修繕委員会とは? 仕事内容と注意すべきポイントを解説
総会で大規模修繕を決議する方法は? 普通決議と特別決議の違いも解説
マンション管理組合は、活動していくなかでさまざまな意思決定を下す必要が出てきます。重要な事項については、前もって住民からの賛成を得ておかなければ実施は難しいでしょう。
特に、大規模修繕のような、マンションの将来に大きく影響を与える内容については、注意深く決めたいもの。
今回の記事では大規模修繕を行うための決議方法を解説します。修繕の内容によって、決議の方法に違いが出てきますので、しっかりチェックしておきましょう。
総会での決議方法には「普通決議」と「特別決議」の2つがある
マンション総会は、マンション管理組合全体の意思決定を行う場であり、少なくとも年に一度の頻度で開催することが区分所有法によって定められています。総会は、大規模修繕を実施するうえで、区分所有者全員の意見を反映するために重要となる行事です。
総会における決議方法は「普通決議」と「特別決議」の2種類があります。それぞれの決議方法に、どのような違いがあるのかを学んでいきましょう。
一般的な議題は「普通決議」で決める
「普通決議」は、総会に出席した区分所有者の過半数が賛成すれば可決となる決議方法のこと。総会で議題に挙がるなかでも、一般的な議題は「普通決議」で決められます。
普通決議で取り扱う議題は、収支決算報告や理事などの選任または解任といった、日常にかかわる案件が多くあります。
大規模修繕の場合、共用部分に元々あった設備を大きく変更せずに修繕するような小規模の工事であれば、普通決議による承認で実施が可能です。小規模工事の具体例としては、マンションのロビーに防犯用の夜間灯を追加で設置する、といった内容が挙げられます。
区分所有法では普通決議における特別な条件を定めていません。そのため、管理規約を改定しておけば、普通決議の成立要件を過半数よりも易しい条件に緩和しておくことも可能とされています。
重要な変更は承認条件の厳しい「特別決議」
管理規約の改正や廃止といった、管理組合全体にとって重要な内容の場合は特別決議が必要です。また、共用部分の形状や効用を大きく変更させるような大規模な修繕工事の決議も特別決議に該当します。
重要な内容を扱う特別決議では、可決に必要な条件は厳しく、「区分所有者総数の4分の3以上」かつ「議決権総数の4分の3以上」の承認が必要です。
また、建物の建て替えについての決議をとる場合は、さらに条件が厳しくなり、「区分所有者総数の5分の4以上」かつ「議決権総数の5分の4以上」が必要になります。
どちらの決議で決めるかは、改正された区分所有法がカギ
ここまで、2種類の決議方法について解説してきました。しかし、自分のマンションで実施する大規模修繕をどちらの決議方法で決めるべきかの判断が難しい場合も考えられます。
判断するためのカギとなるのは、2002年に改正された区分所有法です。2002年の改正では、特別決議の要件となる「共用部分の変更」についての定義が変更されています。
改正前の共用部分の変更についての条文には「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く」と記されていました。
この条文の内容が、改正後には「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」に変更されています。
そのため、現行の区分所有法の定義に従えば、大規模修繕で行う工事内容が「形状又は効用の著しい変更を伴わない軽微な修繕」である場合を除けば、特別決議が必要となることを覚えておきましょう。
どんな修繕工事だと特別決議が必要?
特別決議が必要となる工事にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な例を紹介していきます。
大がかりなバリアフリーの工事
現代の日本では、高齢化社会を見越して、マンションのバリアフリー化の需要が高まっています。
バリアフリー化の施工例としては、外壁部分にエレベーターを外付けして設置する、などの内容が挙げられます。この工事の場合、建物の基本的な構造を取り壊したり、大きく加工したりする必要があるため「軽微な修繕」とはいえず、特別決議による承認が必要となります。
一方、バリアフリー化に関わる工事であっても、階段部分に手すりを設置するだけであれば、基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わないため、普通決議での承認が可能です。
マンションの一部を増築する時は?
マンションの増築工事は、改正後の区分所有法における「形状または効用の著しい変更を伴うもの」に該当します。
そのため、新たに集会室や駐車場、駐輪場を増築する場合、特別決議による承認が必要です。
修繕委員会を立ち上げれば大規模修繕の決議を円滑に進められる
修繕工事は、長い月日をかけて行われるマンションのビッグイベント。戸数が100を超える大規模マンションでは、工事期間が数年かかる場合もあります。
このように大がかりな大規模修繕に取り組む際には、修繕委員会を立ち上げておけば、円滑に進行させていくことに期待ができるでしょう。
修繕委員会とは、理事会の決議で設置される組織で、メンバーは一般的にマンションの居住者で構成されます。
修繕委員会は、必ずしも立ち上げなくてはならない組織ではありません。しかし、修繕委員会が工事の窓口となって修繕計画を進めていくことで、理事会の負担が分散されるというメリットがあります。
修繕委員会は、理事会とは異なり、任期を定める必要がないため、計画を進める途中でメンバー交代を行う必要がありません。そのため、修繕委員会を立ち上げておけば、より綿密で一貫性のある長期修繕計画の作成に期待が持てます。
大規模修繕を行うには住民の理解が必要
管理組合のなかには、なぜ大規模修繕が必要なのか、どういった工事が実施されるのか、といった、基本の部分を理解していない人も多くいるかもしれません。
修繕を実施する価値が理解できていなければ、大規模修繕への協力に身が入らないことが考えられます。そのため、大規模修繕を行う際には、前もって住民の理解を深めておくことも重要です。
住民の理解を深める手段としては、あらかじめアンケートや説明会などを実施しておくのが効果的。事前に大規模修繕について理解してもらえれば、決議もスムーズに進むと期待できます。
建物の構造に影響する修繕を行うためには特別決議が必要
2002年の区分所有法の改正により、「共用部分の変更」の定義が変更されました。改正後は、軽微な修繕であれば普通決議で決めても問題無いといえます。ただし、建物の構造が変わるような、大きな変更をともなう修繕では、特別決議が必要です。
また、大規模修繕に取り組む際には、修繕委員会の立ち上げも検討しましょう。工事期間が長期に及ぶ場合や、安全面や進め方について住民の意見を取り入れたい時は、修繕委員会を設置しておくとスムーズに進行させやすくなります。修繕委員会を新規で立ち上げる際には、事前に住民へのアナウンスも忘れずに行いましょう。