マンション管理組合の総会で動議が出されたら? 対処方法を解説
マンション管理組合の総会では、事前に通知された議案に対して審議・採決が行われますが、時として、参加者からの意見であらたな議案が上げられるケースもあります。
予定にない議案を出すことや、出された議案そのものを「動議」といいますが、総会で動議が出された場合にはどのように対処すればいいでしょうか。
そもそも動議が認められるのかどうかといった内容とあわせて、対処方法を解説します。
マンション管理組合の総会で出される動議とは?
マンションの運営・管理の意志決定のために年1回は開かれる総会。区分所有者は必然的にマンションの管理組合員となり、総会に参加する義務が生じます。
開催にあたっては、組合員の代表である理事会役員が議案を精査し、総会で採決をとる事項を決定します。議案は事前に組合員に通知し、当日の出席または委任状や議決権行使書でもって決議します。
区分所有法第37条にも「集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。」とあり、第35条には「集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。」とあります。
同様に、マンション標準管理規約においても第47条で「あらかじめ通知した事項についてのみ決議することができる」とされています。つまり、理事会が想定しない議題、組合員に通知されていない議題は原則取り扱わないのです。
しかし、その場で出席者から新たな議案が提示されるケースもあるでしょう。こうした、予定にない議題を「緊急動議」または単に「動議」といいます。
総会で動議が出されたらどうする?
前述のとおり、総会では原則として、事前に通知された議案についてのみ審議・採決が行われます。
緊急動議は出席者しか投票できず、委任状や議決権行使書で事前に賛否を表明している欠席者にとっては不利益である可能性があります。よって、通知されていない議案について決議するのは好ましいとはいえません。議案の再検討が必要な場合には、あらためて臨時総会を開くのが適切でしょう。
ただし、区分所有法第37条1項で「あらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる」と定められている一方、2項では「前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。」とされています。つまり、規約の改定や建て替えのような特別決議ではない場合、管理規約で動議を認めることは可能です。
では、実際に総会で緊急動議が出された場合、どのように対応すればよいでしょうか。ケースごとに解説します。
【ケース1】事前通知した議案と関連がある動議
修正を求められた議案があった場合、軽微な修正のために再度総会を開くのは手間がかかるでしょう。よって、規約で動議が認められており、通知されている議案の主旨を損なわない程度の一部修正であれば、「修正動議」としてその場で採決できるケースもあります。
例えば、「大規模修繕費用の増額」が議題に挙げられている場合、「増額幅」や「増額後の金額」を修正する動議を出すことは、「増額について検討する」という本来の目的を逸脱していないため、修正動議として認められます。
一方で、「増額について検討する」議案である場合に「減額」を要求する動議は、本来の目的と相違しているため認められません。
なお、事前に通知していたよりも大幅に増額するといった動議では、欠席者にとって不利益が大きいため、認められないケースもあります。こうした場合には、再度総会を開き直したほうがトラブルを避けられます。
また、委任状を提出して代理人を立てた組合員は、代理人が動議にも投票するとは知り得ません。委任状にはあらかじめ、動議の賛否も代理人に委任する旨を明記しておく必要があります。
【ケース2】事前通知した議案と関連がない動議
総会の原則は区分所有法にも記載がある通り、あらかじめ通知した事項についてのみ決議できます。
規約で動議を認めていない場合はもちろん、動議を認めていたとしても、事前通知した議案と関連がない動議や、軽微とはいえない修正動議は決議できないと考えてよいでしょう。
先に述べていた通り、欠席者にとっては検討外の事項ですから、その場の出席者だけで決議を採るのが適切とはいえません。
議案と無関係の発言は控えてもらう
総会とは、管理組合の最高議決機関であり、マンションの管理・運営の方針を決める重要な役割を担っています。総会に上げられている議案も、理事会で議論したのちに決定されている内容です。
事前に通知した議案と関係のない質問や意見が出てしまうと、検討したい議案から逸れてしまったり、進行が遅れたりしてしまいます。
最高議決機関としての役割を果たすためにも、議長は組合員からの発言内容を整理し、議案にかかわる質問なのか、意見なのか、修正動議にあたるかを判断し、関連のない発言は控えてもらうよう呼びかけましょう。
今回の総会では関連がないものの、今後検討の必要がある事項が上がった場合には、次回以降の総会や理事会で取り上げる旨を伝えるのも一つの手です。
規約で定めれば緊急動議は認められる
区分所有法第37条の1項では「集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。」とあり、原則として動議の決議はできません。
ただし、2項では「前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。」とあり、管理規約で動議の決議を認めることはできます。
とはいえ、動議が欠席者の不利益になる内容であっては困ります。動議を認める場合には、事前通知した議案に関連し、欠席者の不利益にならないような一部の修正にとどめましょう。
いずれにせよ、上げられた議案に沿って進めるのが総会の原則ですから、あまりに議案と関連性の低い発言は控えてもらうよう、事前に呼びかける必要があります。
イラスト:大野文彰
この連載について
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マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!
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