悪質な手口で修繕費用が高額に!? 大規模修繕工事の談合に注意
大規模修繕を控えた皆さんに向けて、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は、大規模修繕の業者選びで注意したい、悪徳業者の談合について解説していきます!
業者の密約で管理組合が損失を被る
大規模修繕は、実際の工事を施工業者に依頼して進めます。
施工業者の選定は、管理組合が主導して行うケースもあれば、管理会社や大規模修繕工事のコンサルタントに依頼して進めるパターンも考えられるでしょう。
管理組合だけで施工業者を選ぶのは、業者に対する知識の不足や時間が取れないといった理由から困難な場合が多いので、専門業者に一任するのが一般的。しかし、管理会社や大規模修繕のコンサルタント会社を利用して進めると、工事費用を釣り上げる目的で不正行為を仕掛けられる恐れがあるので注意が必要です。
そのような悪徳業者の手口で、注意したいのが談合です。談合とは、本来複数の業者が公平な立場で競った結果で委託先を決定する場面において、あらかじめ裏で業者を決められている不正行為を指します。
大規模修繕で業者が談合を行う目的は、バックマージンです。よくある不正のパターンでは、管理会社やコンサルタントが施工業者と結託して業者選定の取り決めを先立って交わします。実際にその業者へ正式に工事の依頼がされると、受注の報酬として、施工業者が秘密裏に管理会社やコンサルタント業者にバックマージンとしてお金を支払うのです。
それでは、そのバックマージン分の資金はどこから捻出されるのでしょうか? 答えは、管理組合が支払う大規模修繕の工事費用からです。
談合の被害に遭ってしまった管理組合は、適正価格よりも高額な費用で工事を依頼することになってしまいます。その際に支払う余剰分の費用が、施工業者が支払うバックマージンに当てられるのです。
談合があると、管理組合は高額な損失を被ってしまうので、十分に注意しなければなりません。
管理組合には見破りづらい談合の手口
談合は実に巧妙な手口で行われる場合が多く、修繕費用の相場に明るくない管理組合では不正行為を見抜くのは困難です。
工事の施工業者の選定や修繕の資金計画といった管理業務を管理会社やコンサルタントに委託する方式は、「設計監理方式」と呼ばれます。この方式で談合が行われる場合、管理会社やコンサルタントは、はじめに相場よりも著しく安い金額で管理組合へ管理業務を提案する傾向があります。
管理組合は、コスト面のメリットを感じるため、高い確率で提案を受けて管理業務を委託するでしょう。しかし、先に説明した通り業者が談合している場合は、管理業務の委託費用の安さで管理組合がコストカットできる分を上回るほどに、高額な金額で施工業者へ修繕工事を発注する事態へと導かれてしまうのです。
管理業務を請け負う管理会社やコンサルタントは、管理費用を安くした分以上のバックマージンを後で受け取れるため、安い金額で管理業務を受けても結果として得します。
さらに、管理組合が不正に気付けない手口に、管理会社やコンサルタントが複数の業者に見積りを依頼する際に、見積りを出すすべての企業が不正に加担しているケースもあるといいます。
A社、B社、C社が見積もりに参加したと仮定して、「今回はA社、次のマンションはB社、さらにその次はC社」といったように、あらかじめ発注を受ける順番の段取りを整えておき、事前に見積もりの内容を擦り合わせて、今回選定させたい業者が提出する見積もりが、一番魅力的な内容となるように仕組むのです。
管理組合にとっては、複数の業者に見積もりを依頼しての結果であるため、例え高額に感じたとしても、公正な方法で委託先を決めたという実感があるため、なかなか騙されたと気づけないでしょう。
国土交通省が警鐘を鳴らした大規模修繕の不正行為
談合による不正行為が横行したため、2017年には国土交通省が注意喚起を行っています。
この通知の中で、国土交通省は談合の被害を避けるための対策として、大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口の利用を推奨しています。窓口となるのは、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターや公益財団法人マンション管理センターの利用を推奨しています。この様な組織に相談すると、建築士などの専門家に設計監理方式の留意点や事例の紹介等が受けられるので、不正を見抜くための参考となるでしょう。
それ以外にも、第三者の立場の管理会社やコンサルタントに相談するという方法も効果的です。
また、管理組合の作業コストがかかっても問題ない場合は、管理組合自ら業者の選定をするという方法も。管理組合が直接工事を委託する業者と契約を結ぶ方法は「責任施工方式」と呼ばれます。施行業者の選定に外部のコンサルタントが介入しなければ、そもそも談合されるリスクはなくなります。
ただし、繰り返しにはなりますが、管理組合に労力がかかってしまうデメリットは覚えておきましょう。
不正対策で管理組合の資金を守ろう
今回は大規模修繕で起こり得る不正被害、談合について紹介しました。
大規模修繕は、マンションの規模によっては数千万円から、時には億単位の費用がかかる場合もあるので、不正してでも利益を得たいという業者も存在するようです。
お住まいのマンションが被害者を受けないよう、不安を感じるときは相談窓口や第三者の立場のコンサルタント会社などに相談をしましょう。
イラスト:平松 慶
この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!