連載:マンション管理最前線

永く住み続けながら資産価値を保つ! 「勝ち組」マンションになる方法とは?(後編)

2021.04.14
永く住み続けながら資産価値を保つ! 「勝ち組」マンションになる方法とは?(後編)

前編では修繕積立金が足りず、廃墟化していくマンション住宅の問題についてさくら事務所・会長の長嶋修さんに聞きました。続く後編では、不要な工事を抑えて修繕費用を削減する「ホームインスペクション」について詳しく説明していきます。

住宅診断で修繕費用を抑える

マンションの資産価値を保ち、快適な住まいを維持するために必要な大規模修繕。必要な工事箇所を把握し、不要な出費を抑えるためにも「ホームインスペクションを行ってください」と長嶋さんは提案します。

「ホームインスペクションとは、建物の劣化状況や不具合の有無を把握する際に行う住宅診断のこと。とくに『大規模修繕ではどこを工事すれば良いか』の判断に役立てます。事前に建物を診断したうえで大規模修繕を実施できると、必要な箇所の修繕だけで済む。結果として、修繕費用も抑えられるわけです」

ホームインスペクション

しかし、国土交通省が公表した「既存住宅状況調査の実施件数」では、ホームインスペクションを行う事業者の約8割が、住宅調査を実施していないと回答しています。

「日本では、諸外国と比べてホームインスペクションの普及率は低いのが現状です」

なぜ、日本と海外では普及率に差があるのでしょうか。

管理意識の高い海外では「築100年」を超える物件も多い

日本では新築物件ほど税制面で優遇される背景があり、中古物件の流通は欧米に比べると少ないというデータがあります。

対して、中古物件が住宅流通の大半を占めるアメリカやヨーロッパなどでは、築年数で物件を選ぶ概念がないそうです。

「例えばアメリカだと、管理組合の運営状況が住宅購入の判断基準に加わります。管理組合のコミュニケーションが活発でなかったり、修繕積立金の残高が少なかったりすると、自ずと物件価格も下落する。管理組合の運営状況が資産価値に直結するからこそ、住民の管理意識は高くなるわけです」

マンション管理を主体的に行う住民が多いからこそ、ヨーロッパなどでは築100年を超える物件もあるといいます。

築年数が長いヨーロッパのマンション

しかし日本では、マンションの管理を「すべて管理会社にお任せ」するケースが多いのが現状。そこで管理組合が自分たちの住むマンションに関心を持ち、定期的なホームインスペクションの実施で、建物の状態を把握し続けることが大事だそうです。

「建物の状態が分かれば、どこを修繕したほうが良いか把握できますよね。『大規模修繕の時期が来たから仕方なくやろう』ではなく、『ここの修繕が必要だから、そろそろ工事しようか』という意識になると、修繕費用を抑えながら資産価値の維持にもつながると考えています」

修繕積立金の値上げが回避できるケースも

ホームインスペクションを行うと、正確な修繕費用の算出につながるため、修繕積立金の値上げも回避できる可能性があるようです。

「タイルが落ちそうじゃないか、防水性が落ちていないかなどを専門家に見てもらうことになります。その結果、劣化が進んでいない箇所なら、慌てて修繕する必要はありません。適切な工事箇所と時期に合わせて修繕積立金を設定できるため、無理に値上げをしなくて済む可能性もあります」

また大規模修繕では、施工業者が提案した通りに行われるケースも多いそうです。しかし、業者が提案する内容には、今すぐに修繕する必要がない項目が組み込まれていることも珍しくありません。

「その点、ホームインスペクションを実施すると、どこを修繕すれば良いか見極めることにつながる。結果として、診断の費用はかかるものの修繕費用を必要最低限に抑えられるわけです」

では、ホームインスペクションはどのくらいの頻度で行うと良いのか。

長嶋さんによると、「5〜10年に一回できれば理想」だそうです。

「一般的に大規模修繕は、15〜20年に一回くらいの周期で実施されます。どのマンションでも、新築の時に長期修繕計画案は作成しているんですが、その通りに進むことはほとんどありません。実際には、想定していなかった不具合も個別に出てきますから。なのでホームインスペクションのタイミングは、大規模修繕の実施サイクルよりも短いほうが良い。その際、長期修繕計画の見直しも同時に行うのが理想ですね」

管理組合の運営状況は将来の資産価値を左右する

多額の費用がかかる、大規模修繕。長期修繕計画をもとに、修繕積立金を毎月いくら積み立てる必要があるのか、管理組合がしっかりと把握・管理しておくことも大切だといいます。

「当たり前の話ですが、修繕積立金の残高が潤沢にあると、必要なタイミングで修繕工事ができます。一方で、修繕積立金が不足していれば、修繕ができずに劣化が放置されてしまうわけですから」

今回紹介したように、5年〜10年を目安にホームインスペクションを実施し、建物の状況を把握する。そして、必要なタイミングで修繕工事を行うために、適正な金額の修繕積立金を集めておく。この2つが、長く住み続けながら資産価値を保つポイントと言えそうですね。

(プロフィール)
さくら事務所会長・長嶋修さん

不動産コンサルタント。国交省・経産省などの委員歴任。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会初代理事長。『100年マンション』『不動産格差』(日経新聞出版)など、著書・マスコミ掲載やテレビ出演、講演等実績多数。YouTube:長嶋 修の「不動産経済の展開を読む」は登録者数約5万人。

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この連載について

【連載】マンション管理最前線

「近年に見られる大規模修繕工事のトレンドは?」「今後、マンション価格はどう変動するのか?」「災害リスクとどう向き合べきか?」など、この連載では、マンション管理・修繕を巡る最新事情をお伝えしていきます。

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