連載:ついにやって来た!大規模修繕

大規模修繕で注意したい植栽のケア。 起こり得るトラブルと対策を解説

2023.04.27
大規模修繕で注意したい植栽のケア。 起こり得るトラブルと対策を解説

管理組合員としてマンション管理に取り組む皆さんへ向けて、大規模修繕に関連するさまざまなトピックを解説していくこの連載。今回は、大規模修繕工事を行う際の植栽のケアについて紹介していきます。

大規模修繕では植栽へのダメージに注意が必要

資産価値向上にも効果を持つ植栽

マンションを快適な環境とするためには、景観の美しさも重要な要素です。景観を美しく保つ施策の1つに、敷地内に植物を植えて育てる「植栽」があります。

樹木や草花など、豊かな緑を目にすると心に安らぎを感じる、という人も多いのではないでしょうか。

また、マンションの敷地内にしっかりと手入れが行き届いた植栽があると、資産価値の向上にもつながります。

このように、マンションに付加価値をもたらす植栽ですが、大規模修繕工事を行う際には、植物にダメージが及ばないように注意が必要です。大規模修繕が植栽に与える影響や、行うべき対策について見ていきましょう。

工事で気をつけるべき植物への悪影響

植栽の近くで行う作業は要注意

大規模修繕では、外壁塗装やさび落としなどの作業で、薬品の使用や高圧洗浄を行うことがあります。薬品や高圧洗浄は、草木の葉が枯れる原因となるかもしれないため、作業場所が植栽に近い場合は注意が必要です。

また、高所作業のために設置する足場にも気をつけなければなりません。通常、足場の周囲には、塗料などで周囲を汚したり、物が落下する事故が発生したりするのを避けるために、建物を覆うように養生シートが設置されます。

工事を安全に行うために必要な養生シートですが、覆う範囲内に植栽があると、植物に必要な日光が遮断されてしまいます。戸数の多い大型マンションでは、工事期間が1年近くに及ぶ場合もある大規模修繕。それだけ長く日光を遮られてしまうと、植物が枯れる原因となってしまうでしょう。

植栽に与える影響を防ぐために行うべきこと

剪定作業などはプロに任せると安心

ここからは、大規模修繕工事で植栽に被害を出さないための対応策を紹介していきます。

まず、鉢やプランターなど、比較的簡単に移動させられる状態のものは、工事の影響を受けない場所に移動させましょう。

移動が困難な、地面に直接植えている樹木などについては、別の対応策が必要です。業者によっては、植栽を避けるように足場を組むといった対応が可能な場合もあります。しかし、建物の外壁に枝が触れていて塗り替えができなかったり、どうしても足場設置の妨げになってしまったりする場合には、枝の剪定などが必要です。

樹木の種類によっては、正しい知識を持たずに剪定作業を行ってしまうと、木が枯れる原因となってしまうことがあるので、なるべく植木職人などのプロに依頼しましょう。

また、外壁の塗り替え作業やさび落としを行う際には、養生シートが有効です。塗料や薬品が植物の葉や枝に付着しないように、ビニール養生シートなどで植物を覆って保護します。

建物と植栽の位置関係によっては、枝の剪定などによって工事の前後で植栽を同じ状態に保つことが難しい場合もありますが、上述の方法を実施すれば、植栽への影響をできる限り抑えて工事を進めることが可能です。

業者とのトラブルには要注意

植栽があるマンションでは、大規模修繕工事によって植木が折れてしまい、施工業者とトラブルになる事例もあるため注意が必要です。

通常であれば、作業によって植栽に被害が生じたら、施工業者が弁償を行います。しかし、なかには過失を認めず、弁償に応じない業者もあるようです。

施工業者によっては、「作業を原因として植栽がダメージを受けたり枯れたりしても、復旧にかかる費用は管理組合が負担する」という内容を契約書に記載している場合もあります。「植栽に被害が起きるまで契約内容に気づかなかった……」となってしまってはどうにもならないので、事前に契約内容をしっかり確認しておきましょう。

また、施工業者の選定時に、「生産物賠償責任保険(PL保険)」に加入しているかどうかを確認しておくと安心材料となります。生産物賠償責任保険は、仕事の結果によって人に怪我を負わせたり、物に損害を与えたりした場合に賠償金や弁護士費用の補償を受けられる保険です。この保険に加入している業者であれば、植栽が被害を受けた場合であっても、弁償を受けられる可能性が高いと考えられるでしょう。

管理組合としては、いざという時に大規模修繕によって植栽がダメージを負ったということを証明できるように、修繕作業開始前に植栽の状態を撮影し、記録を残しておくのも重要です。

今回は大規模修繕工事が植栽に与える影響について解説してきました。

マンションの美観のために重要な意味を持つ植栽ですが、大規模修繕時にはダメージを受けて価値が損なわれてしまう可能性があるので注意しましょう

植栽に力を入れているマンションでは、施工業者の選定時に、植栽への対応実績を多く持つ業者を選んでおけば、植栽への被害を抑えることができるでしょう。

イラスト:平松 慶

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この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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