「プライバシー」のトラブルを解決したい!
マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「プライバシー」のトラブルに目を向けたいと思います。
複数の世帯が暮らすマンションでは、防犯のためにカメラが設けられていたり、理事会に個人情報が知られていたりするため、プライバシーが守られているか気になる人もいるのではないでしょうか。
そこで、プライバシー侵害の可能性があるケースとともに、対処法を紹介します。
プライバシーの侵害が気になる4つケース
プライバシー侵害の可能性があるケースについて紹介します。
【ケース1】隣人に私生活を口外される
隣人に話した内容がほかの住民に知られている、話していない内容なのに知られているなど、隣人によるプライバシーの侵害が気になっている人もいるでしょう。
そもそもプライバシーとは、職業や年収、結婚離婚歴など知られたくない情報について、他人から干渉されない権利です。「私生活上の事実」「これまで公開されていなかった」「公開されて被害者が不快に感じた」の3つの条件を満たした場合、プライバシーの侵害が認められます。
名誉毀損にあたる場合を除きプライバシーの侵害だけでは刑事罰に問えませんが、不法行為を裏付ける確かな証拠(録音など)があれば、民事的責任を負わせ慰謝料を請求できる可能性があります。
【ケース2】防犯カメラの設置
マンションのエントランスや廊下に防犯カメラが設置されていると、生活パターンがバレてしまうのではないかと不安に思う人もいるかもしれません。
実際に、個人宅のカメラが隣家の日常生活を写しているとして、慰謝料の請求を命じられたケースがあります。
防犯カメラの設置には経済産業省や各市区町村でガイドラインが設けられています。基本的には、防犯目的で取り付けられるものであって、特定の個人の監視目的では設置できません。併せて、画像データの閲覧には責任者の立ち会いが必要であるなど、特定の状況のみで見られるよう制限されるものです。
もし、部屋のなかが写っている角度にカメラがあったり、常時制限無く録画データが公開されたりしているようであれば、プライバシーの侵害になる可能性があります。
なお、マンションの廊下は共用部分に当たるので、原則として個人でカメラの設置はできません。
【ケース3】隣に新しい建物が建つ
居住しているマンションの隣に建物が建つと、ベランダや窓から部屋が見られてしまうのではないかという心配もあるでしょう。
隣の建物同士のプライバシーを守るため、民法ではパネルやガラスといった目隠しの設置が規定されています。
ただし、規定内容は「境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓または縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。」とあり、言い換えると、1メートル以上の距離があれば目隠しを設置する民法上の義務はないのです。
また、距離が1メートル未満であっても、特に部屋の内部が見える位置ではない場合や、誰かが部屋をのぞいていた証拠がない場合にはプライバシーの侵害にあたるとは認められず、目隠しの設置要求が通らないケースもあります。
和解金が支払われる場合もありますが、これも明確にプライバシーを侵害しているといえない場合、支払われるとは限りません。
【ケース4】管理人・理事会での個人情報の取り扱い
理事会では、住民の氏名や連絡先、名簿、マンションの管理・運営に欠かせない管理費や修繕積立金の未収金状況も把握しています。
ですが、業務上で知り得た個人情報を発信するのは個人情報保護法に反します。
管理費等の滞納者を氏名を出して掲示板で公表するのは、プライバシーの侵害にあたる可能性が高いです。
プライバシーが侵害されていると感じた場合の対処法
プライバシーが侵害されていると不安になってしまったら、どのように対処すれば良いでしょうか。
【対処法1】管理会社・理事会に相談する
防犯カメラの設置や理事会での個人情報の取り扱いは、管理規約などで定められているケースがほとんどです。録画データを含め、情報が適切に取り扱われているかどうか判断するには、まず管理会社や理事会に問い合わせましょう。
隣人が防犯カメラを取り付けており、自室が映っている心配がある場合も、まずは管理会社や理事会に問い合わせます。マンションの廊下は共用部分に当たるので、基本的には個人でカメラの設置はできません。管理組合に承認されて取り付けているケースもあるので、いずれにせよ設置状況を伺い、理事会役員など責任者立ち会いのもとで、自室が映っていないか確認させてもらいましょう。
【対処法2】弁護士に相談する
隣人との個人間で生じたトラブルや、管理会社や理事会に相談しても解消されない不安があるなら、弁護士に相談するのもひとつの手です。
相談回数や時間の制限内であれば無料で相談を受けてくれる弁護士もいますし、インターネットで「弁護士 無料相談」などと検索すれば自分でも見つけられます。
自治体によっては法律相談窓口が設けているところもあるので、自分で弁護士を探すのはハードルが高いのなら、まずはお住まいの自治体のホームページを確認してみるといいかもしれません。
以上、今回はプライバシー侵害が気になるケースとともに、対処法を紹介しました。
不安があればまず管理会社や理事会に問い合わせ、不法行為にあたるかどうかわからない場合や状況が改善されない場合には弁護士への相談も検討してみましょう。
イラスト:カワグチマサミ
この連載について
【連載】これで解決!マンション暮らしのトラブル
複数の世帯が生活を送る分譲マンションでは、共用スペースの使い方やペットの飼育、ゴミ捨て場における利用マナーなど、思いがけないトラブルに遭遇する可能性があります。そこで、本連載『これで解決! マンション暮らしのトラブル』では、マンションでよく起こる困った問題の解決方法をテーマごとにご紹介。トラブル発生の防止や、万が一起こってしまった際の対応マニュアルとしてもご活用ください!