連載:理事会役員超入門

マンション管理費が下がる?自主管理のメリット・デメリットを解説

2023.10.06
マンション管理費が下がる?自主管理のメリット・デメリットを解説

マンションの管理業務は、管理会社へ委託する方法と自主管理の大きく2つに分けられます。自主管理をすると管理会社へ支払う管理委託費を削減できますが、管理の手間がかかったりマンションの資産価値に影響したりすることも。

自主管理を導入するなら、メリットとデメリットの双方をよく理解しておくことが大切です。今回はマンション自主管理の実情について詳しく見ていきましょう。

マンションの自主管理とは?

区分所有者が自ら管理業務を担う方式が自主管理

マンションの自主管理とは、管理会社の力を借りずに、管理組合が自ら管理業務を担う方式です。大規模修繕工事の見積もりや契約を直接行ったり、当番制で共用部分の清掃をしたりと、居住者同士が協力して業務を分担します。

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」によると、管理組合がすべての管理事務を行っている自主管理型のマンションは全体の6.8%と少数派。すべてを管理会社に任せている全部委託型のマンションが74.1%と大半を占めています。

マンションを自主管理するメリット

【メリット1】管理費を抑えられる

最大のメリットは管理費の節約

自主管理の最大のメリットは、やはり管理会社へ支払う管理委託費が抑えられる点です。共用部分の清掃や草取り、会計、修繕工事の手配など、住民が労働力を提供することによって、月々のランニングコストが抑えられる傾向にあります。

また自主管理の場合は建物の修繕をするときなど、その都度管理組合自身が見積もりをとることになります。複数の業者から見積もりをとって、慎重に比較検討することで、適正価格で工事発注がしやすくなるメリットもあるでしょう。

【メリット2】住民の意識が高まる

マンション管理を管理会社任せにすると、住民の「自分で住環境を整える」という当事者意識が希薄になりがち。自主管理をすることで、一人ひとりがマンションの住み心地をよくしようという意識を持ちやすくなるのも大きなメリットです。

修繕積立金の値上げを検討する際も「マンションの資産価値を維持するためだ」というビジョンを住民同士で共有できれば、合意形成がしやすくなります。ゴミ捨て場や駐輪場といった共用スペースも、なるべく綺麗に使おうという意識が高まるかもしれません。

【メリット3】住民同士のコミュニケーションが密になる

自主管理をするマンションでは住民同士で顔を合わせたり連絡をとる機会が多くなる

マンションは災害に対して建物というハード面は強いものの、住民同士のコミュニティというソフト面が弱いといわれることがあります。地震や台風といった災害時に居住者同士で助け合うためには、普段からつながりを持っておくことが大切です。

自主管理をすると総会の運営や各種連絡で住民同士が顔を合わせたり連絡をとったりする機会もおのずと増えるため、いざというときに助け合えるコミュニティが機能しやすくなるのもメリット。住民間のあいさつや会話が増えることで、空き巣や車上荒らしといった犯罪被害が起きにくい環境づくりにもつながります。

マンションを自主管理するデメリット

【デメリット1】管理業務の手間がかかる

清掃などを当番制で行う場合、外注費は抑えられますが、住民一人ひとりの負担が大きいのがデメリット。当初は問題なく業務が回っていても、高齢化によって清掃作業が難しくなってきたり、役員のなり手がなかなか見つからなかったりすることもあるでしょう。

そのため基本的には管理会社を通さずに自主管理の形をとりながらも、部分的な業務を外部の専門業者へ直接発注して省力化する方法も検討するとよいでしょう。エレベーターなどの設備の保守点検を行う業者はもちろん、清掃業者や植栽管理業者などさまざまな専門業者があります。

また管理組合の運営において、役員が集まって話し合ったり情報交換したりと、コミュニケーションコストがかかりすぎると感じるケースもあるでしょう。そんなときはZoomやチャットツールなどをうまく活用することで、集まって話し合う時間も短縮できるかもしれません。

【デメリット2】お金の徴収や管理が難しい

そしてマンションの自主管理における心配事の一つがお金の管理です。住民から管理費や修繕積立金を集めて、支出や収入を正しく管理し続けるのはなかなか大変。ときには管理費や修繕積立金の滞納者がでることもありますが、同じマンションの住民同士で督促をするのは気が引けるという悩みもあるでしょう。

また財政状況を把握するには「貸借対照表」が必要ですが、そのためには難易度の高い「複式簿記(発生主義)」での帳簿付けが原則です。単にお小遣い帳のように入出金を記帳するだけではないので、経理や簿記の知識が必要になります。そのため会計業務のみ管理会社や税理士などに委託することで、会計担当者の負担を軽減しているマンションもあります。

【デメリット3】資産価値が低下する恐れがある

管理組合はマンション管理のプロではありません。日常清掃で行き届かない部分がでてきたり、適切な修繕工事ができなかったりするリスクもあるでしょう。建物の清掃や修繕がきちんと行われないと、建物自体や設備の劣化につながることもあります。

マンションの資産価値を維持し続けるには、マンション管理の専門知識や最新情報を頭に入れたうえで、どのように管理業務をしていくべきか話し合うことが大切です。自主管理が軌道に乗るまでは、マンション管理士など専門家のサポートを受けるのもよいでしょう。

マンションの自主管理の導入は慎重に!

管理会社への委託費の負担が大きすぎる場合、選択肢の一つとして自主管理という方法が考えられます。管理費を抑えられるのはもちろん、住民の管理への意識を高める効果もあるかもしれません。一方で専門知識が必要な業務も多いため、管理方法を誤って資産価値低下につながる恐れもあります。

そのため自主管理を選ぶとしても、外部の専門家に頼れる部分は頼るのがおすすめです。必要に応じて専門業者やマンション管理士などの手を借りながら、円滑な自主管理を目指しましょう。

イラスト:大野文彰

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この連載について

【連載】理事会役員超入門

マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!

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