連載:ついにやって来た!大規模修繕

工事費用が見積りよりも高額に!? 大規模修繕の追加費用発生に注意

2023.12.28
工事費用が見積りよりも高額に!? 大規模修繕の追加費用発生に注意

大規模修繕を控えた皆さんに向けて、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は、大規模修繕で追加費用が発生してしまうケースについて解説していきます!

追加費用が発生するケースは少なくない

追加費用が発生するケースは少なくない

大規模修繕は、事前に工事内容を決めて見積りをとったうえで実施されます。しかし、実際に工事を進めていくと、追加費用が発生してしまうケースが少なくありません。

公益財団法人マンション管理センターが実施した、大規模修繕工事の変動要素についての調査では、調査対象の48社のうち43.8%にあたる21社が工事で追加費用が発生するケースが多いと回答しています。

全体の半数近い業者が回答している結果から、追加費用の発生が決して珍しいものではないといえるでしょう。

追加費用が発生してしまう理由3選

どうして見積りの金額から追加費用が発生してしまうのでしょうか?

ここからは追加費用が発生する3つのパターンを見ていきましょう。

理由1. 必要なタイルの枚数の増加

事前調査の想定よりも多くのタイルが必要になる場合がある

追加費用発生の理由に最も多いといわれているのが、補修・交換するタイルの枚数が事前の想定よりも増えるパターンです。

大規模修繕に向けた建物診断では、修繕の対象となるタイルの数量を割り出すために、外壁タイルの浮きが発生していないかをハンマーなどで壁を叩いて調べる「打診調査」を実施します。しかし、高所にあるタイルは調査が困難なため、目視でしか確認できません。

実際に工事が始まり足場が設置されると、作業員は調査の時よりも近くでタイルの状態を確認できるようになります。その際に、遠目からは気づけなかった劣化が見つかると、修繕の対象となるタイルの枚数が増えてしまうでしょう。

不確定な項目を仮の金額や数量で見積りを出しておき、工事完了後に実際の工事内容に沿った正確な情報で再計算して、費用を確定させる方法を「実数精算方式」といいます。

施工業者の大多数は、大規模修繕の見積りにこの実数精算方式を採用しているため、事前に想定していたよりも補修・交換の対象となるタイルの枚数が増えると、その分工事費用が高額になってしまうのです。

実数精算方式は追加で費用が発生する可能性がある一方で、想定よりも工事が軽微で済んだ場合には減額される場合もあります。

理由2. 想定よりも劣化が進行している

内部を見ないとわからない箇所は想定よりも劣化が進行している場合がある

パターン1のタイルにも通じる内容ですが、着工前の想定よりも実際の劣化状況が深刻な場合は追加費用が発生する可能性が高くなります。

特に気をつけたいのが、外見での判断が難しい内部の劣化です。例えば配管内部の劣化の場合、正確な状態を把握するためには、内視鏡や超音波測定装置といった専門機器で調査しなければなりません。

ほかにも、エレベーターの人が乗り込む「カゴ」以外の部品も、修繕の要不要を判断するためにはメンテナンス会社による点検が必要になります。

施工業者によっては建物診断を無料で実施しているところもありますが、これらの設備の劣化状況は、簡易な診断では把握しづらいので注意してください。

外見で劣化状況の判断が困難な設備は、一般的な耐用年数や修繕時期を前もって把握しておき、そのタイミングが近づいたら劣化状況の調査を実施するのがおすすめです。

ちなみに、エレベーターの耐用年数は25〜30年が目安となっています。配管は亜鉛メッキ鋼管であれば15〜20年、ステンレス鋼管なら30〜40年といったように、素材によって違いが大きいので注意しましょう。

理由3. 災害による破損箇所の増加

調査の後に災害で破損が発生する可能性も

事前に正確な劣化状況を把握できないという理由以外にも、事前調査の後に地震や台風によって建物に損傷が発生し、修繕箇所が増えたために追加で費用がかかるケースもあります。

自然災害による建物へのダメージは対策のしようがない場合も多いですが、そのようなケースも起こり得るという点は覚えておきましょう。

予備費を用意して追加費用に備える

追加費用の発生で困らないようにするためには、事前に「予備費」を用意しておくことが重要です。

予備費は工事費用の見積り額の5%〜10%が目安とされています。ただし、築年数が経過した古いマンションの場合は、深刻な劣化が見つかるケースもあるので、なるべく多めに用意しておいたほうがよいかもしれません。

予備費を確保する際は、後になって不満や疑問の声があがらないように、事前に管理組合に向けて予備の費用を準備する旨となぜそのような費用が必要となるか、といった説明を忘れずにしておきましょう。

また、前述の実数精算方式ではなく、見積りの内容と実際の作業内容に違いが出ても金額が増減しない「責任数量方式」を採用している施工業者に依頼するのも1つの手です。追加料金が発生しないのは、依頼主である管理組合からすると安心できる要素であり、大きなメリットになります。

しかし、責任数量方式では、施工業者が作業内容の変更があっても困らないように、見積りの金額をあらかじめ高めに設定する場合もあるようです。そのため、一概に責任数量方式のほうが実数精算方式よりも優れているとはいえない点は押さえておきましょう。

イラスト:平松 慶

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この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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