連載:これで解決!マンション暮らしのトラブル

「分譲賃貸」のトラブルを解決したい!

2022.03.17
「分譲賃貸」のトラブルを解決したい!

マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「分譲賃貸」のトラブルに目を向けたいと思います。

分譲マンションの一室を賃貸として貸し出す「分譲賃貸」。原状回復の範囲や禁止事項が借主と共有されていないためにトラブルが生じるケースもありますし、入居者が決まらず空室が続いてしまう可能性も考えられます。

そこで、分譲マンションを賃貸に出す際に知っておきたいトラブルや防止策について解説します。

分譲マンションを賃貸として貸し出す理由

賃貸化すれば家賃収入が発生する

購入した分譲マンションを貸し出す理由としては、「転勤等で一時的に空室になってしまうため」と「もともと投資目的で購入していたため」の主に2つがあげられます。

賃貸化すると家賃収入が得られるため、不労所得を生む資産として運用している人は少なくありません。また、家賃収入は「不動産所得」にあたり、固定資産税や管理費、修繕積立金は確定申告で経費として計上できます。経費分は所得から控除されるため、節税効果もあるのです。

ただし、分譲マンションを貸し出すとなると、ローンの借り換えが必要であったり、借主と住居の使い方でトラブルになったりする可能性も。分譲賃貸を考えているなら、まずはよくあるトラブルを把握しておく必要があります。

賃貸化で起きるトラブル

実際に分譲マンションを貸し出した場合にどんなトラブルが起きるでしょうか。考えられる3つのトラブルを説明します。

【トラブル1】借主が決まらない

家賃収入が得られるといっても、借主がいなくては収入にはなりません。借主の募集期間が長引けば、定期的な清掃や設備の点検などで維持費もかさんでくるでしょう。

すぐに借主が決まるかどうかは、マンションの立地が影響します。駅やスーパーマーケット、学校が近いと比較的借主が集まりやすいです。

とはいえ、周辺のマンションよりも賃料が高かったり、築年数が経っていると空室になってしまうリスクも高くなります。入居の申し込みが見込まれるかどうかは、事前に把握しておく必要がありますね。

【トラブル2】ローンの金利が高くなる

もともと居住目的でマンションを購入し住宅ローンを組んでいる場合、賃貸利用にあたって借り換えが必要になります。

基本的に住宅ローンは、購入者本人もしくは家族が住む想定で契約が交わされているため、無断で賃貸化してしまうと契約違反となってしまうのです。

住宅ローンに比べて賃貸住宅用のローンは金利が高い傾向にあるうえ、借り換えの手数料や住宅ローン控除が適用されなくなるといったデメリットもあります。

なお、転勤などやむを得ない事情があって賃貸化する場合には借り換えをせずに済むケースもあるので、まずは金融機関に相談してみましょう。

【トラブル3】原状回復の範囲で揉めてしまう

ペットのひっかき傷は借主負担に該当

借主が退去する際には、汚れ・破損がみとめられる箇所を直す「原状回復」の義務があります。どこまでの傷や汚れを借主負担とするかで揉めるケースは多く、裁判に発展した事例も少なくありません。

国土交通省が定めた「原状回復ガイドライン」では、通常の消耗や経年劣化の修繕費は貸主の負担になるとされています。

例えば、借主負担となるのは「飲み物をこぼしたシミ」「ペットのひっかき傷」など。貸主の負担となるのは「畳やフローリングの日焼け・色あせ」「家具を置いたことによる床のへこみ」などです。ハウスクリーニングは貸主負担になるのが一般的です。

特に、ペットやタバコによる匂いや汚れはトラブルになりやすいポイント。ガイドラインによるといずれも借主に原状回復の必要がある事項ですが、事前に情報を共有していないと揉めてしまう可能性もあるでしょう。

原状回復ガイドラインについては下記の記事でも解説しているので、参考にしてみてください。

トラブルの発生を防ぐ方法

では、上記のようなトラブルを防ぐにはどうすればよいでしょうか。貸し出す前に知っておきたいトラブル防止策について解説します。

【防止策1】賃貸専門の不動産会社に相談する

賃貸専門の不動産会社にプロの意見を聞いてみよう

空室のリスクを避けるには、賃貸専門の不動産会社に相談しておくといいでしょう。立地や周辺物件の賃料設定から、借主が決まるかどうかを判断してもらえます。

想定していたより賃料を下げなければ入居希望者が現れそうにないというのであれば、賃貸化を控えたほうが良いという結論になるかもしれません。空室のまま維持費がかかってしまうくらいなら、低賃料でも家賃収入を得たほうが良いケースもあるでしょう。

借主がいる場合の収益率だけではなく、空室のリスクやコストも踏まえて相談できると良いですね。

【防止策2】金融機関に相談する

基本的には通常の住宅ローンのまま賃貸化はできません。ただし転勤や親の介護などやむを得ない事情があると判断された場合には、借り換えをせずに済むケースも。

金融機関にもよりますが、条件次第では現在の住宅ローンの契約内容を変えるだけで対応できる可能性もあります。

転勤など一時的な空室で賃貸化を検討しているのであれば、まずは住宅ローンを契約している金融機関に相談しましょう。

【防止策3】原状回復ガイドラインと禁止事項を共有する

原状回復ガイドラインでは、借主と貸主のどちらに原状回復の義務があるか例示されています。とはいえ、借主がその情報を知らなかったためにトラブルとなる可能性も考えられます。退去時の原状回復をガイドラインに準拠するのであれば、事前にその旨を共有しておけると良いですね。

タバコやペットによる匂いや汚れが懸念されるのであれば、前もって禁止事項として契約書に記載しておくのもトラブルを防ぐ一つの手です。

また、汚損の程度にかかわらず借主にクリーニング費用を負担してもらいたいのであれば、契約書に「ハウスクリーニングは借主負担とする。尚、当該費用は一律30,000円とする。」といった特約も設けられます。いずれにせよ、書面でお互いの認識を擦り合わせておけると安心です。

以上、今回は分譲賃貸をテーマに、トラブルの原因とその防止策を紹介してきました。

分譲マンションを貸し出す際には、空室リスクやローンの借り換えといったコスト面の問題に加え、借主との認識の齟齬による揉めごとといったトラブルが考えられます。

コストの問題は事前に不動産会社や金融機関に相談し、借主とは原状回復ガイドラインや禁止事項をしっかりと共有しておくことが大切です。

イラスト:カワグチマサミ

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この連載について

【連載】これで解決!マンション暮らしのトラブル

複数の世帯が生活を送る分譲マンションでは、共用スペースの使い方やペットの飼育、ゴミ捨て場における利用マナーなど、思いがけないトラブルに遭遇する可能性があります。そこで、本連載『これで解決! マンション暮らしのトラブル』では、マンションでよく起こる困った問題の解決方法をテーマごとにご紹介。トラブル発生の防止や、万が一起こってしまった際の対応マニュアルとしてもご活用ください!

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