理事の負担を減らせる!? 管理組合の運営をプロに任せる第三者管理方式とは
マンションの理事会を運営するにあたって、理事のなり手不足に悩む管理組合は多いかと思います。たとえ理事が定員まで集まったとしても、理事会の出席率が低かったり、理事の管理に対する知識不足などにより、運営が困難となってしまうケースも。
そんななか、理事会の機能不全を解決できるかもしれない「第三者管理方式」が、近年注目されています。マンション管理の新しい選択肢として、どのような仕組みか知っておきましょう。
外部専門家が管理組合の中核を担う
第三者管理方式とは、管理会社などの外部専門家が、管理組合の活動に直接関わる仕組みです。これまで一般的な居住用マンションでは、あまり採用されてこなかった管理方式となります。
ここまで聞くと、「すでに管理会社にマンション管理を依頼しているけど、何が違うの?」と疑問に思う人もいることでしょう。
現在多くのマンションでは、区分所有者のなかから選任された理事長や理事・監事などが理事会を組織。共用部分の維持をはじめとした管理業務を行っています。管理会社は理事会が行うべき業務を、管理組合の外部から受託・代行しているに過ぎないのです。
ところが第三者管理方式では、管理会社の社員やマンション管理士などが、理事会の運営に直接参加したり、区分所有者の代表としてマンション管理を行ったりします。専門知識を持ったプロが管理組合に直接参加することで、マンション管理をより効果的に行おうとする取り組みなのです。
国の後押しで居住用マンションでも普及の兆し
第三者管理方式は最近になって登場した仕組みではなく、リゾートマンションや投資家向けのマンションでは昔から取り入れられてきました。なぜならこうしたマンションでは、区分所有者がマンションの遠方に住んでいることが多く、オーナーとして直接管理に加わることが難しかったからです。
しかし2016年に、国土交通省がマンション管理規約の標準モデルである「マンション管理標準管理規約」を改正。管理組合で外部専門家をどのように活用するか、方針が示されました。これにより、第三者管理方式を居住用マンションでも採用する事例が多くなってきたのです。
改正の背景には、冒頭で述べた理事のなり手不足などの問題があります。近年では投資需要があるマンションの増加や、区分所有者の高齢化が顕著となっています。そのため、マンション管理に積極的に参加できる人が少なくなっているのです。
また、マンションの高経年化や大規模化などにより、高度な管理が求められるケースも増えてきました。管理の知識があまりない区分所有者にとって、理事会活動が大きな負担となってきたことも、改正の背景と見られています。
究極的には理事会を廃止することも可能
第三者管理方式では、外部専門家が理事会にどのように関わるかによって、様々なアプローチが考えられます。国土交通省の標準管理規約では、外部専門家の活用方法として3つの方法が例示されています。
【方法1】外部専門家が理事長や理事、監事などの役員に就任
理事会を設けますが、理事会役員として外部専門家も加わる方法です。外部専門家は理事のほか、監事、副理事長、理事長など様々な役職に就くパターンがあり、区分所有者の役員とともに理事会運営に携わります。
外部専門家の参加により、大規模修繕の計画・工事発注をはじめとした、専門的な知識が求められる業務も適切かつ効率的に行うことが期待できるでしょう。
なお、外部専門家を含めた理事会役員の選出などの最終的な意思決定は、従来どおり区分所有者による総会が行います。
【方法2】外部専門家が管理者に就任し、理事会が監視
外部専門家をマンションの「管理者」とする方法です。ここでいう管理者とは、区分所有者全員の代表として、建物および敷地などの管理を実行する人のことです。管理者は一般的に理事長が担当しますが、この方法のように区分所有者以外の第三者が行うこともできます。
理事長も含めた理事会は、外部の管理者を監視する立場となります。理事会のなかには、管理者をチェックする別の外部専門家を置くことも可能です。こうした役員の選任は、方法1と同じく管理組合の総会で行います。
つまり、知識が豊富な外部専門家が管理者として業務を執行し、理事会はその行為をチェック。そのほかの区分所有者は業務執行について、総会で最終的な意思決定を行うことになります。これにより、各機関の役割や責任がより明確化されるというメリットがあります。
【方法3】外部専門家が管理者に就任し、理事会は廃止
理事会を設けず、外部専門家が管理者として全面的に管理業務を執行する方法です。
管理者を監視する立場として、区分所有者から監事を選出。また、区分所有者で構成される総会も管理者を監視する立場になります。さらに、監査法人などの外部監査を義務付ける選択肢もあります。
この方法では理事会運営の手間そのものがなくなることから、区分所有者の負担を大きく減らすことができるでしょう。一方で、区分所有者による総会は意思決定機関としての役割のほか、監査機関としても機能しなければならないので、責任重大です。
不正リスクなどのデメリットも覚えておこう
プロの手による的確なマンション管理のほか、理事会運営の負担減が期待できる第三者管理方式。しかし、次のようなデメリットがあることも覚えておきましょう。
管理費・修繕費が増加する恐れ
管理会社などの外部専門家に対して、委託費の支払いが必要になります。そのため、マンション住民の経済的な負担が増えてしまうのです。
また、外部専門家の知識を大いに活用できる反面、高コストな提案を受け入れ続けていくと管理費や修繕費が増加していく可能性もあるでしょう。
外部専門家による不正リスク
外部専門家が大きな権限を持つほど、自己の利益のためだけに不正行為を行ってしまうリスクも高くなります。例えば外部専門家が、特定の建設会社に工事を発注し、その見返りに建設会社からバックマージンをもらう行為が考えられます。
この場合、バックマージンが支払われる分だけ過大な工事費で契約してしまう恐れがあります。つまり、できるだけ支出を抑えたい管理組合と、利益が相反することになるのです。こうした事態を防ぐためにも、理事会や監事、外部の監査機関などが外部専門家を厳しくチェックすることが大切です。
区分所有者の意見を取り入れにくくなる
区分所有者がマンション管理にあまり関与しなくなることから、彼らの意見が適切に反映されにくくなる恐れがあります。場合によっては、マンション住民がまったく望んでない管理方針に突き進んでしまう恐れがあるのです。
そのため、マンション住民の意見を十分に取り入れられる、信頼のおける外部専門家を選ぶ必要があるでしょう。
導入するなら規約改正などの下準備を!
このように第三者管理者方式は様々なリスクを伴うことから、すべてのマンションが一概に導入すべき方式とはいえません。
もし導入するとしてもリスクを抑えるため、外部管理者の選任・解任方法や欠格要件などを、管理規約で事前に明確化しておくべきです。
また、導入後も「区分所有者は何もしなくていい」と考えることなく、外部専門家を厳しくチェックする体制を確保していくことが重要でしょう。
イラスト:大野文彰
この連載について
【連載】理事会役員超入門
マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!
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