修繕積立金額はずっと同じとは限らない! 工事費高騰で値上がりも
修繕積立金の値上げに反対!その理由は? 対策も解説!
マンションで快適に暮らしていくために、必要な修繕。修繕費用を確保するためにも適正な修繕積立金を積み立てていく必要があり、マンションの状態によっては値上げをしなければならないケースもあります。
ところが、値上げに反対する入居者も珍しくなく、修繕費用が不足してしまう場合も。値上げを住民に理解してもらうために、どういった対策を行えば良いのでしょうか。
修繕積立金の値上げはもはや常識?
修繕積立金が値上がりすることは、そこまで珍しいことではありません。とくに築年数が古いほど、必要な修繕費用も大きくなるため、修繕積立金が上がる傾向にあるようです。
なお一般的に大規模修繕は10~15年おきに行われますが、工事費用の見積もり額に応じて修繕積立金が見直されるケースも多いようです。国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」にも、12年ごとに大規模修繕を行っている例が載っていますが、連動して修繕積立金が見直されています。
修繕積立金の値上げに関わるリスク
修繕積立金の値上げが実施できない、もしくは実現できたとしても以下のようなリスクを抱えています。
【リスク1】建物の資産価値が減少してしまう
管理会社から提案される修繕計画は、管理組合によって定期的に見直す必要があります。国土交通省のガイドラインでも、マンションの長期修繕計画は5年ごとの見直しが推奨されています。
見直しによって、将来の修繕費用が不足すると分かれば、修繕積立金は増額されるケースが多いようです。ただ、増額を提案しても区分所有者から反対されることも珍しくありません。修繕積立金の値上げができないとなると、計画通りの内容の修繕が実施できなくなり、建物の資産価値が減少してしまうことになりかねません。
【リスク2】滞納者の割合が増える可能性がある
修繕積立金だけでなく管理費の負担や月々のローンをかかえている人が多い区分所有者。修繕積立金が値上げされると、なかには支払う余裕がないなどの理由で滞納する方も出てくる可能性があります。国土交通省の「マンション総合調査」によると、管理組合の3〜4割が滞納者をかかえているというデータもあります。
滞納者が増えてしまうと、増額する前よりも修繕費用が確保できないといった事態にもなりかねません。修繕積立金を値上げした意味がなくなります。そのため値上げを行う場合は、住民を説得するのと同時に、万が一滞納者が出てしまった場合への対応も考えておきましょう。
修繕積立金の値上げになぜ反対? その理由は?
なぜ、修繕積立金の値上げに反対するのでしょうか。その理由を改めて整理してみました。
【理由1】いきなりの値上げに納得できない!
分譲マンションでは販売時に売りやすくするために、新築当初の修繕積立金を安く抑え、年数を重ねるごとに徐々に引き上げていくのが一般的です。ただ、計画通りに途中で修繕積立金を値上げできないと、築年数が経過するほど、「将来の修繕費用」も不足してしまうのです。
さらに、経年による設備の劣化や住人の高齢化に配慮してバリアフリー工事を行うとなると、ますます修繕費用は確保できなくなってしまいます。
本来であれば値上げを段階的に実施する必要があるにもかかわらず、計画の甘さから、突然「値上げします」と言われても入居者からは反対されてしまいます。そのため値上げをするにしても「いきなり」ではなく、事前に住民説明会を設けて、少しずつ説得していくなどの工夫が必要となるでしょう。
【理由2】値上げ金額が高い!
修繕積立金の値上げ額に根拠がなく、さらに高額な場合もやはり反対される可能性は高くなるでしょう。
とくに管理会社に見積もりを依頼し、提示された金額そのままに修繕積立金を値上げしようとすると、高額になるケースも多いといいます。なぜなら管理会社から発注する施工業者が決まっている場合、競争原理が働かないのはもちろん、管理会社に支払う中間手数料も発生してしまうためです。できれば管理組合から施工会社へ直接見積もりを依頼し、その金額を修繕積立金の値上げ額として参考にするほうが良いでしょう。
なお値上げを回避するために「一般会計の支出を削ればいい」という意見が出ることもあります。そのため、値上げの前に管理会社との業務委託契約の見直しなど、無駄な支出を見直せないか一度検討を。そのうえで、もうこれ以上支出が削れないという場合に、修繕積立金の値上げを提案したほうが良いでしょう。
【理由3】管理会社が信用できない!
管理会社から修繕積立金の値上げの話が出ると、反対する入居者が出てくることもあります。とくに業務の進め方について普段から管理会社に不信感を抱いているケースだと、「値上げが必要です」と提案されてもなかなか耳を貸さない住民もいるようです。
管理会社が信用できない場合、設計事務所やコンサルティング会社といった第三者に長期修繕計画の作成を依頼し、必要な値上げ額を算出してみましょう。
修繕積立金の値上げに反対が出た場合の対策は?
以降では、修繕積立金の値上げに反対が出た場合の対策について紹介します。
【対策1】ガイドラインの金額を根拠として提示する
値上げに反対されないためにも、修繕積立金の金額が適切かどうか、根拠を示すことが大切です。
では、何を根拠とするのか。
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に記載されている平均値を参考にしましょう。
ちなみに、専有床面積1㎡当たりの修繕積立金の額については、建物全体の延べ床面積や階数に応じて以下の値を当てはめます。
【15階未満】
・5,000㎡未満:218円/㎡・月
・5,000〜10000㎡:202円/㎡・月
・10,000㎡以上:178円/㎡・月
【20階以上】
・206円/㎡・月
なお、前述した通り一般会計の支出が見直せないかどうかも検討したいところ。支出の見直しによって浮いたお金を修繕積立金に充てることができれば、値上げ額も軽減される可能性があります。
【対策2】修繕積立金の値上げに関するアンケートを実施
修繕積立金の値上げに賛成か、また反対かを確認するアンケートを実施してみましょう。賛成が過半数以上であれば、反対派も従わざるを得なくなります。
とはいえ、ただアンケートを実施しても、賛成を獲得するのは難しいでしょう。そのため、以降で紹介するアンケートに記載するべき内容を、参考にしてみてください。
値上げのアンケートに記載するべき内容とは?
アンケートを行う時点で住民の理解を得られるように、以下の3つのポイントを記載すると良いでしょう。
【内容1】修繕積立金を値上げする理由や不足金額
まず修繕積立金がどのような状況なのか、なぜ不足しているのかについて説明します。例えば、当初の修繕計画では2〜3回目の値上げをいつ行う予定だったのか、また増額をしないと修繕費用がいくら不足するのかまでを記載しましょう。
「修繕積立金が上がるとは聞いていない」と反論する方もいるかもしれません。そういった方には、マンションでは「段階増額方式」が採用されていることが多く、その場合、修繕積立金を段階的かつ計画的に値上げをする必要性があることを伝えると良いでしょう。
【内容2】修繕箇所の劣化具合
各修繕箇所の劣化具合や、修繕時期の目安なども伝えておきましょう。例えば、住居者が普段目にしている専用廊下だけでなく、屋上や集会室、給水ポンプなどの劣化具合も伝え、修繕が必要な旨を理解してもらう必要があります。
【内容3】今後の修繕計画について
長期修繕計画は、劣化具合や居住者のライフスタイル、また社会的ニーズの変化に合わせて5年ごとに見直したほうが良いと言われています。そのため将来的には、必要な修繕費用が増額するかもしれません。それを見越して、今回の値上げはあくまでも現時点の修繕計画をもとにした金額であることも記載しておきましょう。
値上げ金額の根拠の提示やアンケートの実施で対策を!
修繕積立金の値上げができないとなると、長期修繕計画通りの工事内容の実現が難しくなり、資産価値の低下を招いてしまいます。
そのため反対派も納得できるように、値上げ額が適正である根拠を示したり、所有者全員に賛成か反対かのアンケートを取ったりなど、増額を理解してもらう工夫が必要です。
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