ」とは?(前編)

「管理会社を通して提案された修繕費用が高額で……。このまま管理会社に任せていては、提示された金額が妥当かどうかの判断もつかない。そこで自分たちで、大規模修繕業者(以下、修繕業者)を選ぶことにしたんです」

そう話してくださったのは、埼玉県にあるマンションの管理組合理事で、大規模修繕委員会(以下、修繕委員会)の委員長を務め、1回目の大規模修繕を経験した中村さん。

マンションでは十数年に1度のタイミングで大規模修繕を行う必要がありますが、修繕業者の選定などを中心となって行うのが修繕委員会です。修繕委員会は、管理組合から選出されたメンバーで構成されます。

読者のなかには「大規模修繕に向けた準備を始めることになったけど、いったいどうやってことを進めていくのがいいのか?」と悩みを持つ方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は中村さんに、実際にどう進めていったのか、を伺ってきました。

他のマンションでは、大規模修繕に向けてどのような取り組みを行っているのか。となりの管理組合を「のぞき見」してみましょう!

最初の仕事は修繕積立金の値上げ

修繕委員会のメンバーとなるなど、中村さんが大規模修繕の準備に関わるきっかけとなったのは、不足する修繕費用を調整するために設置された「修繕積立金検討委員会」への参加でした。

「もともと管理会社から『長期修繕計画にもとづいて築10年目に大規模修繕を行うと、現在のままでは修繕費用が大幅に不足するため、修繕積立金の増額を行いたい』との提案がありました。しかしこのときは、値上げ額などに反対意見が出て、提案は否決。理事会で再検討することになりました。

そこで足りない金額を管理組合が主体となって調整するために、管理会社から『修繕積立金検討委員会を立ち上げませんか?』と提案されたので、『それならやりますよ』と引き受けました」

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こうして中村さんを含めて、3人のメンバーで始まった修繕積立金検討委員会。大規模修繕に向けた最初の業務は、修繕積立金の値上げを、総会で承認してもらうことでした。

「修繕費用として不足すると思われる金額など、根拠となるデータをもとに、総会で修繕積立金の値上げ額を提案しました。『今、皆さんから徴収している修繕積立金の金額をこれから同じように積み立てていくとなると、大規模修繕の業者に支払うであろう金額として相当足りませんよ』と。次に実際に大規模修繕を行うときに不足しているお金を、『そのときに一時金として徴収して払いますか?』『それともまだ6年あるから毎年ちょっとずつ積み立てていきますか?』と提案したわけです。そしたらみんな『一時金は嫌だ』ということで、結果、なんとか総会で積立金増額の承認を得ることができましたね」

値上げや増額と聞くと、抵抗感を示す人も多いかもしれませんが、修繕積立金の額はマンションを売りやすくするために当初は低めに設定されていることがあります。

相場や適正価格と比べてあまりにも修繕積立金の額が低い場合は、中村さんの住むマンションのように、途中で増額をする必要も出てきます。

*マンションの規模や付加施設によっても差は異なりますが、国土交通省が2018年に行った調査によると、1戸当たりの修繕積立金の平均は毎月1万2268円程度。国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、適正価格の算出方法も示されています。

コンサルティング会社の協力で見積りに必要な設計書を作成

無事、修繕積立金の値上げも終了。そして数年後、いよいよ修繕業者の選定など、大規模修繕に向けて具体的に検討する時期が近づいてきました。このとき、修繕委員会も設置され、中村さんは委員長として引き続き大規模修繕に向けた準備に関わることになります。

修繕委員会としての初仕事は、修繕費用の概算をより正確に把握するため、見積もりを行うことでした。

「最初は管理会社から紹介された同系列の建設会社に、長期修繕計画をもとにした概算の見積り金額を提案していただきました。ところがその金額があまりにも高額でびっくり……。そこで、他の修繕業者も比較してみようと考えました。

ただ複数の業者の金額を正確に比較するために、建物調査を通じて『ここが痛んでいる』『ここのタイルを貼り替える』などポイントを把握し、どこを修理してもらうべきかを記載した設計書を作る必要がありました。

しかし、傷んだ箇所の把握の仕方も設計書の書き方も、はじめて大規模修繕を経験する私たちにはわかりません。そこで専門のコンサルティング会社にお願いすることになりました」

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修繕委員会では、このように外部のコンサルティング会社にサポートをしてもらうことで修繕業者を選ぶなどの役割もあります。

大規模修繕におけるコンサルティングとは主に「修繕が必要な箇所の調査」や「大規模修繕が適正に行われているかどうかの監理」を指します。

「それって管理会社にお願いするのでは?」と思う方もいるかもしれません。もちろん管理会社から調査会社等へ発注するパターンもありますが、その場合は直接依頼するよりもコンサルティング費用がかさむ場合もあります。

また注意したいのはそれだけでなく、「修繕にかかる費用」も高くなってしまうケースがあることです。中村さんのマンションでも、管理会社を通じて提示された大規模修繕工事の見積額と、後々お願いすることになる修繕業者から提示された金額とは数千万円以上の差があったといいます。

中村さんら修繕委員会では、まずコンサルティング会社に依頼する場合にかかる費用やどういったメリットがあるのかを示した資料を作成。そのうえで臨時総会を開き、コンサルティング会社を利用することについて、承認を得ました。

その後、あまりに費用が安い業者は避けるなど、メディアで報じられていた不適切コンサルタントの特徴などにも気を配りながら候補5社に声をかけ、それぞれの見積書やプレゼンテーションの内容を受けて検討を開始。金額や提案内容に関しては似たようなものだったそうで、1社選んだ最後の決め手となったのは、別のマンションの修繕委員会の元メンバーで、先に大規模修繕を経験した知人からの『ここが良かったよ』という口コミによる推薦でした。

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【連載】となりの管理組合

大規模修繕は、準備から完了までに2〜3年ほどの時間を要する一大イベント。なかでも管理組合から選出される修繕委員会は、このイベントにおいて必要不可欠な存在です。とはいえ、最初は誰もが初心者。「選出されたはいいけど、どうすれば?」と、疑問がたくさん浮かんでくることでしょう。本連載では、そんな疑問を解決すべく、実際に大規模修繕を経験したマンションに足を運び、編集部が修繕委員会の方に突撃!リアルな声をお届けします!

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