マンションの共用部分に私物が放置…… 対処法と予防法を解説!
マンションの共用部分は、居住者同士が共同で利用するスペースです。しかし、一部の居住者が共用部分である廊下や玄関前に私物を放置して、居住者同士のトラブルに発展してしまうケースがあります。
そこで今回は、マンションの共用部分に私物が放置されている場合の対処法や、私物を置かれないための予防法について解説していきます。
マンション共用部分に私物を放置するのは管理規約違反
そもそも、マンションの共用部分に私物は置いてもよいのでしょうか。国土交通省が提示しているマンション標準管理規約のコメントでは「専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められない」とされています。多くのマンションでは、管理規約に共用部分への私物の放置を禁止する文言を盛り込んでいます。ドアの前の廊下に傘立てやベビーカーを置くことも違反です。
また、消防法を基に自治体ごとに制定された条例でも、共用部分の管理について定められている場合があります。例えば東京都の「火災予防条例」では、マンションなどの建築物に火災の予防や避難の妨げになる物を置くことを禁じています。
ただし、共用部分に放置されている物とはいえ、他人の所有物を勝手に処分すると民法第709条に基づいて損害賠償を請求されてしまうかもしれません。私物の放置を見つけた際は、管理会社や賃貸のオーナーに報告して解決を図りましょう。具体的な対応方法については後述します。
私物放置による3つのリスク
多くのマンションの管理規約で、違反行為とされている共用部分への私物の放置。ここからは、私物放置にどのようなリスクがあるのかを見ていきましょう。
【1】他の住民からのクレームに繋がる
一部の居住者による私物の放置は、居住者同士のトラブルの元になりかねません。特に玄関前や廊下は多くの居住者の目に止まりやすいため、私物が置かれている状況のまま何の対応もないということでは、居住者からクレームを招くことにもなるでしょう。
また、私物を置いている居住者が「注意されない」と感じて行為がエスカレートしたり、他の居住者も同じように私物を置いたりしてしまうことも懸念されます。
【2】犯罪に利用される可能性がある
私物が放置されている状況は、防犯の観点からも望ましいとは言えません。
放置された私物が盗難の被害に遭う可能性はもちろん、不法侵入者の足場として利用される可能性もあります。
さらに共用部分内の視界が悪くなるため、放火など盗難以外の犯罪が起こるリスクが高まるのです。
【3】避難経路が塞がる
私物が通路に放置されていると火災や地震が発生した際、避難の妨げになります。
マンションは廊下だけではなく、バルコニーも緊急時の避難経路として使用することがあります。バルコニーに物を置くこと自体は問題ありませんが、避難ハッチの上や降下場所、隔壁板付近に私物が置いてあると有事の際に避難できなくなってしまう可能性も。
私物を撤去してもらうための2つの方法
ここからは、マンションの共用部に私物が放置されているときにどのように対処したら良いのかを解説していきます。
【1】管理会社を経由し注意してもらう
居住者が直接私物を撤去したり、放置している居住者に直接注意したりするのは、逆恨みによるトラブルに発展する恐れもあります。そこで、私物が放置されて困っている時は、管理会社やオーナーを通して居住者の説得にあたりましょう。
管理者は警告文を掲示板に掲示したり、該当居住者に直接注意したりできます。警告文には一定期間を過ぎても放置が続く場合には撤去する旨も併記しておくと、警告の効果が見られない際の対応がスムーズです。
さらに、通報する際に誰が連絡したのかを伏せるように併せて頼めば、トラブルに巻き込まれる確率をさらに低くできます。
【2】警告の効果が見られないときの対処法
管理会社やオーナーが警告したにもかかわらず、所有者が私物を任意に撤去しない場合は、管理者側で撤去して保管するという方法を取ることもできます。
撤去した際は、引き取り方法と期日に関するアナウンスを掲示します。保管期間は1週間ほど設けておけば充分でしょう。
ただし、オーナーが保管しておくことが難しい大型家具などの場合は、業者に撤去や処分を依頼しましょう。その場合は警告期間を2〜4週間と長めに設けておくことで、その後の処分を正当化しやすくなります。さらに、処分にあたって費用が発生した際は、業者の費用だけではなく督促にかかる時間的コストも考慮の上、私物を放置した居住者に請求することが可能です。
共用部分の私物放置を予防するには
共用部分の私物はマンションの管理者側からの働きかけで対処しますが、同様に予防も管理者側からの呼びかけなどで行うことができます。
私物の放置を予防するには、3つの方法があります。
【1】私物放置の禁止を告知する
私物放置の予防には、居住者全体への周知が重要です。マンション内の掲示板に私物放置禁止の貼り紙を掲示したり、各居室のメールボックスに案内所を投函したりと多くの人の目に止まるように行いましょう。
掲示物や案内書を作成する際には「私物放置を禁止する理由」や「放置したときの対応」「撤去するまでの期間」を記載すると、より効果的に居住者に告知ができます。
【2】処分事例を告知する
単なる呼びかけだけでは入居者に対して十分な効果が見られない場合は、撤去した事例の周知も一つの方法です。
放置された私物を処分した事例がある場合は、居住者に向けてその対処事実と経緯を丁寧にアナウンスしておくことが抑止力となるでしょう。
【3】見回りを実施する
管理者による定期的な見回りもよいでしょう。放置されている私物の早期発見と対応で、違反者の増加を防ぐことができます。
地道な取り組みにはなりますが、居住者に対して一定の意識付けをする効果的です。
段階を踏んでの対応が重要
共用部分に私物が放置されているときは、管理者に連絡し、貼り紙での警告から始めましょう。改善されない場合は、管理者側で撤去や処分を行います。保管期間や引き取り方法を明示しておけば、処分を行わずにすむ可能性が高まります。
また、そもそも「廊下や玄関前に私物を放置することは禁止である」ということを普段から周知して、予防に努めることも大切です。処分事例を告知したり、見回りを実施したりすることも効果的でしょう。
共用部分の私物放置は、マンションの美観を損ねるだけではなく、災害時の避難の妨げになったり、盗難や放火などの犯罪のターゲットになったりと思わぬリスクに繋がります。放置された私物を見つけた際は、見逃すことなく早めに対処したいですね。
イラスト:大野文彰
この連載について
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マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!
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