『管理良好マンション』を目指すには!? アクションプランをプロが語る!
マンションは管理を買う時代へ! 評価サイトが認める「管理良好マンション」とは?
近年では「マンションは管理を買え」という言葉が広まってきています。
2022年の4月には、認定を受けたマンションが税制上の優遇等を受けられることが予想されている「管理計画認定制度」の運用を国土交通省が開始予定。マンションにおける「管理」を重要視する施策に、国や自治体が取り組む姿勢をみせています。
しかし、依然として物件の価値は、建物の状態や設備、立地といった条件がメインとされており、マンション売買における情報として、管理はクローズアップされないまま取引されています。
そんな業界へ一石を投じる試みを行うのが、さくら事務所が手掛ける、管理組合の運営力に着目したサイト『BORDER5』です。
今回は、BORDER5が管理を重要視する理由について、さくら事務所代表取締役社長の大西倫加さんと、さくら事務所のマンション管理コンサルタント(マンション管理士)でグループ会社である、らくだ不動産にて、エージェントとしてもご活躍中の山本直彌さんのお二人にお話しを聞きました。
BORDER5が目指す「管理の可視化」はなぜ重要?
さくら事務所が手掛けるBORDER5は「マンションは管理を買え」をテーマとする中古マンション情報サイト。「管理」に着目するという特徴は従来のマンション情報サイトと一線を画すものです。大西さんはBORDER5を「マンションのセレクトショップのようなサイト」と表現します。
「BORDER5では、マンション管理組合の運営力を我々独自の基準で判断し、そのなかで上位5%に入る卓越したマンションをセレクトして掲載しています。サイトに載っているマンションの運営力は、ほかのマンションと比較ができるように可視化しています」
マンション管理組合の「運営力のみえる化」という試みが、BORDER5最大の特徴。運営力の判定には、指標となる4つの項目があり、それぞれの項目が10段階の数値で評価されているため、各項目がどの水準にあるのかが一目で分かる設計です。このようなサイトを始めた理由について、山本さんは次のように説明します。
「BORDER5ができるまで、マンションの管理状態を可視化、良い面を評価するサイトはありませんでした。しかし、『マンションは管理を買え』と言われる今の時代において、マンション管理組合の活動は、当然売買の意思判断に重要な要素であると私達は考えています」
さくら事務所は、マンション売買における管理という重要な要素が、長らく不透明さを持つものであったことに問題意識を持っていたと大西さんは話します。
「これまでは購入者にとって、マンション管理組合の実情は、実際に購入するまでわからない不可視領域ということが通例でした。購入前に、マンション管理について知りたい情報を問い合わせても、疑問の解消となる回答を得ることができないケースもみられます。しかし、購入者の立場に立って考えると、これから実際に暮らしていくマンションなのに、重要な要素である管理についての情報が伏せられたまま購入するということは、非常にリスクの高い行為です」
これまで購入希望者が知ることのできなかった、マンション管理の実情に迫ることができるという点は、他のサイトにはないBORDER5だけの魅力です。
また、このサイトは仲介機能もあわせ持ちます。物件の購入希望者はこのサイトを活用することで、マンションのプロが管理力に太鼓判を押した、優良物件を購入することができるのです。マンションの購入を希望される方が、BORDER5に掲載されているマンションをらくだ不動産を通じて購入される場合は、同社のエージェントが把握しているマンションの管理状況を含めた、総合的なアドバイスを受けることができます。
「BORDER5に掲載している情報は、これまでマンションの価値を大きく左右していた、立地や設備といった条件も当然含みます。そこへ新たに「防災力」「メンテナンス・資金力」といった、マンション管理の運営力を市場評価に加えることで、これからの時代に求められるマンションサイトを目指しています」
リニューアルを経てマンション掲載数が増加
BORDER5は、2019年にいわゆるお試し版として、小規模で運営を開始しました。正式なリリースは2020年。まだまだできたてのサイトです。しかし、2021年の10月には運営方針の転換に踏み切っています。その経緯について大西さんは次のように話します。
「以前までは、掲載を希望するマンションがあっても、診断の結果、管理良好マンションに認定できないという状況が多くありました。認定できないマンションはサイトに掲載することができません。これまで認定できなかった管理組合の方々からは『評価基準が厳しい』『もうちょっと手加減して』といった声も多くありました」
そもそもBORDER5という名称は「管理運営力が卓越したマンションは、全体の上位5%にも満たない」というさくら事務所の考えに由来します。厳しい条件をくぐり抜けて、認定を受けることができるマンションはほんの一握り。サイトに掲載されているマンションは、マンション管理のトップランナー達だと言っても過言ではありません。
しかし、認定を希望する多くの管理組合からの要望を受けて実施した今回の仕様変更では掲載へのハードルが変更されています。
「BORDER5が管理力を測るためにチェックするポイントには、大きく分けて4つの評価項目があります。以前は4つすべての基準を満たしたマンションしかサイトに掲載しない方針でした。しかし、10月のリニューアルでは、4つの項目の内の1項目だけでも満たしていれば掲載可能という方式に変更しています。実際の所、1つの項目だけでも満たすことができるのであれば、かなり管理良好なマンションだと言えるでしょう」
リニューアルによって、以前より多くのマンションを掲載することが可能となりました。サイトを閲覧すると、掲載されているマンションの管理状況について、どの評価項目を満たしているのかや、満たしていない項目の達成度合いも確認することができます。
「まだ4つすべての項目を満たしていない管理組合は、全項目達成を改善へのモチベーションにしていただきたいという意図もあります。全項目達成は、管理組合様とさくら事務所が、二人三脚でより良いマンション管理を目指していくための道しるべのようなもの。掲載させていただく管理組合様へは『今年はここを改善して、来年はここをより良くしていきましょう』といったアドバイスをさせてもらいたいと考えています」
さくら事務所が提案する管理良好マンションの4つの柱
BORDER5が管理組合の評価で指標としている項目は「組合運営力」「メンテナンス&資金力」「コミュニティ&住み心地力」「防災力」の4つ。それぞれどのようなポイントを見ているのかを山本さんに伺いました。
1.組合運営力
「1つ目は『組合運営力』です。判定には『管理組合の総会に一定数以上が出席しているか?』といったことをチェックします」
管理規約の変更などの重要な決議は、総会に一定数以上の参加がないと行えません。そのため、総会への参加率は組合運営の継続性を見るうえで重要な指標です。
「基準は管理組合員の80%以上が出席又は委任状や議決権行使書を提出していること。それよりも高い割合、例えば90%以上が参加していれば、ごく少数の反対意見がある場合でも議決することが可能です。80%以上は管理組合における特別決議を行う場合に必要な要件のため、適正に管理組合の運営を進めていく上では、必須条件と考えても良いと思います。また、参加率が高いほど、総会の公平性が保たれるようになります」
また、管理規約の内容が、国土交通省の標準管理規約以上の内容で整備されているかという点も、総合運営力でチェックするポイントです。
「例えば、理事会役員のなり手について、詳細な規定が決まっているかという点を見ています。マンションに居住する夫婦を例に挙げると、区分所有者である夫が単身赴任でマンション外に住むことになった場合、区分所有者が不在となってしまいます。この場合、従来通りの規定なら妻は理事会役員にはなれません。そのため、『同居する配偶者や一親等以内の親族であれば組合員に就任することができる』といったことが規約に盛り込まれていれば理事会役員となることができ、役員の成り手不足の解消に繋がります。」
それ以外にも、日常的に支出する一般会計について、管理費を滞納している住戸の割合が少ないことや、滞納者への督促をきちんと行っているか、といった点も組合運営力を計る指針であるといいます。
2.メンテナンス&資金力
こちらの項目では、長期修繕計画や、修繕に対する資金(修繕積立金)計画がきちんと組まれているかが重要です。
「積み立てには『均等積立方式』と『段階積立方式』の2種類があります。いずれの方式を採用していても、修繕積立金が足りなくなることがない計画となっているかということが評価のポイントです」
BORDER5の評価では、各種の法定点検への対応も、国の基準より一歩踏み込んだ基準で見ています。法定点検で指摘された箇所の修繕が完了しているかどうかもチェックの対象です。
「よくあるのが消防設備点検で、バルコニーに荷物を置きすぎて避難ハッチが上手く作動しないといった、避難経路が確保されていないというケース。このような問題を指摘された場合に、管理の行き届いた組合なら、改善されたかどうかを最後まで理事が確認します。そのような点が、卓越した管理能力を持つかどうかという判断基準です」
3.コミュニティ&住み心地力
住民同士の関係性構築への取り組みも、運営力の重要な指標として評価の対象としています。
「この項目では、お祭りなど管理組合主催のイベントを実施して、コミュニティ形成に努めているかどうかということや、不法駐車・駐輪がないかどうかの確認を定期的に行っているかを確認しています。さらに、ペットの飼育ができるかどうか、飼育ができるマンションであれば盲導犬・介護犬に関するルールが定められているかも評価の対象です」
イベントについては、マンション規模によって予算も様々なので、不公平にならないよう、規模に応じて異なる開催頻度に対しての評価基準を設けているそうです。
4.防災力
「4つ目の防災力では、法令上定められている防火管理者が選任されているか、年に一度の消防訓練が行われているか、防災マニュアルが定められているかということが基本項目です。加えて、防災マニュアルに基づいて非常時にどの設備を稼働させればいいか、各区分所有者間で安否確認を行う方法が定められているかという点もチェックしています」
以上4つがBORDER5における運営力の評価項目です。
「これらの項目は、できているかどうかを判断するものであり『これができてないからダメ』という減点対象のような項目は存在しません」と山本さんは続けます。
「各診断項目は厳しいながらも、どのマンションであっても絶対にクリアできないというものは設定していません。基準をクリアしていくことを醍醐味として、目標意識を持って取り組んでもらえると嬉しいです」
大西さんは、今後、評価基準に見直しが発生する可能性について、次のように言います。
「市場に迎合する目的で基準を変更する予定はありません。ただし、時代の変遷によってマンション管理に求められる価値観が変化した場合には変更を検討します。基準となる指標の見直しが必要かどうかということは、現在でも定期的に話し合いの場を設けています」
「管理」を評価する、新しいマンション情報サイトの形を提示するBORDER5。このような時代の流れに取り残されないように、これからの管理組合は、高い意識を持って運営力の向上をめざしていくことが必要になっていくでしょう。
(プロフィール)
さくら事務所代表取締役社長・大西倫加さん
広告・マーケティング会社などを経て、2004年さくら事務所参画。 広報室を立ち上げ、マーケティングPR全般を行う。2013年1月に代表取締役就任。2018年、らくだ不動産株式会社設立。代表取締役社長就任。不動産・建築業界を専門とするPRコンサルティング、書籍企画・ライティングなども行っており、執筆協力・出版や講演多数。
らくだ不動産・山本直彌さん
さくら事務所マンション管理コンサルタント・らくだ不動産エージェント。これまでに、不動産仲介会社、大手マンション管理会社を経て、2020年にらくだ不動産へ参画。既存の手法に捉われない提案をモットーに活動中。
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