実は重要な理事会の引継ぎ! 後任役員を困らせないための方法を解説
マンション理事会のメンバーは一定期間ごとに入れ替わります。そのため、メンバー交代のタイミングでは、理事会の活動や重要事項などの引継ぎが求められます。
適切な引継ぎがされない場合、後任の役員は理事会の現状を把握できないまま、手探りで活動を進めなければならないでしょう。
この記事では理事会の活動における、前任者から後任者への引継ぎについて解説していきます。
任期満了が近づいたら引継ぎの準備をしよう
理事会の活動は、休日に時間を取られる場合も多く、理事会のメンバーになるのを嫌がる人は少なくありません。そのため、交代制にして不公平感をなくすのは大切です。
管理規約に特別な定めがない限り、理事会には任期があります。任期は多くの管理組合で1年か2年に設定されており、その期間を全うしたメンバーは管理組合員の中から新しく選任されたメンバーと交代する仕組みです。
しかし、任期満了のタイミングで理事会のメンバーを総入れ替えする場合、それまで経験を積んできた人員が一気にいなくなり、代わりに就任したてのメンバーだけが残されるため、理事会の活動にとっては非効率な仕組みに感じられます。
多くの場合、新しく選任される人はマンション管理に関する知識や経験を持っていません。そのため、新メンバーだけで理事会の活動を進めようにも、何をするべきかわからないでしょう。
このような不安な状況を解消するために、新旧の理事会メンバー間での引継ぎが必須です。現役の理事会役員は任期の終了時期が近づいたら、引継ぎの準備をしなければならないと憶えておきましょう。
引継ぐべき内容は主に3つ
理事会では、マンション管理に関連するさまざまな活動に取り組みますが、具体的にどのような内容が引継ぎの対象になるのでしょうか?
ここからは一般的な引継ぎの内容を解説していきます。
重要品の保管場所の引継ぎ
重要な物品や書類の保管場所は、必ず新しく着任した役員に共有しなければなりません。通帳や印鑑、集会室の鍵などがどこにあるかわからなければ、理事会の活動に支障をきたすので要注意です。
特にマンションの管理規約は、区分所有法で管理者が保管・管理すると定められています。ここでいう「管理者」とは、通常であれば理事会の理事長が務めます。
管理者は、区分所有者や住戸の購入希望者などの利害関係人から管理規約の閲覧請求があった場合に、請求に応じて規約を閲覧させなければなりません。そのため、理事長は規約の保管場所を知っておく必要があるので、忘れずに引継いでください。
役員の業務内容の引継ぎ
理事会には理事長以外に会計、監事などの役職があります。それぞれの担当者は新しく役職に就く役員に具体的な業務内容や注意事項などを引継ぎましょう。
懸案事項
理事会が抱える懸案事項も引継ぎの対象です。
例えば、理事会で把握している住民同士のトラブルや管理費の滞納などがある場合は、任期満了した後も引き続き課題として残り続けるため、新しいメンバーにも共有する必要があります。
スムーズな引継ぎには引継書の作成が効果的
具体的な引継ぎの方法で重要なのが引継書の作成です。引継書には前述の引継ぎ事項を項目ごとにまとめて記載します。
現実としては、多くのマンション理事会が引継書の作成をしていません。しかし、引継書を作成しておくと、後任の役員に理事会における重要事項を伝えるとともに、引継書作成が習慣化しやすくなるので、運営の効率化に非常に効果的です。
また、新しい役員が決まったタイミングで、新旧メンバーが合同で理事会に参加する機会を設けると、一層高い効果を得られます。
新任の役員から前任者に引継書で疑問に思った点を質問したり、新旧防災担当者が避難ルートの確認で一緒にマンションを巡ったり、といった機会を用意できれば、書面だけの引継ぎよりも理解度が高まるでしょう。
一度実施しておくと、次の役員が任期を終えて交代する時に、自分たちも前任者から受けた引継ぎの方法を模倣して次の役員へバトンを渡す行動につながります。マンション管理の良い習慣を継承させていくためにも、ぜひ取り組んでください。
メンバーの半数しか交代しない仕組みはスムーズな運営につながる
なかには、長年にわたって同じ人物が理事長を務めて、管理業務のほとんどを一手に引き受けているマンションもあります。
そのような理事会では、引継ぎは不要だと考えるかもしれませんが、病気や事故などで理事長が退任せざるを得ない状況になってしまえば、ほかの誰にも理事会運営の方法がわからず、管理が滞ってしまうでしょう。そのような事態に対応するためにも、ワンマン体制の理事会では一層引継ぎを意識しておく必要があります。
マンションによっては、理事会の任期を2年と定めて、1年ごとにメンバーの半数だけが交代する仕組みを取り入れている管理組合もあります。この仕組みでは、常に半分のメンバーは1年間の活動実績を持つ状態を保てるため、引継ぎの内容に不備があっても困ることは少ないでしょう。
このように、理事会の体制によって、引継ぎの重要度に差があります。引継ぎを意識した仕組みを用意できていない管理組合は、なるべく早く引継ぎしやすい体制を整える準備を進めましょう。
まずは引継書の作成から始める
引継ぎが不十分な場合、理事会の活動に支障をきたして、管理組合全体へマイナスの影響を及ぼすかもしれません。
これまで、理事会の引継ぎにしっかりと取り組んでこなかった管理組合は、次回の交代タイミングに向けてまずは引継書の作成から始めましょう。
イラスト:大野文彰
この連載について
【連載】理事会役員超入門
マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!
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