大規模修繕の締めくくり! 竣工検査について解説
大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回の記事では、大規模修繕工事が完了した後に行う検査について紹介します。
検査が終わるまでが大規模修繕
大規模修繕は、準備や実際の工事に長い期間を要するもの。準備段階から携わってきた人であれば、修繕工事完了後には大きな達成感を得られることでしょう。
しかし、「工事が済んだら完了」というわけにはいきません。大規模修繕の仕上げとして、工事が予定通りに行われているか、施工内容に不具合が無いか、といったことをしっかりと確認することも必要です。
このように工事完了後に、施工内容の確認を行う作業を竣工検査といいます。竣工検査は、どのようにして進めていくのかを見ていきましょう。
気になる点は残さず指摘する
竣工検査では、大規模修繕で工事を行った施工箇所を管理組合立ち会いの下で確認します。管理組合側の参加者は、理事会や修繕委員会から数名を選出して立ち会うことが多いようです。
検査を行う際に見るべき主なポイントは、次のようなものがあります。
・予定していた箇所の修繕が適切に行われているか
・施工に不備がないか(防水シートにムラがないか、外壁タイルに浮きがないかなど)
・施工箇所に汚れがないか
・工事のために一時撤去したものが、元通りに置かれているか
これからも暮らすマンションなので、ほかにも気付いた点や気になる点があれば、積極的に指摘・質問する心構えで取り組みましょう。検査の結果、不備がみられる箇所が発覚した場合は、追加で修繕を行います。
注意しておきたいのが、高所の修繕箇所。高い位置の確認は、足場がなければ見ることができないため、足場の解体に先だって部分的に検査を実施することもあります。高い位置の修繕状況も漏れなくチェックするために、足場を解体するタイミングを事前に施工業者と確認し、日程を決めておくと良いでしょう。
知識不足が不安なら専門家に依頼する方法も
「工事に手抜きや不備があったら、自分は必ず見抜くことができる」と自信を持って言える管理組合員は少ないのではないでしょうか。専門知識を持たない管理組合だけでは、施工の良し悪しを正しく判断することは難しく、せっかく時間を取って行う竣工検査が単なる形式的なもので終わってしまうかもしれません。
そのような不安を解消するため、近年では工事の専門知識を持つ業者に竣工検査への立ち会いを依頼する管理組合が増えています。業者に依頼する以上、立ち会いの費用は当然発生してしまいますが、プロの視点で確認してもらえるというメリットは大きいのではないでしょうか。
業者に竣工検査への立ち会いを依頼する際には、業者選びに注意が必要であることを覚えておきましょう。
施工箇所に手抜きや整備不良があった場合、そのことが発覚すれば施工業者は不利な立場になります。そのため、もしも竣工検査に立ち会う業者が、施工業者と関連を持つ企業である場合、工事内容に落ち度があっても身内を庇って適切に指摘してくれないかもしれません。だからこそ、竣工検査に立ち会う業者を選ぶ際には、施工業者と関係性を持たない、公正な第三者といえる企業に依頼することが鉄則です。
竣工書類は無くさないように保管
竣工検査が完了したら、施工業者から大規模修繕の関連書類を受け取りましょう。書類には以下のものがあります。
・工事完了届(完成工事引渡書)
・外壁補修図面
・変更仕様書(追加・変更工事など)
・施工写真
・施工計画書
・各戸の補修確認書控
・保証書(施工保証書等)
・アフターメンテナンス計画書
・打ち合わせ議事録
・使用材料に関する資料(カタログ、使用材料一覧など)
これらをまとめて竣工書類と呼びます。竣工書類は次回の大規模修繕の時に、過去にどのような工事が行われたかを知るために役立つ資料です。無くさないようにしっかりと保管しておきましょう。
なかでも、特に重要なのが保証書。後々、修繕した箇所に不具合が見つかったとしても、保証書が無ければ修繕が有償となってしまうことがあるので注意が必要です。
保証期間は、鉄部等塗装工事が2年、外壁塗装工事であれば5年、といったように、施工内容によって異なる場合が多いということも、あわせて覚えておきましょう。
大規模修繕後は定期的にアフター点検も行おう!
竣工検査は人の手で行うため、どうしても100%の精度で行うことは難しいもの。施工直後にはわからなかった欠陥が、時間が経つことで顕在化してくる場合もあります。
現代の大規模修繕は12年周期で実施することが目安とされています。つまり、一度工事が完了すると、ほとんどの場合、次回の大規模修繕までに10年以上の期間が空くということです。
長い期間何もしないでいると、気付かないうちに劣化が進行してしまい、思いもよらぬトラブルを招くことになるかもしれません。そういったトラブルを防ぐために、次回の大規模修繕までの間に、修繕した箇所の点検を定期的に実施していくことが重要です。この点検はアフター点検と呼ばれます。
多くの施工業者では、アフター点検は大規模修繕のアフターサービスの1つとして含まれています。実施する時期は、大規模修繕終了後から、1年後、3年後、5年後、10年後といった形で、数年に1度のペースで行われることが一般的。アフターサービスの内容や点検の周期は、業者や契約内容によって異なります。自分のマンションの契約がどうなっているかは、保証書や契約書などで確認しておきましょう。
点検によって、早急に対応が必要な不備が見つかった場合、工事費用が有償となるか、無償となるかは、保証期間によって決まるため要注意。工事の保証期間は、施工内容によってバラバラです。各修繕箇所ごとに、いつまでが無償で修繕できる期間なのかということも、保証書を見てしっかりと把握しておきましょう。
以上、今回は大規模修繕の締めくくりに実施する竣工検査について解説しました。
せっかく苦労して行う大規模修繕なので、後々後悔が残る形で終わらせたくないもの。そのためにも、竣工検査では気になった箇所は逃さずに指摘するように心掛けて取り組みましょう。
イラスト:平松 慶
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この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!