マンション入居時にNHKとの契約書が! 契約しないとダメなの?
「NHK受信料」のトラブルを解決したい!
マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「NHK受信料」に関するトラブルに焦点をあてて、解説していきたいと思います。
NHK放送を受信できる機器がある場合、支払いを求められる受信料。とはいえ、なかには本来は必要がないのに訪問員に勧められて「加入してしまった」というケースもあるかもしれません。この記事ではそんなNHK受信料に関するトラブルから、対策まで紹介していきます!
NHK受信料にまつわる3つのトラブル例
NHK受信料に関してどのようなトラブルが起こりうるのか、事前に知っておくと対策も立てやすいでしょう。そのため、まずは3つのトラブル例を紹介していきます。
【トラブル1】しつこい勧誘で、必要がないのに契約してしまった!
基本的に「NHKの放送を受信できる機器(テレビやチューナーなど)」があれば、NHKと契約しなければなりません。
逆に言うと、そういった機器が一切なければ、基本的に契約は不要ということ。にもかかわらず、訪問員に加入を勧められたばかりに、受信料を払い続けているという人もなかにはいるかもしれません。
受信料の集金は、外部の委託業者が代行していることがあります。報酬は出来高制とも言われ、契約を取れなければ当然ですが収入になりません。そのため契約を取ることが目的となり、利用者の受信環境をいちいち丁寧に確認しない現状もあるようです。
不必要な料金を負担しなくてもよいように、事前に自身の受信環境についてチェックしておきたいところ。訪問員が来ても「テレビもチューナーもないので、契約しません」と伝えましょう。
なお、すでに契約してしまっている場合、「NHK受信料の窓口」に電話をかけて相談してみましょう。解約が受理されれば1週間ほどで契約種別変更の申請書が郵送されますので、必要事項を記入して返信すると、手続き完了となります。
ちなみにNHKとの受信契約について定めている「放送法第64条(受信契約及び受信料)」には以下のような記載があります。
「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」
つまりNHKとの受信契約は「NHKの放送を視聴するかどうか」ではなく「NHKの放送が受信できるか」で決まるということ。「家にテレビはあるけど、NHKは絶対に見ない」といった場合でも、契約を結ぶ必要があるということですね。
【トラブル2】BSやCSを視聴できないのに「衛星契約」の受信料を払ってた!
BSやCSといった衛星系のNHK放送を受信できる機材が自宅にある場合、視聴の有無にかかわらず、毎月2,170円(口座・クレジット)を衛星契約と地上契約を合わせた受信料として納めます。地上契約のみの受信料が毎月1,225円(口座・クレジット)なので、約1,000円近くの違いがありますね。
この衛星契約ですが、自宅内に衛星放送を受信できる機器がないにもかかわらず、衛星契約を結んでいるケースもあります。その場合、1年間で換算すると、1万円以上も余計に受信料を払っていることに。前述したように「NHK受信料の窓口」に電話をかけて、まずは相談してみましょう。
なお衛星放送を受信できる共同アンテナを設置しているケースでも、所有しているテレビなどが地上波専用の場合、受信料を負担する必要はありません。
「衛星放送は見ないけれど地上波放送は見たい」という方は、地上波専用タイプのテレビに変える方法などもあるでしょう。
【トラブル3】受信料の未払いで裁判に発展⁉︎
2017年12月6日、受信料の未払いについて以下のような判決が出て、ニュースとなりました。
“設置者が受信契約の申し込みを承諾しない場合は、NHKが承諾の意思表示を命ずる判決を求め、判決の確定によって受信契約が成立する。それにより、受信設備設置の月以降の分の受信料債権が発生する”
要するに受信機器があるにもかかわらず未契約の家に、NHKの訪問員が来訪したとき、拒否や無視をすればNHKは「受信契約を成立させる」ための裁判を実施。NHK側の主張が通れば、「テレビを設置した月以降の受信料」を払わなければいけないということです。
ただ、未払い分全額を請求されるかというとそうではなく、裁判では「時効」がポイントになるようです。実際にこれまで滞納者が時効を主張した場合、過去5年分までしか徴収できないという判決も出ています。
そのため、仮にNHKから5年を超える請求が来ても「5年の時効」を主張するべきだという意見もあるようです。直近最大5年分であれば、約14万円(衛星契約を含めた場合。地上契約のみなら約8万円)の支払いを行えばよいことになります。
トラブルを防ぐ方法とは?
では、上記で紹介したトラブルを防ぐためにどういった対応が望ましいのか。以降で、紹介していきます。
【方法1】契約しなくてよいケースかをまずは確認する
テレビは一般的には家庭にあるものなので、基本的にはNHKとの契約が必要な方が多いでしょう。しかし、一部対象外や免除されるケースがあります。
改めてまとめると、以下のケース。
・受信機器そのものがない
・免除規定に当てはまる
最初に紹介した通り、家に受信機器がなければ、NHKと契約する必要はありません。ただテレビのほかにも、以下のような受信機器は契約の対象となるために注意が必要です。
・チューナー付パソコンやビデオレコーダー
・チューナー付やワンセグ付の携帯電話、スマートフォン、タブレット端末
・自家用車のチューナー付カーナビゲーションなど
また、これらの機器が故障していて放送が見られない場合は、契約は不要です。
さらにNHKの受信料には、免除規定も設定されています。以下のような方は、受信料が全額免除や半額免除になる場合もあります。
全額免除される方
・生活保護を受けている
・市町村民税非課税の身体、精神、知的障がい者
・社会福祉施設などの入居者
・経済的理由で奨学金や授業料免除を受けており、親元から離れて暮らす学生
など
半額免除される方
・視覚、聴覚障がい者
・重度の身体、精神、知的障がい者
・重度の戦傷病者
など
まずは自分が本当にNHKと契約を行う必要があるのか、確認しておきましょう。
【方法2】「不退去罪」を主張する
受信できるテレビやレコーダーなどを持っていないにもかかわらず、共同アンテナを設置している建物に住んでいるからという理由で、契約を求められるケースもあります。まずは放送法の「NHKの放送を受信できる受信設備が設置されている」状態ではない旨を説明し、それでもしつこい場合は「帰ってください。不退去罪になりますよ」と伝えましょう。
不退去罪は「要求を受けたにもかかわらず人の住居から退去しない者」に適用されます。そのため住人から「帰ってください」と言われれば、訪問員も帰らなくてはならないのです。
【方法3】受信機器の撤去や譲渡を行う
NHKとの契約を解約したい場合、前述したように「NHKは見ないから」では理由にはなりません。テレビやレコーダーなどの受信機器が故障や廃棄などでまったく所有していない場合でないと、解約の対象とならないのです。
NHKの公式HPでも「解約の主な事由」を以下のようにあげています。
・受信機の撤去
・受信機の故障
・受信機の譲渡
つまり受信料の解約を行う場合、上記のいずれかの条件を満たしておく必要があるでしょう。
以上、今回はNHK受信料のトラブルや対処法について解説してきました。基本的にNHKの放送を受信できる機器がなければ、契約は不要です。ただ、受信機器があるにもかかわらず未払いだと、裁判に発展するケースもあるようです。そのため受信料はしっかりと払う、もしくは受信機器を撤去したうえで「NHK受信料の窓口」に解約の相談をしてみましょう。
次回、10回目となる連載は「自治会」をテーマに、加入を断ったときのトラブルやその対処法などについて解説していきます!
この連載について
【連載】これで解決!マンション暮らしのトラブル
複数の世帯が生活を送る分譲マンションでは、共用スペースの使い方やペットの飼育、ゴミ捨て場における利用マナーなど、思いがけないトラブルに遭遇する可能性があります。そこで、本連載『これで解決! マンション暮らしのトラブル』では、マンションでよく起こる困った問題の解決方法をテーマごとにご紹介。トラブル発生の防止や、万が一起こってしまった際の対応マニュアルとしてもご活用ください!