「共用施設」でのトラブルを解決したい!
マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「共用施設」のトラブルに目を向けたいと思います。
共用施設とは、その名の通りマンションの住民で共同利用する施設ですから、ルールやマナーを守れていない人がいるとせっかくの施設も気持ち良く使えませんよね。
そこで、共用施設で起こりやすいトラブルと、起きてしまった場合の対処法を解説します。
そもそもマンションの共用施設って?
分譲マンションの一室は「専有部分」といわれ、登記上は建物全体と区別して所有できます。一方で、特定の住民の専有部分ではない敷地や施設は「共用部分」とされています。
「共用施設」とは、住民の利用を対象とした共用部分内の施設です。例えば、オートロックやエレベーター、駐車場や宅配ロッカーなどが該当します。
さらに最近では、キッズルームやゲストルーム、フィットネススタジオ、菜園といった共用施設を備えたマンションも増えています。
共用施設で起きるトラブル
では、共用施設ではどんなトラブルが起きやすいでしょうか。ここでは、主な4つの施設に関わるトラブルについて紹介します。
【トラブル1】ロビー・ラウンジ
エントランス付近のロビーにちょっとしたソファとテーブルがあるケースや、最上階にキッチンを備えた高級感のあるラウンジがあるケースなど、マンションによって規模はさまざま。住民同士の交流や保険会社の営業員といった外部の人と話すのに利用されます。
ロビーやラウンジでトラブルが起きる原因の一つは、特定の住民による長時間の占領です。とくに席数が限られている場所では他の住民が使えなくなってしまいますよね。トラブルをきっかけに厳しい利用時間制限などが設けられて、利用しにくくなる可能性もあります。
また、子どもが遊び場として利用してトラブルになる事例もあります。多くの場合、子どもが利用すること自体に問題はなく、長時間ほかの住民が利用できないような使い方や、住民以外の子どもたちがマンション内に立ち入ってしまうセキュリティ上の不安がトラブルの原因になっています。
それぞれのマンションの規約や考え方にもよりますが、他の住民が利用しにくくなってしまう使い方は避けたいところです。
【トラブル2】ゲストルーム
親族や友人など、来客が訪れた際の宿泊場所として利用できる「ゲストルーム」。トラブルになりやすいのは、一人で複数日の予約を取っているケースです。
あらかじめ複数の予約を取り、キャンセル料が発生する直前に取りやめる人もいるようです。利用日直前で空室となっても、ちょうどよく利用したい人がいるとは限りません。本当は予約したかったけれど、埋まっていると思って別に宿を手配してしまったという人もいるでしょう。
もし、一人で複数予約をしている人がいるなら、一人あたりの予約可能日数を制限したり、キャンセル料の発生する日を調整したりする必要があります。
また、ゲストルームを無断で民泊として貸し出していたというトラブル例も。前述したように、マンションの住民以外が出入りするとセキュリティ面でも問題がありますし、営利目的での共用部分の利用は多くの場合で管理規約違反です。
一人の利用方法が適切でないために、施設そのものが利用停止になる可能性もあります。
【トラブル3】キッズルーム
ファミリー向けを打ち出しているマンションに作られることが多い「キッズルーム」。子ども向けのおもちゃや室内用遊具がおいてあるマンションもあり、とくに雨の日や日差しが強い日など、外で遊べない時に利用しやすい施設です。
ただ、上の階が住居の場合は、騒音が原因でトラブルになるケースも。ファミリー向けのマンションでキッズルームが階下にあると分かっていたら、上階に住む住民のほうがある程度寛大な気持ちで対応するのが良いかもしれませんね。
そのほか、住民ではない人を招きいれてトラブルになるケースもあります。住民向けの施設にもかかわらず、外部の人が多くて利用できなくなると迷惑な気持ちになるでしょうし、ほかの施設同様、セキュリティ面での心配もあります。
そもそも外部の人の利用を許可していない場合や、ゲストの氏名などを記入すれば利用できる場合など、対応はマンションによって変わります。事前に規約を確認し、ルールに則って利用しましょう。
【トラブル4】フィットネススタジオ
トレーニングマシンを備えたフィットネススタジオや、プール、温浴施設などを併設しているマンションもあります。わざわざ外出しなくても運動ができるうえ、すぐに自宅のシャワーを利用できる点が人気の理由です。
実際に起きたトラブルとして、プールで住民が勝手に水泳教室を開いていた事例があります。先に述べたように、共用施設の営利利用は規約違反となる可能性が高いです。もし違反している人を見つけたら、管理人や管理組合に連絡する必要があるでしょう。
また、フィットネススタジオはトレーニングマシンの入れ替えなどがあるため、ほかの施設より維持費がかかります。その分管理費も高くなる傾向です。こうしたコスト面の問題から、施設自体の是非を巡って住民間でトラブルになるケースもあります。
管理費に納得できるかどうかは入居時点で確認しておきたいところではありますが、入居後に値上がりする可能性もあるでしょう。住民間で賛否の意見がでるようであれば、総会で議題にあげることも検討してみてください。
トラブルの対処法
実際にトラブルが起きてしまったらどのように対処すれば良いでしょうか。
ほかの住民もしくは住民以外の人とトラブルになった際は、まず管理人か管理会社に連絡します。本人どうしで直接話し合うよりも客観的な判断ができるため、トラブルを悪化させる可能性が低くなるためです。
管理人であれば規約を把握している場合が多く、その場で適切な利用方法を聞くこともできるでしょう。
もし、規約上では記載のない事項についてトラブルになったのであれば、規約を明確に定める必要も出てきます。管理人や管理会社を通じて、理事会で規約の制定を検討してもらうのも一つの手です。
トラブルを回避するためには
起きやすいトラブルが分かったところで、事前にトラブルを防ぐために押さえておきたいポイントについても解説します。
施設を利用する際は管理規約を今一度確認しておくことが、トラブルを防ぐ最も確実な方法です。
なんとなく周りの住民と同じように利用していても、実はそれが正しい使い方ではなく、いずれトラブルに発展してしまう恐れもあります。
例えば、ある住民が住民ではない外部の人を招いてキッズルームを利用していたとしても、規約ではゲストの利用を禁止しているかもしれません。
自分が誤った使い方をしないために確認するのはもちろん、他の住民が誤った使い方をしてしまっている際に管理組合等に連絡するうえでも、知っておいて損はありません。
ただ、注意しておきたいのは、規約に書いていないから何をしても大丈夫というわけではないという点。共有施設を利用する際には、「マンションの住民みんなで施設の費用を負担していること」「このあと別の住民が利用するかもしれないこと」を常に意識したいですね。
以上、今回は共用施設をテーマに、トラブルの原因とその対処法を紹介してきました。
原則として住民が利用するために設けられており、維持費も住民で負担しています。誰か一人の所有物ではなく、マンションの共有財産であると意識して利用しましょう。
イラスト:カワグチマサミ
この連載について
【連載】これで解決!マンション暮らしのトラブル
複数の世帯が生活を送る分譲マンションでは、共用スペースの使い方やペットの飼育、ゴミ捨て場における利用マナーなど、思いがけないトラブルに遭遇する可能性があります。そこで、本連載『これで解決! マンション暮らしのトラブル』では、マンションでよく起こる困った問題の解決方法をテーマごとにご紹介。トラブル発生の防止や、万が一起こってしまった際の対応マニュアルとしてもご活用ください!