連載:ついにやって来た!大規模修繕

大規模修繕の新常識!? 足場が要らない「無足場工法」とは?

2023.03.31
大規模修繕の新常識!?  足場が要らない「無足場工法」とは?

大規模修繕を控えた皆さんに向けて、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は、大規模修繕の現場で採用される機会が増加中の「無足場工法」について解説していきます!

足場要らずの無足場工法

無足場工法に対応する業者が増えている

大規模修繕における塗装工事や防水工事など、建物の外側を対象に行う作業では、一般的に足場の設置が必要です。

足場があることで、高所での作業が可能になったり、作業員が安全に作業できたりと、工事を進めるうえでのメリットが得られます。

しかし、近年では足場を設置せずに作業可能な「無足場工法」という工法がでてきました。以前は足場を組まなければ実現できなかった作業も、無足場工法で対応できるかもしれません。

今後、大規模修繕を控えている管理組合は、工事を実施するうえでの選択肢の1つとして、無足場工法にどのような特徴があるかを覚えておきましょう。

無足場工法にはロープとゴンドラの2つの方法がある

高所での作業が必要となるマンションの修繕。足場を設置せずに、どうやって作業を行うのでしょうか?

ここからは無足場工法の2つの実施方法をみていきましょう。

ロープアクセス

作業員が屋上から吊り下がった状態で作業する

1つめの方法は、特殊なロープを付けた作業員が屋上から吊り下がった状態で作業する方法です。

ロープに吊られての作業風景は、映画の中でスパイが建物へ侵入を試みるシーンを彷彿とさせる危険な作業に感じられますが、作業員はハーネス(ロープを結ぶための安全ベルト)を装着し、そこにロープを通しているため、ロープが切断しない限り落下の危険はありません。

ゴンドラ

作業員が乗ったゴンドラを屋上から吊り下げて作業する

ゴンドラを使用する方法では、作業員が乗ったゴンドラを屋上から吊り下げて作業します。ゴンドラはリモコン操作で上下左右に移動可能です。

高層ビルの窓拭きなどでも、ゴンドラが使用されているケースが多いので、見覚えがある人も多いのではないでしょうか。

ロープアクセスよりも安定した状態で作業できるので、作業効率が高く、修繕対象箇所が広範囲に及ぶ場合に有効だとされています。

無足場工法のメリット3選

足場を設置しないと、どのようなメリットを得られるのでしょうか? 従来の足場を設置する工法と比較して、無足場工法のメリットを紹介していきます。

【メリット1】 足場の設置にかかるコスト・時間を削減できる

足場を組む工法では、足場の設置と解体作業が必要です。

マンションの規模や実施する工事内容にもよりますが、一般的に足場の設置・解体には高額な費用がかかります。足場の組み立て工事全体にかかる費用が、大規模修繕における全総工費の約2割に及ぶ場合もあるようです。

無足場工法を採用した場合は、足場を組み立てる作業を省略できるため、その分費用を抑える効果に期待できるでしょう。

また、足場の設置・撤去がなくなることで工期も短縮されます。

足場工事にかかる目安は、総縦戸数30〜50戸のマンションで10日から2週間、100戸を超える大規模マンションでは、2〜3週間かかるとされているため、この作業をカットできるのは大きなメリットです。

【メリット2】工事期間中に防犯リスクが高くならない

修繕作業に役立つ足場ですが、足場があることでマンションの防犯機能が低下するというデメリットも。足場が組まれたマンションでは、足場からベランダへ侵入することが容易となるため、空き巣や不法侵入といった犯罪行為を企む者から狙われやすくなるといわれています。

その点、足場を組まない無足場工法は、大規模修繕の実施期間であっても侵入しやすくなりません。マンションの居住者が、不安に感じる要素を少なくできるでしょう。

【メリット3】足場を組めない狭い場所で作業ができる

一般的に、足場を設置するためには60cm以上の幅が必要です。そのため、隣接する建物との間に60cm以上のスペースが空いていないマンションでは、足場の設置ができません。

そのようなマンションでも、無足場工法なら作業ができる場合があります。

ただし、隣の建物との間のスペースが40cmに満たない場合は、無足場工法でも作業が難しいかもしれません。

無足場工法のデメリット

ここまで無足場工法のメリットを紹介してきました。一方で、無足場工法にもデメリットはあります。どのようなデメリットがあるのかみていきましょう。

【デメリット1】マンションによって実施できない場合がある

ロープアクセスとゴンドラのいずれの方法の場合も、屋上に専用の器具を設置して人や器具を吊り下げます。

屋根の形状が三角屋根になっていたり、一部が突き出していたりといった構造のマンションでは、器具を設置できないかもしれず、その場合は無足場工法を実施できません。

また、階数が20階を超える高層マンションは対応不可としている業者もあるようです。

そのようなマンションの場合は、今後も従来と同じ足場工法で工事を実施していくことになるでしょう。

【デメリット2】対応できる業者の数が少ない

無足場工法を実施可能な業者は、少しずつ増加傾向にあります。しかし、日本ではまだまだ新しい工法のため、対応できる人員が多くはおらず、業界全体でみると取り入れている業者は少ない現状です。

そのため、「無足場工法で工事をお願いしたいけれど、対応可能な業者が全然見つからない」といったことも起こり得るでしょう。

【デメリット3】高所の作業状況のチェックができない

修繕工事をした後は、管理組合で施工状態のチェックを行うと安心です。

通常の足場工法では、足場を利用することで高所のチェックも可能ですが、足場がない無足場工法では高所の確認はできません。

無足場工法を希望する管理組合は、高所の施工状態は確認できないというデメリットも考慮しておきましょう。

今回は、足場の要らない無足場工法について解説してきました。足場の設置がないと、多くのメリットを得られるので、これから大規模修繕を控えている管理組合は検討してみてはいかがでしょうか?

まだまだ対応できる業者は少ないので、無足場工法を希望する場合は早い段階から業者探しをしておきましょう。

イラスト:平松 慶

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この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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