住民のストレス度合いが異なるマンション トラブルを避けながら管理組合はどうやって運営していく?(後編)
管理会社任せにせず、自ら修繕業者を選定することで修繕費用を抑えることに成功した中村さんのマンション。続いて後編では、理事会の進め方や総会での予算承認の流れなど、管理組合の運営全般についてお話を伺っていきます。
複数の世帯が入居するマンションでは、住民が感じるストレスの度合いも個々で異なります。そのなかで、入居者全員が快適に過ごすためにどのような工夫を行っているのでしょうか。
「マンションに住む」という共通の特徴がつながりを生む
最後に、中村さんが修繕委員会としてこれからやろうとしていることを聞いてみました。
「一定周期で行う必要がある大規模修繕以外の部分でも、マンションをより良くすることに力を入れていきたいと思っています。例えば、立体駐車場のメンテナンスやエレベーターの整備、あとは細かい例でいうと共有部分の照明をLEDに換えるとかですね。
ただ、当然ですが修繕委員会の独断で進めることはできません。そういったお金のかかることに対しては、例えば『LEDに換えると〇〇円の電気代を節約できる』などのデータの算出や複数の業者に見積もりを取るなど、住民のみなさんが納得する材料を集めることが必要ですね」
また、中村さんのマンションでは修繕委員会だけでなく、住民の防災に対する意識を高めることを目的とした「防災委員会」も活発に動いているそう。例えば掲示板には、万が一大きな地震が発生した場合の影響や、国・県はもちろん防災委員会の対応方針なども記載された手作りの資料が貼ってあります。
「『災害に備えた備蓄を共用としてどれぐらい用意すればいいのか』ということも、防災委員会が中心となって考えています。もちろん『自分でやればいい』という人もいますが、マンションに住む人全員の安全を考えると、共有できる備えは大切になってきますよね」
最後に、修繕委員会にしろ、防災委員会にしろ、初めて立ち上げるとなると手探りの部分も多いはず。参考となる情報をどうやって得ているのか聞いてみました。
「委員の中には自分自身でアポをとって、違うマンションの管理組合に個別に話を聞きに行く方もいます。あとお子さんの幼稚園や小学校の父母同士のつながりで『これから大規模修繕やるんですけど、どうやりました?』といった相談をすることも、されることもありましたね。ネットなどからの情報も役に立ちますが、合わせて経験者に直接話を聞いてみることも大事にしています」
このようにマンションに住んでいるという共通の特徴があることで、他の人とのつながりも生まれます。これは、同じマンション内で暮らしている人も一緒。理事メンバーとして自分のマンションについて真剣に話し合ったり、大規模修繕のような大きなプロジェクトをやり遂げたりすることで、強い仲間意識は生まれるもの。社会人になってから気心の知れた友人を作るのはなかなか難しいですが、中村さんのように、マンションというコミュニティでは仲間を増やし、家庭と同じぐらい居心地の良い場所にできる可能性もあるのではないでしょうか。
この連載について
【連載】となりの管理組合
大規模修繕は、準備から完了までに2〜3年ほどの時間を要する一大イベント。なかでも管理組合から選出される修繕委員会は、このイベントにおいて必要不可欠な存在です。とはいえ、最初は誰もが初心者。「選出されたはいいけど、どうすれば?」と、疑問がたくさん浮かんでくることでしょう。本連載では、そんな疑問を解決すべく、実際に大規模修繕を経験したマンションに足を運び、編集部が修繕委員会の方に突撃!リアルな声をお届けします!
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