修繕費と資本的支出の違いとは? 仕訳するときの基準も紹介!
修繕積立金の勘定科目は? 「修繕費」として計上する条件を解説
マンションの区分所有者の中には、所有する住戸を自分の事務所として利用していたり、貸し出しを行っている人もいます。そのような区分所有者にとって、修繕積立金は経費として計上したいところ。
では修繕積立金はいつ、どのような科目で計上すれば良いのでしょうか。今回は、修繕積立金の勘定科目や仕訳ルールについて解説していきます。
積立金を「支払った年」に計上するには条件がある
修繕積立金とは、長期かつ大規模な修理に備えて通常の管理費とは別に積み立てる費用です。共用部分の電球交換など、軽微な補修費用は管理費から捻出されますが、外壁補修や屋上防水などの大型改修は費用が高くなるため、計画的に積み立てていく必要があります。
多くのマンションでは、修繕積立金を大規模修繕や災害時の補修などに用途を限定しているため、勘定科目は「修繕費」として計上することがほとんどです。
経費を計上する際には注意が必要です。国税庁の通達では、経費として計上できるものは「その年において債務の確定しているもの」と定められています。つまり実際に修理や購入といった債務が履行されていなければ、経費として計上できないのです。通常の管理費は支払った年の補修に使われるため「支払った年の経費」として計上することができますが、積立金は原則として「実際に修繕が行われた年の経費」として計上しなければなりません。
ただし、マンションの修繕積立金については一定の条件を満たすことで、大規模修繕の実施を待たずに「支払った年の経費」にできる場合があります。
すぐに経費として計上するための4つの条件
国税庁は以下の4つの条件を全て満たしている場合、修繕積立金を支払った年の経費として計上しても良いとしています。
【条件1】区分所有者に支払義務がある
1つ目の条件として、修繕積立金の支払いが義務として決められていなければなりません。
国税庁の通達内容には「区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うこと」という記述があり、修繕積立金の支払義務がマンションの管理規約で定められている必要があります。
2018年のマンション総合調査では、全体の98.5%が修繕積立金の集金を行っているという結果が出ているので、ほとんどのマンションはこの条件を満たしているはずです。
【条件2】管理組合に返還義務がない
2つ目の条件は「管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと」です。退去時などにこれまで支払った修繕積立金が返ってこない旨が明記されている必要があります。
国土交通省の「マンション標準管理規約」第60条6には「組合員は、納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない」という記述があります。
売却時にこれまで支払った修繕積立金が戻ってくるかどうかは、自分のマンションの管理規約に標準管理規約と同様の記述があるかを確認することで分かります。
【条件3】積立金の使い道が限定されている
3つ目の条件は「修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと」です。
標準管理規約の第28条では、積立金の用途を大規模修繕や不測の事故などによる修繕のほか、建て替えや敷地の売却、バリアフリー化や駐車場の増設など「区分所有者全体の利益」のためのものに限定しています。
修繕積立金が通常の管理費として使われていると、条件を満たせなくなってしまいますので注意が必要です。
【条件4】積立金の算出方法が合理的である
4つ目の条件は「修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること」です。
共有持分とは、マンションの共有部分に対して区分所有者が持っている所有権の割合のことで、区分所有者が持っている専有部分の割合によって決まります。
長期修繕計画がきちんと立てられているかだけではなく、所有権の割合に応じて修繕費用が分割されている必要があるのです。
修繕積立金の平均額の算出方法も、国土交通省よりガイドラインが出ています。
いずれの条件も、そこまで達成が難しいものではありません。マンションの管理規約や総会で、修繕積立金の管理が適切になされているかを確認してみましょう。
修繕積立金の仕訳ルール
仕訳とは、取引を借方と貸方に分類して帳簿に記載することです。勘定科目は自由に設定できますが、記入漏れや誤記を防ぎ、財務状況をより詳しく把握するためには具体的な記述が必要になってきます。では、支払った側(区分所有者)は修繕積立金をどのように仕訳すれば良いのでしょうか。
前述したように、修繕積立金はマンションの修繕などに用途が限定されているため、貸方の勘定科目は「修繕費」として、毎月の支払は口座振替で行われることが多いため、借方の勘定科目は「現金」と計上することがほとんどです。また修繕積立金は非課税のため、記載する際には注意が必要です。
修繕積立金を預かっている側(管理組合)の修繕費の仕訳の基準については、下記の記事で詳しく説明しています。
条件を確認して仕訳を!
マンションの修繕積立金は、用途が限定されていることや管理組合に返還義務がないことを条件に「修繕費」として支払った年に計上が可能です。
記入漏れや誤りを防ぐためにも、仕訳を必ず行って処理をしていきたいですね。