連載:理事会役員超入門

マンションの共用部分の地震保険は必要? 加入のメリットを解説

2020.05.15
マンションの共用部分の地震保険は必要? 加入のメリットを解説

いつどこで大きな地震が起きてもおかしくない、日本。万が一、自分の暮らす地域で地震が起きてしまった場合に役立つのが地震保険です。

そこで、今回はマンションで地震保険の加入を検討している方に向けて、地震保険の基礎知識やメリット・デメリットなどを明らかにしていきます。

マンションの地震保険は個人と管理組合それぞれで加入する!

地震保険について説明する前に、マンションにおいては「専有部分」を対象とした保険なのか、それともエレベーターや玄関ホールなどの「共有部分」を対象としているのか、2つに分けて考える必要があります。

分譲マンションを所有している人は、基本的に専有部分を対象とした地震保険に、個人の意思で加入することができます。一方で共有部分については通常、管理組合が契約します。加入するための手順として、理事会などで検討した上で、各区分所有者(マンションの購入者)の同意を得ることが必要となります。今回の記事では個人が専有部分を対象とした地震保険に加入する場合に、知っておきたい基礎知識を紹介していきます。

地震保険は噴火や津波も対象

地震保険の補償対象となるのは地震だけではなく、噴火や津波による被害も含まれます。

火災保険は、建物・家財の火災等による損害などを補償の対象になっていますが、地震による火災および倒壊などは対象となっていません。

また、家具や家電といった家財は補償の範囲内となりますが、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、有価証券、骨董品、自動車などは含まれない点に注意しましょう。

保険金は必ずしも被害を受けた家財の修復や買い換えに充てる必要はないため、住宅ローンの返済や仮住まい用の費用にもできます。

地震保険は火災保険とセットでの加入が必須

地震保険とは地震によるゆれや火災、津波によって受けた損害を補償する保険のこと。保険金だけで必ずしも元の状態に戻せるわけではないものの、被災後の生活再建を支える目的があります。

地震保険が創設されたのは、1964年に発生した新潟地震のとき。それ以前は災害を補償する保険として「火災保険」があったものの、火災保険では地震や津波による損害は補償対象となっていませんでした。なぜかというと、民間の損害保険会社では大きな地震によって発生する高額な保険金の支払いに耐えきれないため。そこで民間の保険会社だけでなく、政府も保険金を分担して負担することによって地震保険制度はつくられました。

この地震保険は単体で加入をすることができず、火災保険とセットでの加入が必要です。また、火災保険の加入時に、地震保険を外すという希望を出さない限り、自動的に付帯されます。

地震保険の加入率は34.6%

損害保険料率算出機構の調査によると、全世帯のうち地震保険に加入している世帯は34.6%(2021年度)という結果になっています。

また、火災保険の契約件数のうち地震保険を付帯している件数の割合は69.8%と、約7割にものぼります。

保険会社による補償内容の差はない

地震保険の一番の目的は、被災後の生活再建。そのため、一般的には倒壊した建物の修復や購入費用が補償されます。

保険金額は火災保険で設定している保険額の30〜50%の範囲内で決めることができ、限度額は建物が最高5000万円まで、家財が最高1000万円まで。前述した通り、地震保険は政府と民間保険会社の共同で運営のため、保険会社によって内容や保険料の差はありません。

支払う保険料はどうやって決まるの?

地震保険の保険料は、住んでいる地域や建物の構造によって決まります。例えば、契約金額が1000万円のケースでは年間保険料は、財務省によると次の通り。

地震保険の保険料の表

マンションの場合、耐震性の高い鉄骨・コンクリート造の建物であることが一般的ですので、耐震性が比較的低いとされる木造建物よりも保険料はおさえられています。

受け取れる保険金は損害の程度によって決まる!

保険料とあわせて、保険金がどのように決まるかも気になるところ。いったいどのようにして決まるのでしょうか? 

保険金額は建物や家財の損害の程度(損害認定基準)により変わります。基準は「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階。どの状態を全損と言うのか、各損害の定義については下の表の通りです。

損害の定義に関する表

地震保険の受け取り

保険金を受け取るには、まず加入している保険会社に損害を報告する必要があります。

その後、「損害鑑定人」が被害のあった建物へ赴き、状況を調査。上記の表にもある通り、損害の程度に応じて保険金が算出されます。

調査にあたって、建物の図面や被害箇所の写真が求められるケースも。必要な書類があるかどうか事前に保険会社に連絡しましょう。

また、被害を受けた場所を補強したり手を加えるのであれば、写真を撮って状況を残しておいてください。

請求期限は保険法で3年と定められています。急いで被害を報告する必要はありませんが、3年を過ぎないよう注意しましょう。

個人が地震保険に加入するメリットとは?

では、専有部分を対象とした地震保険に加入するメリットは何でしょうか? 

被災後の再建に役立つことは当然として、地震保険の保険料は所得税と住民税の控除対象になることはご存じでしょうか。加入されている人は忘れずに年末調整や確定申告しておくとお得。控除内容は次の通りです。

1.所得税
・年間の払込保険料が5万円以下の場合、払込保険料の全額が控除
・年間の払込保険料が5万円超の場合、5万円控除
2.住民税
・年間の払込保険料が5万円以下の場合、払込保険料の2分の1を控除
・年間の払込保険料が5万円超の場合、2万5000円控除

確定申告を行う際は、申告書に地震保険料控除に関する事項を記載。保険料の支払金額や控除を受けられることを証明する書類を用紙に添付、もしくは申告時に提出します。ただし、火災保険として支払っている保険料部分は地震保険料控除の対象外となります。

耐震・免震性能に応じた割引制度がある

地震保険には保険料割引制度があり、制度の種類によって割引率が異なります。

制度の種類によって割引率が異なる

また、保険料を2〜5年で一括払いするした場合には「長期契約の係数」が適用されます。これにより、基本料×上記の割引率×長期係数が保険料となります。

保険料を2〜5年で一括払いする場合「長期契約の係数」が適用される

地震保険にはデメリットもあるの?

デメリットを強いてあげるとすれば、損害のすべてをカバーできるとは言い難いところです。

前述した通り、地震保険は火災保険の保険金額の最大50%までしか契約できません。火災保険の契約金額によるものの、マンションがあまりにも大きな被害を受けた場合は、再建できるほどの補償が得られないこともあります。

また、損害の程度が「一部損」の定義にも当てはまらない場合は、そもそも補償の対象外となってしまいます。

保険金が支払われないケースに注意!

次のような場合には、保険金が支払われません。

・契約者らの故意もしくは重大な過失または法令違反による損害
・地震の発生日から10日以上経過後に生じた損害
・戦争、革命、内乱、武装反乱などによる損害
・損害の範囲が一部損にあたらない場合

地震が発生してから10日以上経過した後に生じた損害に対しては、因果関係がはっきりしないという理由で補償対象外とされています。

10日以内に発生した損害であると証明するために、写真やメモで証拠を残しておきましょう。

地震保険への加入がおすすめなケース

建物の倒壊といった大きなリスクは無くとも、コンクリートに亀裂が入ったために劣化が進行しやすくなったり、共用施設の設備点検が必要になったりと、なにかとお金が必要になります。

被害のあった建物の補修に限らず、仮住まいの費用などが必要になる可能性もあるでしょう。

そのため、特に噴火や津波の被害があらかじめ懸念される地域では、管理組合として共用部分の地震保険を検討しておくと良いかもしれません。

また、個人で加入する地震保険は、家具や家電の被害も補償の対象になります。比較的大きく揺れを感じる高層階に住む人は、個人としても加入しておくと安心感を得られるでしょう。

万が一大きな被害を受けたときの備えとして検討しよう!

マンションは耐震性が高いこともあるため、地震保険に加入するのは「保険料がもったいない」と感じる人もいることでしょう。しかし、どれだけ頑丈につくられていても地震に対して万能というわけではありません。貯蓄やその他の保険でまかないきれないほどの大きな被害を受けたときの備えとして、加入を検討しても良いのではないでしょうか。

イラスト:大野文彰

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マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!

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