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小規模マンションの理事会・管理組合の問題点は? 対処法を解説
小規模マンションとは、総戸数50戸以下のマンションを指すことが一般的。住民同士の距離の近さや落ち着いた住環境など魅力はたくさんありますが、住民が少ない分マンションの管理については頭を悩ませるところ。理事の業務負担が大きかったり予算が不足したりと、管理組合ごとにいろいろな悩みがあるでしょう。
今回は小規模マンションならではの問題点や対処法について考えてみたいと思います。
小規模マンションの理事会・管理組合の問題点
問題点1.理事の順番が短期間で回ってくる
マンションの管理組合は、区分所有者全員で構成されています。その中から総会で選任されるのが「理事役員」です。理事役員は理事会を構成して、総会で決議されたことを執行したり、管理組合の収支状況を確認したりとさまざまな仕事をします。
理事役員の決め方は、主に「輪番制」と「立候補制」の2種類。ほとんどのマンションでは輪番制がとられており、住居ごとに順番に理事役員を務めます。
「マンション標準管理規約 」によると、理事役員の人数は10〜15戸につき1名、最低3名〜最高20名程度が目安。
例えば20戸しかないマンションで最低人数3名の役員を設けると、大規模マンションよりも短い間隔で理事が回ってくることになります。
問題点2.工事の発注経緯が不透明になりやすい
マンションでは長期修繕計画に基づく大規模修繕だけでなく、ちょっとした外壁の破損の修繕や自動ドアの不具合対応など、日常的な小修繕工事も行われます。マンションの維持管理に無関心で知識のない役員が多いと、小規模な修繕については管理会社任せになりがち。割高な費用で工事を発注されていても気づかないことがあります。
また理事役員を長年同じメンバーが務めていたり、理事長がワンマンで進めていたりすることで、工事発注の手続き過程が不透明になってしまうことも。理事役員の知り合いに工事が発注されていて、見積もりが妥当でなかったり工事の不備が放置されたりと、トラブルにつながるケースもあります。
問題点3.修繕積立金不足に陥りやすい
小規模マンションでは共用部分が少ないため、大規模修繕にかかる修繕費の総額は安くなります。しかしトータルの費用が安くても、戸数が少ないために1戸あたりの負担は大きくなってしまうことも。
例えばエレベーターをまるまる新品へ取り替えると1基あたり1,500万円程度かかりますが、その費用を50世帯でまかなうのか20世帯でまかなうのかによって、1世帯あたりの負担額は大きく変わってきますよね。
また小規模なマンションでは、修繕積立金の滞納が1戸発生しただけで、資金繰りが逼迫することも。大規模修繕の時期を遅らせたり、小規模な修繕を後回しにしたりと、管理水準を下げざるを得なくなります。資金不足が続くと問題がどんどん積み重なっていくため、早めの対処が必要です。
問題点4.管理会社が消極的になりやすい
小規模マンションは大規模マンションに比べて、管理会社に支払う委託費の金額が小さめです。売上や利益率の低さから、管理会社に消極的な対応を取られてしまう問題も。委託費の値上げを迫られたり、契約の更新ができなかったりするケースもあります。
また小規模マンションは敷地も狭く、清掃などにもあまり時間がかかりません。勤務時間が1日2〜3時間しかないと管理人の採用が難しく、派遣会社への外注費がかさむケースもあります。
小規模マンションの問題点への対処法
対処法1.理事役員の選出方法を変える
理事の輪番制をとっていても、高齢化や賃貸化によって理事のなり手が少なくなっている小規模マンションが少なくありません。無理に輪番制で全員に理事役員を回したところで、マンション管理に興味がなければ適切な維持管理は行われにくいでしょう。
マンションによっては輪番制にこだわらず、運営に熱心な組合員が常に理事役員に加わるような制度に変えたほうがよい場合もあります。長期にわたってメンバーを固定化すると風通しが悪くなるため、新しいメンバーを巻き込むような運営方法も模索したいところ。
小規模マンションは居住者の顔が見えやすいというメリットがあるため、イベントや勉強会などを実施して積極的に居住者間のコミュニケーションをとっていくことも重要です。
対処法2.複数の専門会社とつながりを持つ
修繕工事の内容や費用が不透明になりそうなときは、外部の専門家の意見を聞くのがおすすめ。
管理会社任せにせず、緊急性がなければ適切な実施時期や施工内容などを複数の専門家に聞いてみましょう。給排水工事業者や電気工事業者など、複数の施工会社とつながりとつくっておくとよいかもしれません。
また管理会社に頼らない場合は、どの施工業者に頼めばいいか迷ってしまうことも。防水工事から塗装、小修繕まで一式対応できる業者とつながっておけば、いざというときに頼れて安心です。管理会社を通さずに、管理組合から直接業者に工事を依頼することで、コスト削減にもつながります。
対処法3.修繕計画について住民に説明する
多くのマンションで採用されているのが、築年数が経つほど修繕積立金を値上げしていく「段階増額積立方式」です。大規模修繕の資金を十分に確保するには、定期的な修繕積立金の増額が必要ですが、なかなか住民の合意が得られないこともあります。
住民から反対されるのが嫌で、増額の話し合いを先送りにしてしまいがちですが、先送りにすればするほど増額幅は大きくなるもの。住民からの合意をスムーズに得るためにも、不用意に先延ばしにせず、適切なタイミングで値上げすることが大切です。
長期修繕計画の精度を上げて必要な費用を正確に割り出すなど、妥当性が根拠をもってしっかりと説明できれば、住民からの合意も得やすいはずです。修繕積立金が足りるかどうか試算して住民に報告したり、値上げの背景を説明したりと、誠実に情報提供をしましょう。
対処法4.管理会社の変更を検討する
管理会社のサービスに不満があれば、別の管理会社への変更を視野に入れる必要もあるでしょう。
サービス内容は会社によって違うため、現在のサービスの不満点を補える会社を選べば、満足度も向上するでしょう。管理委託費の値上がりを打診されている場合、委託先の変更によって月々の費用も削減できるかもしれません。
ただし管理会社の選び方を間違えると、逆にサービス低下につながる可能性もあります。新しい管理会社と契約する前に、サービス内容はしっかりと確認しましょう。
小規模マンションの理事・管理組合の問題点は早めに対処しよう
小規模マンションで起きやすい、理事役員のなり手不足や資金不足などの問題。理事役員の選出方法や管理会社を変えるなど、問題点の改善にはなるべく早く動き出すことが大切です。
また小規模だからこそ、住民全員の意識を少し変えるだけで問題が解決することもあります。理事役員だけでなく、同じマンション内で暮らす管理組合員みんなで大規模修繕や日々の運営について話し合うことで、仲間意識が生まれ居心地のいい住環境をつくれるかもしれません。
イラスト:大野文彰
この連載について
【連載】理事会役員超入門
マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!
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