連載:となりの管理組合

【第1回】住民のストレス度合いが異なるマンション 管理組合はどうやって運営していく?(後編)

2020.04.20
【第1回】住民のストレス度合いが異なるマンション 管理組合はどうやって運営していく?(後編)

管理会社任せにせず、自ら修繕業者を選定することで修繕費用を抑えることに成功した中村さんのマンション。続いて後編では、理事会の進め方や総会での予算承認の流れなど、管理組合の運営全般についてお話を伺っていきます。

複数の世帯が入居するマンションでは、住民が感じるストレスの度合いも個々で異なります。そのなかで、入居者全員が快適に過ごすためにどのような工夫を行っているのでしょうか。

外部の専門家に頼れるところは頼る

中村さんのマンションの理事会役員(理事)は、輪番制と立候補制によって選出されます。理事の任期は2年で、毎年半数だけが入れ替わる仕組み。立候補制も取り入れているものの、毎年手をあげるのは2〜3名程度で、理事会の大半は輪番制によって選出された理事で構成されています。

「理事を2年ごとに全員入れ替えてしまうと、運営が滞る可能性があります。そのため、新しく理事になった人と、すでに1年間は理事を担当している人が一緒になる仕組みを導入しています。理事長は基本的に前年に副理事長をやった人が就任するかたちですね」

インタビューカット

一定周期で理事の出番が必ず回ってくるといっても、毎月1回行われる理事会の集まりに参加するのは半数程度。マンション標準管理規約(国土交通省が定める管理規約のモデル)によると、理事会は「理事の半数以上の出席をもって成立する」と定められていることから、成立するギリギリの人数ということになります。

では、理事会の話し合いはどうやって進めていくのでしょうか。

「理事長が議長ではあるのだけど、全体的な進行は管理会社が行いますね。事前に理事会メンバーで議題の候補を出しておき、それを管理会社が当日の資料としてまとめてくれて、みんなに配ります。進行や資料作成を管理会社が行ってくれるおかげで、話し合いに集中できますね」

「理事会に入ると、たくさん時間が取られそう……」と心配する声もありそうですが、中村さんのマンションでは管理会社に進行を行ってもらうなど、実務面を外部になるだけ委託することで負担を減らしています。その結果、本来の目的であるマンションの生活をより良くするための話し合いに、時間を割くことができているようです。

2016年の「マンション標準管理規約の改正」によって、外部の専門家の活用要件が緩和されました。これにより、区分所有者(マンションの購入者)以外のマンション管理士などの専門家でも、理事長や理事に就任することができるようになりました。

マンションを管理する当事者は、あくまでも管理組合、とくにそのなかから選出された人で構成される理事会です。しかし「自分達で全部やる!」と気負うことなく、必要に応じて管理会社やマンション管理士などの専門家の力も活用することが、スムーズな管理組合の運営につながっていくようです。

前編では、修繕業者の選定など「管理会社任せ」にしないことで、結果的に費用が抑えられることを紹介しました。一方でその業者選定も、外部のコンサルティング会社の協力があってこそ。どの業務を自分たちでやり、どの業務を外部の専門家に任せるのかを見極めることも、理事会の大切な役割といえそうです。

理事長の権限は思ったよりも大きくなる

理事会がマンション内の問題について話し合う機関なら、「総会」は意思決定を行う最高機関。理事会で決まったことは、最終的に理事以外の区分所有者も参加する総会で、承認を得る必要があります。中村さんのマンションではどのような議事があったのでしょう。

「例えば『鳩のふんをなんとかして欲しい』といった意見が理事会に寄せられていたので、その話を踏まえて鳩よけネットを設置しようという話が出ました。ただネットを設置するにも当然お金がかかります。そこで、設置にかかる費用の出費を総会で承認してもらう必要がありました。まずは複数の施工業者に見積もりを取り、その金額などをもとに総会で予算承認を得るといった段取りで進めたことがありましたね」

このように修繕積立金の値上げだけでなく、小規模な工事にかかる費用などに関しても総会での承認を受け、管理組合が管理するお金のなかからまかなわれます。マンションの購入者が普段支払っている管理費や修繕積立金が何に使われるのかは、総会で確定するというわけです。

大切なお金の出どころを決める大事な場ともいえる総会ですが、「出席率が悪い……」と頭を悩ます理事の方もいるかもしれません。中村さんのマンションではどのぐらいの世帯が参加するのでしょうか。

「総会に出席するのは150世帯のうちの3分の1ぐらいですね。あとはみんな委任状を提出して終わりです」

総会で議題にあがった内容は、区分所有者の過半数以上の賛成を取るなどによって、決定する必要があります。しかし総会ではこのように、区分所有者の大半が「議長(=理事長)一任」の委任状を出してしまうケースも多いといいます。

つまり実情は、理事長の判断に任せる区分所有者が多いということ。もちろんマンションの事情によって異なりますが、実質的に多数の議決権を持つことになる理事長の権限は思ったよりも大きいようです。

生活ルールはストレスが大きい人に合わせる方向へ

前編でも紹介したように、修繕費用を大幅に抑えながら納得のいく大規模修繕を終えた中村さんのマンション。マンションの管理・運営は上手くいっているように思いますが、これまで大きなトラブルなどはなかったのでしょうか。

「ベランダから物を意図的に落とすなど、問題行動が目立つ入居者の方が以前いました。でも警察の人に何度か注意してもらったら、その方が自主的に立ち退かれたので、なんとか問題は収まりました......」

とても稀な例かもしれませんが、多くの住民が一緒の建物内で住まうマンションにおいては、こうした問題行動を起こす人に関するトラブルは多かれ少なかれ起こりえます。

「あとトラブルとまではいかないですが、苦情として多いのはやっぱりペットのこと。うちには意見受付用のポストがあるのですが、そこに『建物から外に出るまでは、ペットをちゃんとカゴの中に入れて欲しい』といった声が寄せられることはあります。

それと、たまに問題になるのは、お子さんのことですね。住民の方のなかには、お子さんが共有スペースで騒ぐのは許せないという方もいます。私はその光景を微笑ましく見守っている部分もあるのですが……。ただ、迷惑に思っている方の訴えを無下にするわけにはいかないので、どうしても『共有スペースで子どもを遊ばせること』を禁止せざるをえない方向に向かってしまいますね」

何を、どのレベルで生活のストレスと感じるかは人によって違うものなので、どこに合わせるのかはやはり相当に難しいところであり、快適なマンション暮らしの肝にもなる部分です。

中村さんのマンションでは、注意喚起を促す必要がある場合は出入り口付近の掲示板やエレベーターの中など、入居者が1日1回は通るであろう場所にそのアナウンスを設置。

掲示板

また、入居者の足並みを最低限揃えるために、住民の意見を反映させて作ったマンションの暮らしに関する“ルールブック”も全世帯に配布しています。そのなかには「ペットは建物の外に出るまでカゴに入れる、もしくは抱っこする」などマナーに関することから、駐車場や共有スペースの使い方まで詳細に書かれています。

ルールブック

このように複数の世帯が集まるマンションにおいて、入居者全員が快適な生活を送るためにはある程度の制約を作ることはやむをえないといえそうです。

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この連載について

【連載】となりの管理組合

大規模修繕は、準備から完了までに2〜3年ほどの時間を要する一大イベント。なかでも管理組合から選出される修繕委員会は、このイベントにおいて必要不可欠な存在です。とはいえ、最初は誰もが初心者。「選出されたはいいけど、どうすれば?」と、疑問がたくさん浮かんでくることでしょう。本連載では、そんな疑問を解決すべく、実際に大規模修繕を経験したマンションに足を運び、編集部が修繕委員会の方に突撃!リアルな声をお届けします!

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