マンション管理費の値上げを防ぐには? 管理コストの削減方法を解説
修繕積立金とならび、建物の維持管理に欠かせない費用がマンションの管理費。ここ最近は物価高が取り沙汰されており、マンションにかかる固定費の負担が増し、管理費も値上げせざるを得ない可能性が高まってきました。そこでこの記事では、管理費の値上げを防ぐためのコスト削減方法について解説します。
そもそもマンションの管理費って?
マンションの管理費は、大規模修繕などを除いた通常の建物管理に必要な経費のこと。代表的な支出として次のような項目があります。
・管理会社への業務委託費
・共用部分の水道光熱費
・火災保険や地震保険など各種保険料
多くのマンションでは、管理費に充てる資金をマンション住民から毎月徴収しています。つまり住民にとって管理費は、住宅ローンや家賃、修繕積立金の支払いと同じ固定費として認識されているのです。
仮に管理費が値上げされると、住民の経済的な負担が増すだけではありません。高い固定費が敬遠されて、新たな入居者が見込みづらくなってしまう恐れもあるのです。そんな事態を防ぐためにも、管理費を抑えるためのコスト削減方法を見ていきましょう。
【方法1】管理会社に支払う委託費の見直し
管理費のなかで、管理会社に支払う管理委託費が多くを占めるマンションは少なくなく、コスト削減効果は高いといえるでしょう。次のように、委託する業務内容を見直してコスト削減を検討してみましょう。
管理員の業務時間短縮
管理会社から派遣された管理員が、マンションの巡回や来訪者の受付などさまざまな業務を行っているマンションは多いでしょう。こうした管理員は、8時間勤務など比較的長い間業務に従事している場合もあります。
しかし比較的小規模なマンションであれば、管理員によるきめ細かいサービスを受けなくても問題ないケースもあり得ます。そうした場合、管理員の勤務時間短縮を管理会社に提案し、人件費の削減を図ることができるのです。
定期清掃の頻度を減らす
管理員が行うことも多い定期清掃ですが、必要に応じて専門のスタッフが実施する場合もあります。日常清掃にかかる費用は清掃頻度によって大きく左右されますので、例えば週1回の清掃頻度を隔週にするなどの見直しを行えば、人件費の削減が期待できるでしょう。
ただし清掃頻度を減らした分、共用部などの汚れが長い間放置されてしまうデメリットもあります。そのため、マンション住民に共用部を清潔に使うよう周知するなど、共用部を汚さない工夫も検討するべきです。
建物・設備管理費の削減
前述した管理員や清掃員は、マンション住民が日々顔を合わせる身近な存在。人件費を見直すにあたって、こうした方々との人間関係を気にされる方もいることでしょう。そのような場合、比較的着手しやすい建物・設備管理費の削減に取り組んでみる方法もあります。
そのひとつとして、点検が必要な設備を廃止・縮小してしまう方法が考えられるでしょう。例えば都心部などによく見られる立体機械式駐車場。駐車スペースを数多く確保できる便利な設備ではありますが、利用者数に比べて、維持管理費に多額の費用がかかっているケースも少なくありません。
仮にこうした機械式の駐車場を、点検費用があまりかからない平面置き駐車場にすれば、大幅に維持・管理コストを抑えることができます。ただしこのような取り組みは、解体・撤去工事費など多額の初期費用がかかってしまう点に気をつけましょう。
【方法2】共用部にかかる電気代の削減
管理委託費と同様に、マンション共用部の電気代にも削減の余地があります。主に電力使用量を削減する方法と、電力契約の基本料金を見直す方法がありますので見ていきましょう。
LED照明の導入
白熱電球など従来の照明を使用しているマンションであれば、LED照明に更新することで電力使用量の削減につながるでしょう。なぜなら従来の照明と比べて、同程度の明るさで照らすのに必要な消費電力が少ないからです。白熱電球と比較すると、一般的に電気代は9割削減でき、削減量に応じて電気代も節約できます。
また、LED照明は従来の照明よりも長持ちするため、交換作業を行う手間も削減できます。
LED照明を交換する頻度の目安は、白熱電球と比べて20〜40分の1程度、蛍光灯に対しては3分の1程度。そのため、交換に要する人件費や足場代なども節約可能なのです。
照明の使用時間の削減
せっかく省エネ化できるLED照明を導入したとしても、必要もないのに長時間点灯させていては、コスト削減効果はあまり望めません。家庭用の電気と同じく、マンション共用部においても「明るいときは電気を消す」取り組みが大切です。
点灯時間の調節にあたっては、周囲の人物の熱を感知して点灯・消灯する人感センサーや、周囲の明るさに応じて自動制御される照度センサーがおすすめです。また、タイマーによって点灯時間を自由に設定できる照明も比較的使いやすいでしょう。
主開閉器契約への変更
前述したように電力使用量だけではなく、電気の基本料金を削減するアプローチも。それが「主開閉器契約」という電力契約に変更する方法です。
多くのマンションでは「負荷設備契約」という電力契約を電気会社と行っています。これはエレべーターや機械式駐車場などの電気機器の稼働状況にかかわらず、すべての機器を同時に稼働させた場合の消費電力の合算値(kw)から、契約電力を算定する契約です。
この契約により、24時間すべての電気機器をフル稼働させることが可能となります。しかし、こうした電気機器の使用頻度が比較的少ないマンションであれば、過大な契約電力量から電気料金が割高となっている場合があるのです。
一方で主開閉器契約は、「電子ブレーカー」の容量にもとづいて契約電力を算定する契約です。ブレーカーとは一般の住宅でもよく見られる、許容範囲以上の電流が流れると配線などを守るために電流を遮断する設備のこと。ただしマンション共用部における電子ブレーカーは、過大な電流が流れても一定時間は遮断されない仕組みとなっています。
主開閉器契約であれば、実際に使用する電力に応じた契約電力を設定可能に。稼働していない電気機器が多いマンションは、毎月の基本料金を下げられる可能性があります。ただし導入にあたって、電子ブレーカーを購入・設置する費用がかかります。電子ブレーカーの価格相場は3〜40万円と高額のため、予算を考えて検討する必要があるでしょう。
【方法3】損害保険契約の見直し
多くの建物と同様に、マンションの共用部についても火災・地震・水漏れなどさまざまな損害リスクがあります。こうした万が一の事態に備え、保険会社と損害保険契約を結んでいる管理組合も多いのではないでしょうか。
損害保険には火災保険や地震保険、施設賠償保険などさまざまな種類があり、それぞれで補償内容が異なります。一般的に補償内容が充実している商品ほど保険料が高いので、保険料を抑えたい場合、自分のマンションにとって本当に必要な補償内容を取捨選択することが大事です。
例えば保険のなかには、地震や水害などを補償内容とするかどうか、任意で選択できる商品があります。万が一のために契約内容に盛り込んでもよいですが、マンションの所在地が地震・水害が発生しにくい地域であれば、保険契約に盛り込む必要があまりない場合もあるでしょう。国土交通省のハザードマップなどを確認し、自然災害が発生しにくい地域であるかを事前に確認しておけば、補償内容から外す選択肢が生まれます。
電気代・保険料見直しの重要性が増している
今回はマンションの管理費を削減する方法について解説していきました。
冒頭で述べたように最近は物価高が進み、とくにエネルギー価格の高騰を受けて電気料金が上昇傾向にあります。前述した電気料金の見直しは、とくに必要性が高まってきているのです。
また、最後に取り上げた保険料の削減も重要な取り組みといえます。なぜなら、近年は大規模な自然災害が相次いでおり、保険会社が保険料を値上げするケースが数多く見られるからです。
もちろん管理費の多くを占めやすい、管理会社への委託費も意識して抑えていく必要があるでしょう。場合によっては、管理会社そのものの変更も視野に入れ、委託内容の見直しを行うことをおすすめします。
イラスト:大野文彰
この連載について
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