修繕積立金額はずっと同じとは限らない! 工事費高騰で値上がりも
マンション購入後、管理費などと一緒に支払う必要がある修繕積立金。実は将来にわたって同じ金額なのかというとそうとは言い切れず、値上がりする可能性があるのはご存じでしょうか?
では、どのような場合に値上がりするのか。その理由や値上げを抑えるための対策方法について紹介します。
修繕積立金はずっと同じ金額というわけではない
修繕積立金とは大規模修繕など、日常のメンテナンスの範囲を超えた修理に備え、住民から集めて積み立てておく費用のことです。
一般的に積立額はマンションの長期修繕計画をもとに算出されますが、実は一度決まったら後はずっと同じ額というわけではなく、値上げが必要になるケースも。
例えば、国土交通省が発表している『平成30年度マンション総合調査結果』によれば、修繕積立金の金額は築年数が長くなるほど増加する傾向にあるようです。(図1)
また、大規模修繕の見積もりを取った結果、修繕積立金が見直される場合もあります。値上がりの具体的なタイミングについては記事の後半でご紹介しますが、徐々に高くなっていく可能性があることは覚えておきたいところです。
修繕積立金が値上がりする3つ理由
【理由1】分譲時の初期設定価格が低かった
修繕積立金が値上がりする理由として、そもそも新築分譲時の設定額が適正より低かった可能性があります。
施工技術や材料の進化、賃金上昇といった社会的変化を踏まえて修繕積立金の適正価格は変わっていくと考えられます。新築時の状況から変化しているというのが1つの要因です。
また、詳しくは後述しますが、大規模修繕が近づくにつれて集める金額を増やしていく「均等積立方式」を採用しているマンションでは、分譲当初よりも修繕積立金額が値上がりしていきます。
【理由2】修繕工事費の価格上昇
社会的な賃金上昇や、労働人口の減少による工事の担い手不足により、工事単価は年々上昇傾向にあります。材料や工法の違いによって原価が変わる影響もあるでしょう。
また、管理会社に施工会社の選定も依頼している場合、中間マージンを取られていて工事費が値上がりしている可能性もあります。
人件費の上昇は受け入れざるを得ませんが、材料や工法が適切かどうか、管理会社への一任で問題ないかは見直せる部分でしょう。
【理由3】計画に含まれていない工事を行う
「修繕」は劣化した部分を当初のように補修する工事ですが、時代が変われば当時最新だった設備も古くなってしまいます。
玄関周りの設備の更新やバリアフリー化の工事は長期計画に含まれていないケースが多く、当初の資金計画ではまかなえない可能性があります。そのため、グレードアップをともなう工事が行われる場合には、修繕積立金額も値上がりするのです。
修繕積立金の値上げタイミングは全部で4つ
ここからは修繕積立金が値上がりする可能性が高いタイミングについて紹介します。
【その1】修繕工事費が高騰したタイミング
職人の人件費や材料費、リース代や燃料代などの上昇により工事費が高騰すると、修繕積立金も値上がりする可能性があります。
基本的に、修繕積立金はある程度の工事費の価格上昇を考慮して算出されています。そのため緩やかな価格増であれば値上がりの必要性は低いと言えますが、増税や公共事業などの需要増加で急激に高騰することも考えられます。当初の予想よりも遙かに工事費が高くなった場合、修繕積立金の値上がりは避けられないといえるでしょう。
【その2】グレードアップ工事が必要になったタイミング
前述の通り、修繕積立金は長期修繕計画をもとに金額が決められますが、バリアフリー工事をはじめとしたアップグレード工事は計画に含まれていない可能性もあります。
住民の希望などで計画にない工事を行うことになった場合、新たに予算を集める必要があります。その際、修繕積立金の値上げや一時金の募集、銀行ローンなどの方法を取ることが多いようです。
仮に銀行からお金を借りた場合でも、その返済は修繕積立金から行っていくため、積立金が値上がりする可能性は高いといえます。
【その3】大規模修繕が終わったタイミング
実際に大規模修繕にかかった費用を参考に、修繕積立金が見直されるケースもあります。
大規模修繕を実施してみて予想以上に費用がかかった場合はもちろん、外壁や設備の劣化は築年数が長くなるほど激しくなるため、1回目よりも費用が高くなる可能性があります。
【その4】空室が増えたタイミング
修繕積立金は入居者全員から集めるため、空室が増えてしまうと積立額の総額も減ってしまいます。不足分を補うために修繕積立金を値上げする場合もあるようです。
なお、マンションの空室が増える原因としては以下のようなものが考えられます。
・マンションの老朽化
・耐震性能不足
・所有者の高齢化
・世代交代での相続放棄
修繕積立金の値上げを避ける2つの方法
修繕積立金が値上がりする理由やタイミングがわかりましたが、値上げを抑えるにはどのような対策を取ればいいのでしょうか? ここからは具体的な方法を2つ紹介していきます。
【方法1】管理委託費の削減を検討する
管理委託費とはマンションの管理を委託している管理会社に支払う費用のこと。
多くのマンションでは共用部分の設備点検や清掃、修繕工事などの業務を管理会社に委託しています。もし管理委託費を抑えてその分を修繕費用に回すことができれば、修繕積立金の値上がりを避けることにもつながるでしょう。
管理委託費の抑え方としては現在の管理会社を他社に変更する、もしくは一部の管理業務のみを委託するなどの方法があげられます。
なお契約の見直しについて管理組合単独での実施が難しい場合、外部のコンサルタントに依頼をするのも一つの手です。
また、管理会社に委託せず、管理組合が主体となって日常的な設備点検を行う自主管理という形を取れば、管理委託費の大幅な削減も可能となるでしょう。
しかし、自主管理は理事会役員への負担が格段に重くなるというデメリットがあります。
【方法2】不要な工事を省くなど修繕費用を抑える
依頼する業者を自分たちで選ぶ、工事内容をチェックして不要な箇所の工事を省くなどで工事費を節約できれば、修繕積立金の値上げを防ぐことも可能です。
「平成25年度マンション総合調査結果」(国土交通省)によると、管理会社に管理を委託しているマンションの約8割が、修繕工事の手配を管理会社に任せているとされています。
大規模修繕の手配を委託した場合、業者の選定やトラブルの対処を行ってもらえるというメリットはあるものの、一方で仲介手数料などが発生し、費用が余分にかかる可能性は高くなります。また、不要な工事が行われていたとしても、気づくことができないかもしれません。
業者の手配や工事計画のチェックを自分たちで行うことで、これらのリスクを避けることができ、結果的に修繕積立金の値上げを防ぐことにもつながります。
修繕積立金の目安もチェック
現在の修繕積立金の金額が低すぎると、後々になって大幅な値上げが必要となる可能性が高くなります。突然の値上げを避けるためにも、今の金額が適正かどうか一般的な目安と比較してみるのも大切。
では、目安はどのように計算すれば良いのでしょうか?
修繕積立金の目安は専有床面積から計算できる!
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に記載のある専有面積1㎡当たりの修繕積立金の月額をもとに、おおまかな額を計算することができます。
■専有面積1㎡当たりの修繕積立金の月額
・218円(延べ床面積5000㎡未満)
・202円(延べ床面積5000㎡〜1万㎡未満)
・178円(延べ床面積1万㎡以上)
・206円(20階建て以上)
例えば、地上10階建てで専有面積が70m²、建物全体の延べ床面積が7000m²のマンションに暮らしている場合、以下のように1万4140円/月が適正価格となります。
202×70m²=1万4140円
ところで、上記では20階以上のマンションについて、別途月額の目安が設けられていることがわかります。これは、一般に超高層マンションと呼ばれる20階以上のマンションの修繕では吊り下げ式の特殊な足場が必要となるほか、共有部分も増えるため、修繕費用が増大する傾向にあるからです。
機械式駐車場があると追加のコストが発生する!
機械式駐車場がある場合、さらに以下の公式をもとに計算した金額が上乗せされます。
A×駐車台数×専有面積÷全住戸の専有面積の合計
上記のAには機械式駐車場の機種に応じた以下の金額が入ります。
・7085円(ピット1段昇降式)
・6040円(ピット2段昇降式)
・8540円(ピット1段昇降横行式)
・1万4165円(ピット2段昇降横行式)
例えば70m²、建物全体の延べ床面積が7000m²のマンションに40台分のピット2段昇降式の駐車場がある場合は以下のように2416円が、専有面積1m²当たりの月額から算出した目安に加算されます。
6040円×40台×70m²÷7000m²=2416円/月
修繕積立金の集め方によって値上がりする可能性も!
修繕積立金の集金方式は主に3つの種類があります。このうちどの方式を採用しているかによって、将来値上がりするかどうかがわかります。
最後に3つの方式をそれぞれ見ていきましょう。
【方式1】徐々に値上がりしていく段階増額積立方式
段階増額積立方式とは3年や5年など、一定期間ごとに毎月の積立金が増額していく方式です。新築から数年間はコストを抑えられるというメリットがあります。
初期費用を抑えることで入居者を募りやすくなるため、新築マンションではこちらの方式を採用している場合が多いようです。
しかし、値上がりを繰り返した結果、後述する均等積立方式より十数年後の毎月の負担が大きくなる可能性もあります。
買い換えや売却を予定している方には支払う総額が少なく済むという利点がありますが、一方で永住を前提に考えている方にとっては老後に向けて負担が重くなっていくため、不安が残る方式といえます。
【方式2】長期にわたってほぼ一定額の均等積立方式
均等積立方式とは将来にわたって必要となる修繕費用の総額をあらかじめ算出し、毎月の修繕積立金をできるだけ一定に保つ方式です。
修繕積立金の計算や計画が行いやすいという点から、国土交通省もこちらを推奨しています。
総額を均等に分割するので初期費用は比較的高くなってしまうものの、将来的な負担は前述の段階増額積立方式よりも小さくなりやすく、永住予定の方も安心できるのが特徴。
また、修繕積立金が大幅に値上がりする可能性が低いという条件は資産価値の向上にもつながります。売却を予定している方にとっても利点がある方式といえるでしょう。
しかし、計画の見通しが甘かったり災害などで突発的な修繕費が生じたりした場合は値上がりも考えられますので、その点には留意が必要です。
【方式3】一度に高額を集める一時金徴収方式
採用しているマンションの例は多くはないですが、修繕費を一度に集める方式もあります。
こちらは一時金徴収方式と呼ばれ、大規模修繕を行うたびに必要な資金を一括で集めます。また、先にご紹介した2つの方式を採用しているマンションでも、修繕積立金が足りない場合に一時金を支払ってもらうケースもあります。
その時の必要資金を各戸に割り当てることから修繕積立金の不足を防ぐことが可能ですが、一度に高額を負担することになるため住居者とトラブルになりやすいという欠点があるため、採用には細心の注意が必要です。
急な値上げを防ぐためにも適正金額をコツコツと
マンションの資産価値を維持するためにも、修繕に向けて十分な予算を確保しておきたいところ。そのためにも住民からの反発が出るような急な値上げを行うことなく、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」などを参考に、適正な金額を長期的に積み立てていくことが大切です。
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