マンション管理組合の防災マニュアル作成ガイド!盛り込む情報を解説
「マンションの防災マニュアルはどうやって作るの?」「どんな情報を盛り込めばいいのかわからない…」
そう思っている人は多いかと思います。今回はマンション管理組合における防災マニュアルの作成や、どんな情報を盛り込めばいいかを紹介します。
マンション管理組合の防災マニュアルとは?
防災マニュアルとは防災活動のルールを示すものです。
マンションで想定される災害には主に巨大地震が考えられ、管理組合ではそれに対して建物規模や構造、各世帯の事情を考慮して、防災マニュアルを作成していきます。
2011年に発生した東日本大震災後、マンションにおける防災力強化の必要性が高まってきています。
さらに今後は大規模となることが想定される「南海トラフ巨大地震」「首都直下型地震」が高い確率で発生するとされており、マニュアル作りは急務と言えるでしょう。
防災マニュアル作成前に行うこと
耐震性の確認
防災マニュアルを参考にして、住民が防災活動にどれだけ注力しても、地震により建物自体が大きく損壊する事態になれば、自力で被害を完全に防ぐことは難しいでしょう。
そのため、まずマンションの耐震性能を検証しましょう。具体的には、マンションが建築される際に行われた建築確認の時期を調べ、その時期が1981年6月以降か否かを確認します。
なぜなら当該年月に建築基準法の改正によって構造強度の基準が強化されたため、それ以前に建築確認を受けたものは耐震基準を満たしていないことが多く、大地震で大きな被害を受ける可能性があるためです。
もしもマンションが、1981年6月以前に建築確認を受けたものであれば、耐震診断が必要です。これは設計図を見たり建物を調査する必要があるなど、専門的な知識が必要なので事業者に委託します。
そして診断結果により耐震性能が不足していた場合は、必ず耐震改修工事を行いましょう。工法の選定にあたっては専門家の助言を受けつつ、マンションの状況や工期・施工費とともに検討していきます。
中心人物の選定
マンション居住者の中から、防災マニュアルを策定し、災害時には主導して実践する中心人物を選定しましょう。
その際は、理事会や防災専門の委員会、自治会役員、あるいは防災の知識や経験のある有志の方々の中から選ぶと良いでしょう。
その際は役割を一方的に押し付けるのではなく、また、マンション住民の理解を得て決めることが大切です。
防災組織の立ち上げ
中心人物を選定したとしても、災害時にはそれ以外の居住者も協力して対応する必要があります。そのため、各自の役割を決めるために防災組織を立ち上げて、班分けを行いましょう。
まずは中心人物が防災組織立ち上げについて、総会での合意を得ます。その後、組織のチーム編成案を作成していきましょう。一例として、次のような班構成が考えられます。
・本部長、副本部長:全体の指揮や関係組織への連絡を行う
・情報班:安否確認や被害確認を行う
・消火班:初期消火や火災周知を行う
・救助救護班:救助や応急手当、搬送を行う
・避難誘導班:避難誘導や避難補助を行う
・生活班:トイレ対策やごみの管理を行う
なお、大規模なマンションでチーム編成を検討する場合、マンションのフロア・棟によって、各班からバランス良く人員を輩出することが重要です。
最後に、編成案を作成したら住民へ配布を行い、意見を募りましょう。集まった意見を集約したらそれを元に修正案を作成し、管理組合に提出。承認を得て、組織が可能となります。
防災マニュアルに盛り込む要素
緊急用居住者名簿
緊急用居住者名簿とは、災害時の安否確認に必要となる居住者名簿のことです。災害時の安否確認で必要となるため、可能な限り作成しましょう。
名簿には世帯主の氏名と携帯電話番号・メールアドレス、家族の人数、年代などの情報を記載します。情報が古くなると意味が薄れるため、定期的な更新も必要です。
保管方法の規約も作成する
名簿は個人情報となるので、保管・利用方法に関して厳格な規約を作成しておくことが大切です。
具体的には「利用目的」を明確にし、「管理する人間」「保管場所」「閲覧方法」「部外者の閲覧を禁止する」などを規約に定めておくとよいでしょう。
また、居住者に納得して提出してもらうと同時に、提出を強要しない配慮が必要です。
食料・飲料水の備蓄方法
耐震基準を満たしたマンションは、大地震が発生しても建物の倒壊リスクが少ないため、建物内にとどまって被災生活を送る在宅避難が基本となります。
その際に欠かせないものが水や食料の備蓄です。管理組合としても、ある程度の備蓄を準備するために、その分量や保管方法・場所をマニュアルに明記しましょう。
なぜなら、もしも備蓄が少なく水・食料が不足した世帯があった場合、組合として供出する必要があるからです。
しかし組合として、想定される避難期間中に全世帯を賄える備蓄を常備しておくことは、費用の面から現実的ではありません。そこで、組合がどれくらいの備蓄を用意するかは、住民とあらかじめ意見交換して、各世帯で最低限準備する量を決めた上で、それと照らし合わせて定めましょう。
なお各世帯でも最低限の備蓄が必要という認識は、住民同士で周知を推進して入念に共有しておく必要があります。世帯によっては「管理組合で食料や飲料水を備蓄しているから安心」と考え、防災意識が希薄になる可能性があるためです。
参考までに、備蓄量を決める目安として、居住者1人1日あたり飲料水3Lを7日分、食料品7日分とみておきましょう。水については飲料水のほか、生活用水も必要になることに注意しましょう。
防災用具のチェックリスト
備蓄と同様、災害備品を組合・各世帯で準備しておく必要があります。
備えておくべき災害備品には次のようなものが考えられます。
・飲料水
・非常食
・カセットコンロ
・簡易トイレ
・常備薬、救急セット
・携帯ラジオ
・懐中電灯
・ビニールシート
・毛布
避難生活における注意点
在宅避難時には、電気・水道・ガスといったライフラインや、エレベーターなどに問題が生じ、住民に二次被害を及ぼす危険性があります。この点に注意した行動を住民にしてもらうよう、防災マニュアルで適切な行動様式を記載しましょう。具体的には次のようなものが考えられます。
・電気:通電火災が起きないようにコンセントから、電気製品の接続を断つ
・水道:上下階の排水設備が壊れている場合があるので、トイレなどで安易に排水しない
・ガス:ガスの匂いを感じたら窓を開けて換気する
・エレベーター:余震などが起きると、閉じ込められる恐れがあるので使用しない
なお、火災などの二次被害が実際に発生したときや、行政による避難勧告が発令されたときにはマンションから避難する必要があります。その場合の避難方法や避難先についても、マニュアルに記載しておきましょう。
避難訓練の実施も検討する
防災マニュアルを作成したとしても、実際にその通りに行動できるとは限りません。住民と協力して避難訓練を実施し、災害時に備えましょう。
避難訓練を実施することで、想定していなかった新たな問題を発見することができます。それを防災マニュアルに反映することで、より効果の高い防災活動が可能となるのです。
なお訓練の際は、火災や地震などあらゆるタイプの災害に対応できるよう、状況別に実施できることが理想です。
防災マニュアルはしっかり用意しておこう
マンション防災の必要性は高まっており、マニュアルの作成は急務です。
作成の際は建物の耐震性を確認し、防災組織づくりを行ったうえで、備蓄品の量や緊急用居住者名簿など防災に必要な様々な要素を盛り込みましょう。
そしてマニュアルを作成するだけでなく、状況別に避難訓練を実施して、災害時は適切に行動できるようにしたいですね。
イラスト:大野文彰
この連載について
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マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!
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