マンションの「修繕計画」は、工事の内容や費用を算出するのに必須!
マンションの修繕計画書の書き方は? 標準様式を使った作成手順を解説
マンションの修繕計画書は管理会社やコンサルタントに作成を委託することが多いもの。しかし、インターネットで配布されている雛形をもとに管理組合で自作することも可能です。今回は国土交通省が無料で配布している「長期修繕計画の標準様式」を使った作成方法を解説します。
マンションの修繕計画書とは?
修繕計画書とは、大規模修繕工事の実施年度や概算金額などを取りまとめたものです。新築から30年前後の計画を立て、マンション本体や設備に必要な修繕の時期や、かかる金額などを設定していきます。
標準様式を用いた修繕計画書の作成手順
では、実際に雛形を使ってどのように修繕計画書を作成していくのか、大まかな手順を確認していきましょう。
【手順1】雛形とガイドラインをダウンロードする
ネット上ではさまざまな書式や雛形が配布されていますが、今回は国土交通省が配布している「長期修繕計画の標準様式」を使った作成方法をご紹介します。「一般的な仕様の中高層の単棟型マンション」を想定して作られた雛形で、インターネット上で無料で手に入れることが可能です。
詳しい作成方法をまとめた「長期修繕計画作成ガイドライン」と合わせてダウンロードしましょう。
【手順2】エクセルデータなどに変換する
修繕計画書作成の専用ソフトがない場合、エクセルなどを使った作成が一般的です。配布されている標準様式はPDFファイルなので、変換ソフトなどを利用してエクセルデータに変換して使いましょう。
計算するための数式は設定されていないので、数式を自身で設定されるか、電卓などを使った計算が必要です。
【手順3】工事項目と周期を設定する
標準様式の項目に沿って、マンションの修繕工事の内容や時期を設定します。一般的な修繕工事項目が網羅されているので、それをもとに修繕周期や修繕方法を記入しましょう。
マンションによって仕様や立地条件が異なるため、もし必要のない項目があれば削除。住民の要望など、そのほかにも必要な項目があれば追加し、お住まいのマンションに合った仕様へとカスタマイズしていきましょう。
【手順4】推定修繕工事費を算定する
修繕計画を実現するために、トータルでどのくらいの工事費がかかるのかを計算します。標準様式の「推定修繕工事費内訳書」に工事単価や数量などを記入すれば、修繕金額を算出することが可能です。
【手順5】修繕積立金を検討する
推定修繕工事費をもとに、毎月住民が支払う修繕積立金の額を決めます。当たり前のことかもしれませんが、「修繕積立金の累計額>推定修繕工事費の累計額」となるように計画することが大切。つまり、想定している修繕費用以上の修繕積立金を用意しておく必要があります。
標準様式の「修繕積立金の額の設定」に沿って計算すれば、1戸あたりの積立金額が算出できます。
修繕計画書はどんな構成になってるの?
次に、修繕計画書の項目について詳しく見ていきます。計画書の項目は、主に次の5つです。
【項目1】マンションの建物・設備の概要
建物診断を始めるときに必要になるデータです。以下のような項目を記入しましょう。
・敷地や建物の概要(所在地・敷地面積・専有面積・構造・住戸数など)
・設備や附属施設の概要(給排水・ガス・空調・電力・駐車場設備など)
・維持管理の状況(法定点検・調査・診断・修繕工事などの実施時期)
・会計状況(借入金・修繕積立金の残高、専用部・駐車場の使用料など)
【項目2】 調査・診断の概要
建物の劣化原因や修繕方法などを記入します。防水や鉄部塗装など調査すべき主な部位については、標準様式で網羅されています。建物診断を行う場合、業者から受け取れる「調査診断報告書」で代用することが可能です。
【項目3】長期修繕計画の作成・修繕積立金の額の設定
長期修繕計画を作成する目的や工事費の算定方法、積立金額の設定方法など、どのように考えて計画が立てられたのかも示す必要があります。ただ、標準様式ではすでに主な内容がまとめられているので、特に変更がなければ消費税などの情報を記入しましょう。
【項目4】長期修繕計画の内容
修繕の工事項目については、以下のような資料をもとに設定します。
・新築マンション:設計図書など
・既存マンション:設計図書・修繕履歴・調査診断の結果など
既存マンションの場合は、これまでに行われた修繕工事を踏まえた計画を立てることが大切です。住民からの要望や、マンションの性能向上のために必要な工事があれば、そちらも検討しましょう。
修繕周期については、以下のように決めます。
・新築マンション:工事項目ごとに、マンションの仕様や立地条件を考慮して設定
・既存マンション:建物の劣化状況や調査診断結果も検討する
【項目5】修繕積立金の額を設定
修繕工事の累計額を計画月数で割り、住戸の負担割合をかけると、1ヶ月あたりの各戸の修繕積立金の額が算定できます。
基本的には「修繕積立金の累計額>推定修繕工事費の累計額」となるように計画します。一時的に積立金が下回るときは、一時金や借入れなどの対応をとらなければなりません。
修繕計画書作成時の注意点
最後に、マンションで修繕計画書を作成するときの注意点を見ていきましょう。
【注意点1】修繕計画書の作成は外部委託もできる
今回は標準様式を使った作成方法をご紹介しましたが、修繕計画書は管理会社や施工会社に委託することも可能です。委託先によっては大きな費用がかかりますが、手間をかけずに計画書を作成できます。
なお管理会社についてはあくまでも「管理」の専門であり、また分譲販売時から売主と協働していることも多いため、依頼しても積極的な見直しが行われないケースもあるよう。一方で施工会社や設計事務所などは建物調査を通じて計画を一から見直し、住民が感じる問題点や不安要素などもヒアリングしたうえで計画書を作成してくれるものの、信頼できる業者の選定に手間がかかってしまいます。
【注意点2】修繕計画書は定期的に見直しをする
修繕計画書は一度作成して終わりではありません。物価変動や劣化の状況などを反映させるため、5年を目処に見直すことが推奨されています。また、場合によっては、修繕積立金の値上げが必要になることもあります。
また5年ごとだけでなく、大規模修繕実施後の見直しも必要です。実際に工事にかかった費用や、そのとき見送った工事内容などを反映させましょう。
長期修繕計画の見直しについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ある程度余裕を持った計画で定期的な見直しを
マンションの修繕計画書は、国土交通省が無料で配布している「長期修繕計画の標準様式」という雛形を活用して自作することができます。しかし手間はかかるので、予算などの状況に合わせて外部の専門家などへの委託も検討しましょう。
また修繕計画書を綿密に作成しても、物価上昇や劣化速度など予測できない部分はあるものです。ある程度の余裕を持った計画を立て、定期的な見直しも欠かさないようにしましょう。
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