LED化はメリットが豊富! 共用部分への導入工事を検討しよう
大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回はマンション共用部分の照明のLED化について。大幅な節電効果が見込めるため、一度実施を検討してみてはいかがでしょうか。
LED化のメリットは?
LEDとは、電流のエネルギーを利用して発光する半導体のことで、日本語では「発光ダイオード」と呼ばれます。日本では2000年代に一般家庭用のLED電球が販売開始されて以降、普及が拡大してきており、共用部分の照明にLEDを導入するマンションも年々増加中です。
現在でも多くの住宅で、白熱電球や蛍光灯が使用されているでしょう。しかし、LEDはそれらの照明と比較して、省エネ性能が抜群です。LEDの消費電力量は、白熱電球の1/6以下とされており、月々の電気代の節約に繋がります。
さらに、電球の寿命が長い点もLEDの大きなメリットです。一般的な白熱電球の寿命は約1000時間、蛍光灯は6000〜1万時間程度とされているところ、LEDはなんと約4万時間も使用可能だとされています。照明を1日10時間点けるとして、4万時間使用するためには約11年かかる計算です。1つの照明を長い年月にわたって使用し続けられるため、使用期限を迎えた電球を新しい物と買い換える回数を減らせます。
LED電球の価格は、白熱電球や蛍光灯と比較すると高い水準です。ただし、LEDの寿命である11年で、白熱電球は少なくとも20回、蛍光灯は3回は買い換えなければならない点を考慮すると、買い換えコスト面でもLEDに軍配が上がります。
共用部分の照明をLED化させたマンションでは、電球が切れる頻度が減少するので、コスト以外にも電球交換の手間が少ない点や安全面でのメリットがあると言えるでしょう。
導入費用は現在の照明器具のタイプによって異なる
LEDの普及が急激に進んだのは、2010年代に入って間もない頃と言われています。そのため、築年数が20年以上経過しているマンションでは、まだあまり導入が進んでいない現状です。
共用部分のLED化を検討している管理組合は多くありますが、導入工事の手間と工事費用を惜しんで、実現できていないというケースは少なくありません。
現在共用部分で使用している照明器具を1つ1つ取り替える工事は、大がかりな作業が必要です。そのため、工事に掛かるコストも当然高くなるでしょう。特に、大規模なマンションの場合は、取り替える照明の台数が多くなるので、高額な工事費用になると予想されます。
一方で、現在マンションで使用している照明器具の種類によっては、工事をしなくてもLED電球をそのまま使用できるタイプもあるようです。そのタイプの照明であれば、市販されているLED電球を差し込むだけで使用ができます。ただし、照明器具とLEDランプの組み合わせ次第では、破損が起きたり、照明の性能が低下する場合もあるため、十分な注意が必要です。
また、「バイパス工事」と呼ばれる、既存の照明器具をLEDに適した電気配線に変更するための工事を行うだけで、LEDの使用ができるようになるタイプの照明もあります。バイパス工事は、1台あたりの所要時間が平均15分〜20分程度で完了する、比較的軽微な工事です。そのため、照明器具をまるまる取り替える工事と比べると、工事費用が大変リーズナブルになります。
LEDの導入を検討している管理組合は、お住まいのマンションの共用部分で使用している照明器具が、取り替え工事が必要なタイプかどうかを確認するためにも、業者へ見積もりを取ってみてはいかがでしょうか。業者によって価格や工事の実施方式が異なる場合があるので、見積もりを取る際は1社のみではなく、必ず複数の業者に依頼することをオススメします。
大規模修繕と同時期に実施するメリットは?
最後に、LED導入工事を大規模修繕と同時期に実施するメリットを紹介します。
照明器具の工事は、作業員が共用部分に立ち入って作業します。各住戸の玄関すぐ側の廊下などでも作業を行うので、工事の音が各住戸内に響く場合もあり、工事期間中は居心地の悪さを感じる住民もいるかもしれません。このような状況は、大規模修繕の工事期間中と似ています。
必ず行わなければならない大規模修繕の工事に合わせて、LED化工事を同時期に完了させてしまえば、別々に実施をする場合よりも騒音などに悩まされる回数が減るので、住民の負担を少なくさせられるでしょう。
また、大規模修繕で共用部分の天井の塗装を行う場合は、作業の妨げにならないように照明器具を取り外さなければなりません。LED導入工事で照明器具の取り替えを行うのであれば、塗装のために照明を取り外す作業を省略できるため、少し作業料金を下げられるというメリットもあります。
ただし、LEDは早期に導入するほど電気代のメリットが大きいものです。次回の大規模修繕の実施期間が、まだ何年も先だというマンションは、大規模修繕の時期を待たずに先にLED導入を実施した方がお得になるかもしれません。お住まいのマンションの状況に合わせて、検討を進めましょう。
今回はマンション共用部分のLED化について解説してきました。電気代や電球の購入費用におけるLEDのメリットは、長期間で考えると見過ごせません。
まだ導入していないマンションは、まずはLED導入工事の見積もり取得から手を付けてみてはいかがでしょうか。
イラスト:平松 慶
この連載について
【連載】ついにやって来た!大規模修繕
約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!