連載:ついにやって来た!大規模修繕

大規模修繕に最新技術を! ドローンを使った建物診断のメリットを解説

2023.05.22
大規模修繕に最新技術を! ドローンを使った建物診断のメリットを解説

管理組合員としてマンション管理に取り組む皆さんへ向けて、大規模修繕に関連するさまざまなトピックを解説していくこの連載。今回は、大規模修繕へのドローンの活用について紹介していきます。

ドローンが「空の産業革命」をもたらす

「空の産業革命」と呼ばれるドローンの躍進

近年名前を耳にする機会が多くなった「ドローン」は、無人で飛行する航空機を指す言葉です。

2015年12月の航空法改正で、日本国内でのドローンの飛行に関連するルールが定められ、商用利用可能な環境が整ったため一躍注目が高まりました。

航空法の改正以降、ドローンの技術は大きく進化を遂げています。機体に設置されたセンサーの機能向上によって飛行時の安定性が高まり、これまで以上に安全な飛行が可能となったほか、搭載したカメラで撮影が可能になるなど活用の幅が拡大中です。

すでにドローンによる畑への農薬散布ビジネスを手掛ける業者がでてきているほか、将来的には広域の警備・監視分野での利用が見通されるなど、続々と新サービスが誕生していく土壌ができています。このドローンの大躍進は「空の産業革命」と呼ばれています。

「ドローンとラジコンは何が違うの?」という疑問を持つ人も多くいるのではないでしょうか? 航空法では、ドローンもラジコンも同じ「無人航空機」に分類されています。

しかし、ドローンには、ラジコンにないフライトコントローラーや各種センサーが搭載されています。それらの装置によって、ドローンは障害物を感知して回避したり、上空でも強風などの外的要因を判断して飛行姿勢の制御をしたりと、人が操縦しなくても安定した飛行が可能です。また、飛行経路をプログラムしておけば、設定した地点まで自動で飛行して辿り着く、といった使い方もできます。このようなドローンの「自律性」がドローンとラジコンの大きな違いです。

大規模修繕にドローンが活用される!?

建物診断にドローンを活用する企業が出てきている

空の産業革命の影響は、マンションの大規模修繕にまで及び始めています。近年では、大規模修繕に向けた事前の建物診断にドローンを活用する企業も出てきました。

ドローンのカメラを使えば、目視での確認が困難な高所の劣化状況を簡単に調べることができます。建物の構造上、人が立ち入ると転落してしまうかもしれないような傾斜が激しい屋根などに上がらなくても確認が可能となるため、調査員の危険をともなう点検を行う必要もなくなるでしょう。

さらに、赤外線サーモグラフィーカメラを搭載したドローンであれば、外壁の表面温度の差から劣化状況を判断可能。これにより、外壁タイルの浮きやひび割れ、屋上防水の劣化や断熱不良が発生している箇所を見つけ出せます。

赤外線サーモグラフィーカメラで撮影した画像を見れば、専門知識を持たない人でも劣化が発生している箇所とそうでない箇所の違いがわかるため、診断結果に対して納得しやすくなる効果にも期待できるでしょう。

技術が進化していけば、行く行くは人力で調査が困難なタワーマンション高層階の調査もドローンで実施できると考えられています。

ドローンの活用でコスト削減に効果あり

ドローンを活用すれば建物診断で足場を組む必要がなくなる

建物診断にドローンを活用すると、どれくらい作業を簡略化できるのでしょうか?

ドローンを使用する最大のメリットは、足場を組んだり脚立を使用したりせずとも高所の劣化状況を確認できる点が挙げられます。

従来の建物診断では、建物に劣化が起きていないかを調べるために、足場を組んで調査員が高所に上がっていました。しかし、ドローンで調査したい箇所を撮影すれば、足場の設置が不要となるため、作業負担を大幅に短縮させることが可能となり、時間と費用、双方のコスト削減につながります。

規模の大きなマンションでは、人力での打診調査を実施する場合、外壁全面の調査を完了するまでに数週間かかる場合もありますが、ドローンを使用すれば1日で作業を終えることも可能です。作業にかかる期間を大幅に短縮できる分、大幅なコストカットも期待できます。

足場を組んで調査する場合は、1㎡あたり1800〜2500円が調査費用の相場とされているところ、ドローンを使用した調査では概ね150〜450円が相場といわれています。

ドローンの活用でコスト削減に効果あり

依頼する業者や建物の構造によって、費用感が大きく異なる場合も考えられますが、それぞれの費用相場を比較するとドローンのコストメリットが大きいことが窺えるでしょう。

多大なメリットを持つドローンの利用ですが、マンションの立地によってはすぐ隣に別の建物があり、ドローンが飛行するための十分なスペースがない場合もあるでしょう。そのような場所は、作業員が人力で調査を行うしかありません。

今後、技術が発展していけば、超小型のドローンが開発されて、狭いスペースの調査も可能になっていくかもしれません。現在のところは、マンションの構造に応じてドローンと人の手による調査を適切に使い分けていく必要があるでしょう。

今回は、大規模修繕の実施へ向けた建物診断でのドローンの利用について解説しました。大規模修繕を控えている管理組合さんは、ドローンを使った診断に対応している業者への問い合わせを検討してみましょう。

イラスト:平松 慶

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この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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