連載:となりの管理組合

マンション自治会でも「地域貢献」をモットーに! バス停誘致に成功したブラウシアに学ぶ

2023.02.24
マンション自治会でも「地域貢献」をモットーに!  バス停誘致に成功したブラウシアに学ぶ

千葉県千葉市中央区に立地する「ブラウシア」は、管理組合の法人化やITツール導入など、先進的な取り組みで知られているマンションです。本メディアでもこれまで、オブザーバー制度やベテラン理事長の活躍などを取材させてもらいました。

そんなブラウシアでは、マンション内で組織された自治会も、目覚ましい活躍をしていることで有名です。一般的にマンション管理組合とは別組織として運営されることが多い自治会ですが、ブラウシアでは管理組合のなかの一組織となっています。

今回は自治会発足当初から、自治会長として周辺住民のために活動されてきた牧野強さんにインタビュー。「羽田・成田両空港行きのリムジンバスの誘致」などのご活動や、マンションの自治会が果たすべき役割とは何かをお伺いしました。

周辺住民のために『バスを停める』ことを決意

牧野強さんは2010年11月から、ブラウシア管理組合の第6期理事に就任。生活担当理事として、住民からの要望対応などに取り組んでいました。

そんななか翌年3月、東日本大震災が発生しました。ブラウシアも震度5強の揺れに見舞われ、エレベーターが停止するなどの被害に遭ったのです。

「管理会社やエレベーター会社などと連絡を取り合う一方、災害対応に関して行政に要望を行う機会も増えました。しかし『地元の要望はマンション管理組合ではなく、自治会が行うもの』という当時の風潮から、問い合わせに素早く応じてもらえない場合が多かったのです。そのため行政との窓口として、ブラウシアでも自治会を組織しようと考えました」

今回お話しを聞いた牧野強さん

牧野さんは第8期に理事を退任するも、自治会をつくるために、理事経験者が引き続き理事会に参加できるオブザーバーに就任。続く2013年の第9期に、管理組合の内部組織として自治会を設立し、自治会長のポストに就きました。

自治会長として行政との連絡だけではなく、回覧板対応や近隣自治会との交流・意見交換なども担当してきた牧野さん。就任からしばらくしてある決意をします。

「複数のバス会社が共同で運営している羽田・成田両空港行きのリムジンバス(高速バス)停留所を、ブラウシアの最寄り駅付近に誘致しようと思ったのです。高速バスは京成電鉄千葉中央駅が始発。JR千葉駅を経由後、JR京葉線の各駅を巡って高速道路に入り、そのまま羽田空港あるいは成田空港に行くというルートを通っていました。しかしブラウシアの最寄りであるJR千葉みなと駅には停まらず、ただ駅の前を通過するだけだったのです。千葉みなと駅の周辺住民は、わざわざ遠い千葉駅などからバスに乗らなければならなりませんでした」

こうした不便な状態を何とかしたいと考えていた牧野さん。加えて、個人的に「バス好き」であることを理事会の間で知られていたこともあり、「好きなんだったら、バスを停めてみたら?」というほかの理事の後押しも受けました。こうして、バス停留所の誘致をしようと思い立ったのです。

署名活動や行政・市政への働きかけは足掛け3年に

高速バス停留所を誘致するため、牧野さんはまず周辺自治会に協力を呼びかけました。

「当時は近隣マンションでもいくつかの自治会が発足し、自治会代表者と『千葉みなと地区自治会連合会』を結成していました。かねてから学校の統廃合問題などについて取り組んでいたのですが、同連合会で高速バス停留所の誘致を提案したんです。そこで満場一致の賛成を得て、連合会として誘致活動に取り組むことになりました」

連合会では近隣マンションの住民や、周辺で活動しているホテルなどの一般企業に協力を呼びかける署名活動を行いました。そのかいあって、実に1876名の個人と3法人から署名の協力を得るに至ったのです。

「おかげさまで多くの署名が集まったのですが、大変なのはここからです。署名は千葉市の交通政策課を通じ、千葉市長宛てに嘆願書として提出しました。しかし運行自体はあくまでバス会社が行っています。市がバス会社にはたらきかけたとしても、要望が確実に叶うわけではありません。そのうえ、高速バスは京成バス・東京空港交通・京浜急行バス・ちばシティバスの4社共同運行。4社の足並みが歩調を合わせなければ話が進まない問題もありました」

こうした背景もあって、署名活動の開始から2年経っても、バス停留所の誘致はなかなか実現しませんでした。しかし牧野さんは、その後も市の交通政策課への訪問を継続的に続けるほか、地元を基盤としている市議会議員への働きかけを行うなど、粘り強く誘致活動を続けました。

「やれるだけのことはやって、あとは状況を注視していくのみという状況でした。そして誘致を思い立ってから3年が経ってようやく、高速バスが千葉みなと駅周辺に停まることになったのです。これといった誘致の決め手というものはないのですが、地道な活動が実を結んだのだろうと思います。嬉しくて停留所の運用初日に、空港への用事もないのに始発に乗ったんですよ」

3年の活動の末、ついに停留所の誘致に成功

誘致後は利用促進のため、周辺住人にバス停留所ができたことを周知するチラシを配布したり、マンションのフロントで高速バスの回数券を販売するなどの施策も行いました。

「『便利になった、ありがとう』といった直接的な反響は決して多くはなかったのですが、利用客が目に見えて増えていくのがわかりました。実際に停留所で周辺住民が乗り降りしているのを見ると、誘致に取り組んで本当によかったと感じます」

マンション単位ではなく地域全体への貢献を意識

マンション発のバス停誘致という快挙を成し遂げた牧野さんは、マンションの自治会が果たすべき役割をどのように捉えているのでしょうか。

「マンション内の活性化は管理組合の理事会に任せ、自治会は近隣組織と連携して、地域全体を持続的に活性化していく存在だと考えています。例えばブラウシアだけが砂漠のオアシスのように光り輝くことがあっても、その周辺に活気がないと、結果的にブラウシアにも悪影響を与えかねません。近隣マンションとも連携して、街全体を良くしていきましょうと取り組むのが、自治会のあるべき姿だと思います」

実際にブラウシア自治会での牧野さんは、行政や近隣自治会などとの連絡・連携などを主に担当。一般的に自治会が手掛けることが多いマンション内行事などは、「フレンドリークラブ」という管理組合内の別組織が担当しています。

「マンションのイベントごとなどに関与しない分、自治会の運営コストが比較的少なくて済むのが大きなメリットですね。自治会費を徴収する必要がないので、『費用がかからないなら』とほとんどのマンション住民が自治会に加入しているのですよ」

牧野さんと千葉みなと駅停留場

マンション住民や近隣自治会、行政などさまざまな関係者と連携しつつ、今後も周辺地域をさらに活性化したいと意気込む牧野さん。現在はどのような目標を持っているのでしょうか。

「マンション周辺の交通環境がさらに改善されるよう、横断歩道整備などのさまざまな提案を、道路行政にしていければと考えています。また近隣の港を、住民の憩いの場や賑わいの拠点として整備しようという構想もあります。これは行政のほか、千葉みなと駅周辺の街や観光協会などへ実際に提案をしている最中です。ほかにもさまざまな計画があり、やりたいことは尽きません」

近年はマンション内の防災やコミュニティ醸成など、マンション単位での活動が注目されがちなマンションの自治会。

しかし、牧野さんのように地域全体への貢献を考えて粘り強い活動を行えば、ときに地域の交通計画をも変えて、生活利便性を劇的に向上し得る存在となるのです。地域貢献を起点としつつも、回り回ってマンションにも大きな恩恵を与えられる自治会という組織は、マンション管理においても大きな可能性を秘めた存在といえそうです。

あなたのマンションの課題を解決!おすすめサービス!

この記事を誰かに知らせる/自分に送る

この連載について

【連載】となりの管理組合

大規模修繕は、準備から完了までに2〜3年ほどの時間を要する一大イベント。なかでも管理組合から選出される修繕委員会は、このイベントにおいて必要不可欠な存在です。とはいえ、最初は誰もが初心者。「選出されたはいいけど、どうすれば?」と、疑問がたくさん浮かんでくることでしょう。本連載では、そんな疑問を解決すべく、実際に大規模修繕を経験したマンションに足を運び、編集部が修繕委員会の方に突撃!リアルな声をお届けします!

MAGAZINEおすすめ連載

ついにやって来た!大規模修繕
理事会役員超入門
となりの管理組合
マンション管理最前線
これで解決!マンション暮らしのトラブル
APARTMENT LIFE GUIDE BOOK
¥0

無料
ダウンロード

マンション居住者のお悩み解決バイブル!

『マンション暮らしのガイドブック』

最新マンショントレンドや理事会の知識など、
マンションで暮らす人の悩みや疑問を解決するガイドブック。
ここでしか手に入らない情報が盛りだくさん!

※画像はイメージです。実際のガイドブックとは異なる可能性があります。

無料配布中!

このサイトでは、アクセス状況の把握や広告配信などのためにクッキー(Cookie)を使用してしています。このバナーを閉じるか閲覧を継続した場合、クッキーの使用に同意したこととさせていただきます。なお、クッキーの設定や使用の詳細については「プライバシーポリシー」のページをご覧ください。